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第一部 辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女 第二章 従魔契約と錬金術

11. できることの確認

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 目覚めてから一週間後、いよいよわたしがどんな魔法を使えるようになったのかのテストを行う日がやってきた。
 魔力で満ちあふれている結界内で魔法を使うと万が一のとき暴走しかねない、らしいので、テストは森を出た平原で行うことになったよ。
 移動はやっぱりまだ飛べないのでお母さんにまたがって移動。
 今日のテストには家族全員が見に来てくれている。
 失敗しないといいんだけど。

『さて、このあたりでいいかしら』

「はい、お母さん」

「にゃう」

『そんなに緊張しなくても大丈夫よ。それから、もう少しくだけた表現でね』

「あ、うん。お母さん」

 わたしの言葉がよそよそしいと家族みんなから注意を受けたんだ。
 だから少しずつ直していこうと頑張っているんだけど、うまく行かない。
 結構大変かも。

『まず、私がお手本を見せるからそれを真似て魔法を使ってみて。どの魔法も基本的に魔力を手のひらに集めてどんな魔法を使うかイメージすることで発動するわ』

「わ、わかった。頑張ります」

『ええ。今日はテストだから魔力の流れが出るかどうかを確認するだけよ。魔法に失敗しても魔力の流れは出るからね』

「は、はい」

『そんなに緊張しないの。まずは火属性の魔法ね。炎翼族なら得意なはずよ』

 お母さんの頭の前に小さな火の玉が浮かび上がった。
 なるほど、これを真似すればいいんだ。

『イメージはできた? さあ、試して頂戴』

「はい……うわぁ!?」

 わたしはお母さんと同じ大きさの火の玉をイメージしたはずなのに、出て来たのはすっごく大きな火柱。
 これ、どういうこと!?

『やっぱり炎翼族だとこうなるのね』

 お母さんは落ち着いた様子で火柱を消してくれた。
 ああ、ビックリした。

『ちょっと強すぎるけど火属性は適性ありね。魔力もきちんと放出できるようになっているし大いに結構よ。次は、上手くできないと思うけれど水属性を試しましょう』

「上手くできないの?」

『炎翼族と水属性って相性が悪いのよ。でも、訓練すればきちんと使いこなせるようになるから安心して。お手本はこんな感じね』

 お母さんの前に今度は水の玉が浮かび上がった。
 今度こそ失敗しないように、魔力を上手く使って……あれ?
 出て来たのは、すっごく小さな水滴が一粒のみ。
 それだって浮いていることはできず、すぐ地面に落ちちゃった。

『水属性も適性ありね。上手く使えなかったのは種族的な問題もあるし仕方がないわ。今後練習していきましょう』

「うん、わかった」

『次は……風にしましょうか』

 この調子でいろいろな魔法属性を試していった。
 わたしが聞いたことのある、火、水、風、土、雷は程度の差があったけど全部成功。
 わたしが聞いたことのなかった、光、闇、太陽、月、星、治癒、浄化、時空属性って言うのも成功していたらしい。
 ほとんどは少しだけ明るくなったり暗くなったりしただけだけど、発動していることが大切なんだって。

『ふむ。フラッシュリンクスが使える魔法は全属性が使えるのね。逆を言えば、フラッシュリンクスが使えない属性である夜や審判は使えなかった。シシの魔法属性がすべて乗り移った形かしら。魔法を使うときも左手にある契約紋が光っていたし』

「そうなの? ありがとうね、シシ」

「にゃう!」

 シシも役に立てて喜んでいるみたい。
 わたしもできることが増えて嬉しい。
 お母さんたちの役に立てるのはまだ先だけど、それでもなにかできるって嬉しい事だよ。

『次は契約獣の力をどれくらい増幅できるかね。シシ、私たちから少し離れた場所でノヴァから力をもらいながら力を解放しなさい。あまり急激に吸い取らないようにね』

「にゃうん!」

『わかっているのかしら、この子?』

 お母さんが不安になるような一言を漏らしたけど、わたしはシシを信じている。
 そのシシはお母さんの言いつけ通り少し離れてから力を使ったみたい。
 全身から炎が燃え上がり、背中の翼も一気に大きくなった。
 それと同時にわたしの中からも魔力が吸い出されていっている感じがする。
 って、あれ?
 なんだか膝が震えてきたような?

『シシ、そこまでにしなさい』

「にゃお?」

『あまり急速に吸い取らないようにしなさいと言ったでしょう? あなたが一気に魔力を吸い取ったせいでノヴァの魔力が枯渇気味よ。謝りなさい』

「みゃうぅ……」

 お母さんから怒られたシシが力なくわたしに鳴いてきた。
 これは反省して謝っているっていうことかな?

「いいよ、シシ。初めてで力加減がわからなかったんだよね? 次からは気を付けてね」

「みゃう!」

 失敗を許してもらえたシシが勢いよくわたしに飛びかかってきた。
 わたしはまだ膝が震えている状態だったので、そのまま後ろに押し倒されてしまう。
 もう、甘えん坊なんだから。

『シシ、あなたはもう少し反省なさい。ところで、ノヴァ。他に変わったことはないかしら?』

「変わったこと?」

『ええ、人間だったときと変わった事よ。種族が変わったからいろいろと感じることも変わったでしょうけれど、見える物や聞こえる音などなんでもいいわ。変わっている事があったら教えて?』

「変わっていること。変わっていること……」

 わたしは目を閉じてゆっくりと周囲の音や匂いを感じ取ってみた。
 草原の穏やかな風と草の匂いがとっても心地いい。
 でも、その中に不思議な声が混じっている気がする。
 目を開きその発生源を追っていくと、そこには普通の草が生えていた。
 でも、この草から確かに声のようなものを感じる。
 いったいなんなんだろう?

『あら? その草がどうかしたの?』

「うん。この草から声が聞こえる気がするの。なんて言っているかはわからないんだけど……」

『声が聞こえる……まさかね』

「お母さん?」

『ノヴァ、他に声が聞こえる草や花、それ以外のものでもいいわ。とにかく、不思議に感じた物を集めてきて』

「え? うん」

 わたしは立ち上がってシシと一緒に周辺を歩き始めた。
 すると、さっきの草と同じように声が聞こえる気がする草や花がたくさんある。
 それをなんとか掘り返して集め、一回りしてからお母さんたちのところへと戻ってきた。
 これがどうしたというのかな?

「お母さん。集めてきたよ」

『……これら全部から声が聞こえたのね?』

「うん。どうかしたの?」

『これ、全部薬の材料よ』

「え?」

『私の見立て違いでなければあなたには〝錬金術〟の才能が芽吹いたみたい。これはヒトの社会で生きて行くには便利な力ね』

〝れんきんじゅつ〟?
 それって何だろう?
 お母さんに詳しく教えてもらわなくちゃ。
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