上 下
65 / 100
第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第6章 〝ペットテイマー〟ドラマリーンでのハント

65. ウルフ狩りのステップワンダーによるウルフ狩りの説明

しおりを挟む
 ヴァイパーを大量に狩った翌日、今日はミィちゃんを冒険者ギルドの受付に預けたら新人冒険者たちを引き連れてウルフ狩りの講習会だ。
 ちゃんと話を聞いてくれるかなぁ?

「おはようございます、シズク様」

「おはようございます。ウルフ狩り講習の受講者はもう集まっていますか?」

「はい。いまは別室で待たせていますが、どうなさいましょう?」

「では、私も最初に一言あいさつを。あ、ミィちゃんをお願いします」

「わかりました。それから、今日は私も新人冒険者の護衛兼監視役として付き添います。ご容赦くださいませ」

「いえ、気にしません。新人冒険者が待っている部屋に案内してください」

「承知いたしました。こちらへどうぞ」

 早速、受付でかわいがられているミィちゃんを見送って私は新人冒険者たちの集まっているという部屋へ。
 受付のお姉さんがドアを開けてくれるとそれぞれ思い思いの武装に身を固めた冒険者たちがいたよ。
 うーん、でも、出発する前に前提から話さないとだめか。

「初めまして、皆さん。今日の講師役、アイリーン特使のシズクです。皆さんにウルフ狩りについて教えることになっています。なっていますが、最初に一言。ポールウェポンやロングランス、ロングソード、ロングボウなどを使っている人は冒険者ギルドに預けていってください。林や森の中では使えません」

 私の宣言に部屋の中がざわついたけれど……事実なんだよね。

「林や森の中では木々が多く障害物になります。障害物のない場所でしたら、それらの武器も有効ですが、林や森の中でウルフ狩りをする限り、間合いの長い武器は木に引っかかるか、木に突き刺さってしまうかのどちらかです。冒険者ギルドから短い武器を借りていってください」

「それじゃあ、ロングボウがだめな理由は!?」

「第一に動きにくいこと。ロングボウでは重く、長いため枝にぶつかることもあります。枝にぶつかってしまえば余計な音を立てて獲物に発見され、不意打ちを受ける可能性が高まります。第二に林や森では長い距離を狙えないこと。ロングボウは長射程の武器ですが、森の中では木や藪が邪魔になって長距離を狙えません。短距離しか狙えないなら短弓でも威力が出るものを選んだ方がよいでしょう」

「わ、わかりました」

 ふう、のダメ出しはこれくらいかな。
 次、のダメ出しだね。

「それから、防具ですが手入れが不十分です。もっとしっかり手入れを行いましょう。皆さんの収入ではレザーアーマーですら高額な買い物でしょう? それなら、毎日夜寝る前にメンテナンスをしましょう。革が痛んでいては防具としての効果も半減ですよ?」

 全員お互いの装備を見合っているけれど、私の目から見れば合格点をあげられる子はいないかな?
 みんな胸当ては綺麗だけどガントレットが汚かったり、ガントレットは綺麗だけど肩当てが汚かったりと入念な手入れがされていないことがわかっちゃう。
 この街で一番手に入れやすい革の防具がなんなのかは知らないけれど、メンテナンスをしっかりしておかないと半年もしないうちにひび割れとかを起こしちゃうよ?

「あ、あの。シズクさんのレザーアーマーは……? やけに光沢がありますが」

「ああ、これ。キラーヴァイパーのレザーアーマーです。アイリーンの街で得意にしている武具屋の余り物を特別安く売っていただけたのですが、着心地もよくて使いやすいですね。もちろん、毎日の夜に掃除やオイル塗りを欠かしていませんから、戦闘でついた傷以外は綺麗ですよ」

「キラーヴァイパーのレザーアーマー……それっていくらくらい?」

「適正価格は金貨3枚以上だって聞きました。それだって私がステップワンダーで使用する革の面積が少ないからこそのお値段です。人間族用だと……」

 はて、人間や獣人、エルフ用だといくらくらいになるんだろう?
 私、ステップワンダー基準の値段しか見てこなかったからなぁ。

「この街、ドラマリーンの武具屋で一般的なヒト族用のキラーヴァイパー製レザーアーマー一式を揃えるとなると金貨7枚程度です。キラーヴァイパーの皮を持ち込みで作ってもらえば金貨3枚程度まで減りますけどね」

「あ、補足ありがとうございます」

 そっか、ドラマリーンの街でもヒト族用のレザーアーマー一式ってなるとそれくらいするんだ。
 ミーベルンが将来なにになるかわからないけど、冒険者になりたいって言い出したときのために支度金はいまからでも貯めさせなくちゃね!
 素材は全部私が渡す予定だけど!

