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第3部 〝ペットテイマー〟、〝オークの砦〟を攻める 第3章 砦攻め開始

89. 本営防衛戦

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『見えたよ! 本営だ!!』

「あんなにたくさんのオークが!?」

『キントキ、急ぐわさ!!』

『急いでるよ、全力で!!』

 私たちが本営の見える位置まで来たとき、既にそこはオークの大群による攻撃を受けていた。
 オークジェネラルの姿も確認できるし、あんなの本営の守備隊じゃ対処できないよ!

「ミネル!」

『オークジェネラルの数じゃな。数えてこよう』

 私はミネルを先に飛ばして偵察をさせる。
 ここから見える数だと2匹だけど、他にもいるかもしれないからね。
 本営の上空をぐるっと回ってミネルはすぐに戻ってきてくれた。

『オークジェネラルの数は4匹じゃ。オークバーサーカーは20匹。少しばかり骨が折れるぞ』

「わかった! まずは一番後ろにいるオークジェネラルを不意打ちで仕留める!」

『うん!』

『そのあと、わちらは遊撃だわさ』

『オークたちの数を少しでも減らすの!』

『キントキは補助とオークの回収を頼む! 足場が悪くなりすぎておるわ!』

『わかったよ!』

 キントキが一気に駆け抜けてきた足音を聞いたらしい、オークジェネラルが振り向いたけれどもう遅い。
 私は既にオークジェネラルに向かって飛びかかり、喉元を一突き。
 そのまま、《魔爪刃》で首を切り裂いて即死させた。
 この様子を見ていたオークたちが一瞬隙を作ったのを見逃さず、近くにいたオークナイトたちから無差別に切り裂いていく。
 私のダガーなら、ミスリル合金の盾だって鎧だってなんでもスパスパ切り裂いて刃こぼれしないものね。
 多少血糊がついたりしても勝手に綺麗になるし、切れ味が落ちる心配はない。
 とにかく、オークの群れの間を素早く駆け抜け続け、その首をはね飛ばし続けていく。
 でも、やっぱり私が倒す量だけじゃ足りていない。
 もっと大量に倒す手段がほしいけど……冒険者仲間もいる混戦状態じゃ《灼砂魔法》も《嵐魔法》も使えないからもどかしい!

「Pugyu!」

「おっと」

 オークの群れの間から出てきたオークバーサーカーの攻撃をかわし、そのまま腕を切り落とす。
 痛みで怯んだら、首も狩り取って1匹退治完了だね。

「ああ、もう! 大物を倒しにいきたいけど、どこを見てもオークばかりでどこに大物がいるのかもわかりやしない!」

 空を飛ぶのも禁止されているし、どこから手をつければいいのか……。
 ともかく、ひたすら倒し続けてあっちから出てきてくれるのを待つしかない!
 私はオークの軍勢を背後から削るように進んで行き、ときどき現れるオークバーサーカーを仕留めて次の獲物を探し続ける。
 後方に控えていたのはオークナイトばかりだったけれど、前方には普通のオークやハイオークもいるはず。
 そこまで削り続ければ、他のオークジェネラルだって見つけられるはずなんだ!
 さっき見えた2匹目だって、かなり奥側に見えたし!

「PuGii!」

「オークバーサーカーって味方ごと潰してくるよね!」

 私はまた現れたオークバーサーカーの攻撃をすり抜け、その首をはね飛ばす。
 ついでなので、オークバーサーカーの体が倒れる前にその体に飛び乗り、一番近くにいるオークジェネラルを探して……いた!
 右斜め前方向!
 ぐらつき倒れるオークバーサーカーの体から飛び降り、今度こそまっすぐにオークジェネラルへの道を作っていく。
 そして、オークジェネラルの前までたどり着くと、5人の先輩冒険者たちが戦っていた。

「くそっ!? 負けるな!」

「ここで持ちこたえろ! これ以上先に進ませるな!」

「Buhi! Buhi!!」

 オークジェネラルはこっちに気がついていないね。
 ならこのままダガーで!

「《魔爪刃》!」

「Bihu!?」

 うん、隙だらけだったからね。
 一撃で首をはねさせてもらったよ!

「助かった、のか?」

「お前は、シズクか?」

「はい。遅くなりました、先輩方」

「いや。いい。増援は? サンドロックギルドマスターは来てくれているのか?」

「申し訳ありませんが増援は私と私のペットたちだけです。私たちの宿営地もオークジェネラルやオークバーサーカーの襲撃を受けたばかりですので、サンドロックさんは動くことができませんでした」

「そうか。無事なんだよな?」

「もちろんです。宿営地に残っている他の冒険者の皆さんと一緒に〝オークの砦〟につながる裏道を監視しているはずです」

「それならいいんだ。お前ひとりであっても心強い。オークジェネラルを一撃で倒せるんだからな」

「不意を打てれば、ですが。そうだ、他の状況は!?」

「すまんが俺たちにもわからん。俺たちはさっきのオークジェネラルを引きつけるために囮となっていたんだ」

「わかりました。皆さん武器がボロボロですよね? 本営まで一緒に行きます」

「そいつは助かるな。いまは豚どもが怯えて襲ってこないが、取り残されたら戦いようがなかったんだ」

「私の背の高さじゃ本営の方角がわかりません。本営の方角を教えてください」

「ああ、そっか。あっちだ」

「あちらですね。できるだけ離れないようにしてついてきてください」

「任せろ。先輩の意地もある。足手まといにはならないさ」

「そうそう。お前は道だけ作ってくれ。不甲斐ない先輩たちですまないがな」

「いえ。いきます!」

 私は先輩方を引き連れて再びオークの群れへと飛び込み道を切り開く。
 先輩方も遅れずについてきてくれているし、これなら大丈夫そう。
 やがて、本営に設置されたバリケードまでたどり着いたけど、それは既に破壊済みでぐしゃぐしゃだった。
 ところどころに冒険者の亡骸もあって……ここが戦場なんだって否応なしにわからされる。
 先輩方によると本営のもう一段階奥にもうひとつバリケードを作ってあって、非戦闘員や武器、糧秣のほとんどはそっちに移動済みらしい。
 先輩方もそちらに送り届けることにしたけれど、そこでも激しい戦闘音が聞こえた。
 戦っているのは……オークジェネラルと仲間ペットたち!?
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