上 下
13 / 99
第一部 辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女 第三章 旅立ちと新米錬金術士

13. あれから二年が経って

しおりを挟む
「元気にな~れ! ふっふふのふ~ん♪」

「にゃにゃにゃんにゃ~ん」

「できた! 緑の傷薬!」

 フラッシュリンクスのお母さんに助けられてから二年ほどが経った。
 あれから錬金術を中心に魔法や体力を鍛えていき、それなりの事ができるようになってきたとわたしは思っている。
 いまは結界内に作られたわたしの作業部屋で薬の調合の最中。
 結界内に薬草になる草花も育てているから素材に困ることもないし、わたしの錬金術で困る事なんてなーんにもない!
 あ、シシがいないと錬金釜を温める火力が不安定で錬金術を使えないんだっけ。
 シシには感謝、感謝。
 いまだってシシは錬金釜の下に潜り込んで釜を温めてくれているしね。

「あとは、頭痛薬を作って今日は終わりかな? 今日もたくさん薬ができたね! あまり使わないけど」

「にゃふ」

 わたしは薬を作る専門の錬金術士だ。
 お母さんによると他にも毒薬や爆弾、金属や布、それらを使った製品などを作れるらしいけど、作り方がわからないし毒薬や爆弾なんて作るつもりもない。
 薬作り専門でもいいかななんて思い始めている。
 天翼族の中でも上位の炎翼族である以上、非常に長い年月を生きるんだから、どこかで服作りくらいは学んでもいいけどさ。

「それにしても、余った薬はお母さんがたまに人里で売っているみたいだけど、それでもまだまだ貯まっていくなぁ。わたしのマジックバッグはお母さんのお手製だからまだまだ入るけど」

「にゃうん」

「使い道がない薬も困るよね」

「にゃう」

 シシとの仲も大分良くなった。
 いまなら鳴き声だけで大体の感情がわかる。
 いまのは「そうだね」って同意かな。
 この薬たち、捨てるわけにもいかないしどうしたものか。

『ノヴァ、シシ。錬金術の調合は終わった?』

「あ、ニネェ。いま終わったところ」

 わたしと家族の距離もぐーんと縮まった。
 お母さんの他に長男フラッシュリンクスさんのことはイチニィ、長女フラッシュリンクスさんはニネェ、次男フラッシュリンクスさんはサンニィと呼んでいる。
 そんな安直な名前でいいのかは聞いたことがあるんだけど、契約でもないんだし愛称だから気にしないんだって。
 シシの名前もそうだけど聖獣さんってやっぱりヒトの考えとは違うのかも。

『お母様があなた方を呼んでいたわ。用事がないなら来てほしいって』

「わかった。錬金釜を片付けたらすぐに行くよ」

『じゃあ、お母様にもそう伝えておくわ。急がなくてもいいけど怪我をしないようにね。炎翼族がその程度の熱さでやけどなんてしないのはわかっているけど心配だから』

「ありがとう、ニネェ」

 そうなんだ。
 炎翼族って熱に対する耐性が異様に高い。
 試しにシシの本気の炎で焼いてもらったことがあるけど、ちっともやけどをしなかった。
 ちょっと暖かいな、程度の感覚だったよ。
 じゃあ、寒さに弱いのかと言うとそんなこともない。
 一度、氷に閉ざされた場所に連れて行ってもらったけど、寒さを感じることはなかった。
 むしろ、翼の熱で氷を溶かさないように気を付ける方が大変だったね。
 ともかく、炎翼族って暑さにも寒さにも強く炎にも強い種族らしい。
 お母さんも炎翼族については話に聞いただけだったみたいだから、シシの炎で炙られたときはハラハラしていたけどね。
 あと、お母さんの炎はさすがに熱かった。

「お母さん来たよ……って、イチニィもサンニィも一緒?」

『ああ、私たちも呼ばれた』

『何か大事な話があるらしいぞ』

「わかった。お母さん、全員揃ったよ」

『そのようね。それじゃあ、話を始めましょうか』

 お母さんがわたしたちに向かって話を始める。
 全員揃っての話ってなんだろう?
 食事のときには全員揃うのに、わざわざ全員を別の時間に集めてまで話をするっていうことは大切な話だよね。
 しっかり聞かなくちゃ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

夢の終わり ~蜀漢の滅亡~

久保カズヤ
歴史・時代
「───────あの空の極みは、何処であろうや」  三国志と呼ばれる、戦国時代を彩った最後の英雄、諸葛亮は五丈原に沈んだ。  蜀漢の皇帝にして、英雄「劉備」の血を継ぐ「劉禅」  最後の英雄「諸葛亮」の志を継いだ「姜維」  ── 天下統一  それを志すには、蜀漢はあまりに小さく、弱き国である。  国を、民を背負い、後の世で暗君と呼ばれることになる劉禅。  そして、若き天才として国の期待を一身に受ける事になった姜維。  二人は、沈みゆく祖国の中で、何を思い、何を目指し、何に生きたのか。  志は同じであっても、やがてすれ違い、二人は、離れていく。  これは、そんな、覚めゆく夢を描いた、寂しい、物語。 【 毎日更新 】 【 表紙は hidepp(@JohnnyHidepp) 様に描いていただきました 】

やがて最強になる結界師、規格外の魔印を持って生まれたので無双します

菊池 快晴
ファンタジー
報われない人生を歩んできた少年と愛猫。 来世は幸せになりたいと願いながら目を覚ますと異世界に転生した。 「ぐぅ」 「お前、もしかして、おもちなのか?」 これは、魔印を持って生まれた少年が死ぬほどの努力をして、元猫の竜と幸せになっていく無双物語です。

親友は婚約者と浮気し婚約破棄となりました。貴方が私を罠にはめたなんて考えもしなかった。

五月ふう
恋愛
貴方が浮気するなんて思わなかったわ!マリは最愛の婚約者キットにむかって叫んだ。僕は浮気なんてしてない!そういったキットの言葉を私は、信じようともしなかった。まさか、親友に罠にかけられていたなんて、思いもしなかったんだ。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 4巻発売中☆ コミカライズ4/16より連載開始】

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

処理中です...