「そんなにするんだ、キラーヴァイパーのレザーアーマーって……」

「いや、Cランクの先輩方でも季節に1回の大討伐で死人が出てるんだろう? それくらいはするって……」

「でも、金貨7枚か。私たちの稼ぎじゃ遠い先の話だよね」

 うんうん、遠い先の話だよね。
 私、なんでD+ランクなのにミスリル貨30枚とか持っているんだろう?

「シズクさん、その肩と腹部についた大きな傷跡は? 完全にキラーヴァイパーのレザーアーマーが貫かれているように見えますが」

「ああ、これ。右肩の傷はオークレンジャーのボルトで撃たれたときの、腹部の傷はオークナイトの剣で刺し貫かれたときの損傷です。素材は集まりましたし、特使としての任務を終えたら、夏に行う〝オークの砦〟攻めに向けてレザーアーマーも新調ですね。間に合わせとして継ぎ接ぎをしてもらっていますが、〝オークの砦〟を攻めるときにこの継ぎ接ぎの鎧ではどうなるかわかりませんから」

「オークってそんなに強いんですか? Eランクになったら討伐対象にできるのでそんなに強くないと思っていたんですが」

「少なくともアイリーンの街に攻め込んできたオークは強かったです。特別な武具に身を包み、オークエンペラーに率いられた大部隊。一般兵のオークですら鉄の鎧を身につけている者も多かったです」

「そんなに……」

「はい、そんなにです。それから、私が先輩冒険者から学んだ話では、普通のオークでも倒すには相当苦労するようですよ。木の鎧に身を包み、厚い脂肪で守られ、鉄製の武器を振り回す巨体。ゴブリン程度の攻撃だったら皮の盾で受け止めればいいでしょう。でも、オークの攻撃は、皮の盾で受け止めれば盾ごと腕を砕かれます。それくらい強さに差があります」

「そこまでですか……」

「私も『天職』と装備のおかげで、オーク相手に大立ち回りを演じることができましたが、普通はやるべきではないですね。今回の講習で戦うウルフとその一段階上のゴブリンの強さも別次元ですのでお忘れなく」

「冒険者ってもっと楽なものだと想像していたのに……」

「楽なお仕事なんてありませんよ。可能であれば冒険者ギルドの資料室に行って魔物学の本などを読み、モンスターや魔獣の生態系や行動パターン、倒し方を学んでおくといいでしょう」

 懐かしいなぁ。
 私がサンドロックさんに教わって学んでいたのも駆け出しの頃。
 あの時蓄えていた知識ももう尽きる頃だし、もっと上位のモンスターや魔獣についての知識を仕入れないとだめかな?

「ともかく、今日はウルフ狩りの実体験と解体手順の説明と実践です。気を抜かないでください。気を抜けばウルフにだって殺されます」

「皆さん、本日の武器は冒険者ギルドから貸与もできます。特にシズク様から指摘された装備をお持ちの方々は借りていってください」

 さて、説明が長くなっちゃったけどここからが本番だよね。
 呆れられないように頑張らなくちゃ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり
ファンタジー
五歳を過ぎたあたりから、体調を壊し始めた弟。 お医者さんに診断を受けると、自家性魔力中毒症と診断される。 「大体、二十までは生きられないでしょう」 「ふざけるな。何か治療をする方法はないのか?」 その日は、なにも言わず。 ただ首を振って帰った医者だが、数日後にやって来る。 『精霊種の住まう森にフォビドゥンフルーツなるものが存在する。これすなわち万病を癒やす霊薬なり』 こんな事を書いた書物があったようだ。 だが、親を含めて、大人達はそれを信じない。 「あての無い旅など無謀だ」 そう言って。 「でも僕は、フィラデルを救ってみせる」 そして僕は、それを求めて旅に出る。 村を出るときに付いてきた幼馴染み達。 アシュアスと、友人達。 今五人の冒険が始まった。 全くシリアスではありません。 五人は全員、村の外に出るとチートです。ご注意ください。 この物語は、演出として、飲酒や喫煙、禁止薬物の使用、暴力行為等書かれていますが、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。またこの物語はフィクションです。実在の人物や団体、事件などとは関係ありません。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

末期の引きこもりが魔王のペットになって全力で愛でられます。

雪野ゆきの
恋愛
引きこもり生活かれこれ300年。久しぶりにお外に出て徹夜明けのテンションでふざけて魔王のペットに志願してみました。当然警備のヒト怒られて帰ったけど魔王が家まで追って来た!?ちょっと私今裸なんだけど……。え?養いたい?私を?マジか。 魔王がやっと自分の癒しを見つけて不器用ながらも全力で愛でるお話。 なろう、カクヨムでも投稿しています。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

ペットになった

アンさん
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

処理中です...