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第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第6章 アイリーンの街の危機

28. オーク部隊の存在

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「デイビッド教官、本当にそれだけのオークが潜んでいたんですか?」

 私はシラタマと一緒に冒険者ギルドで冒険者の皆さんを治療して周りながら、現在治療中のデイビッド教官に聞いてみる。
 デイビッド教官もかなりぼろぼろなんだよね。

「ああ。昨日、俺とお前でオークを倒しに行かなくて正解だった。〝ウルフのコロニー〟の中には普通のオークだけじゃなく、ハイオークやオークマジシャン、オークシャーマン、オークバーサーカーまでいたからな。なんとか半数程度は倒せたが、半数ほどは生き延びさせてしまった。そいつらも〝オークの砦〟がある方に逃げ帰っていったし、嫌な予感がするなんてものじゃない」

〝オークの砦〟とは古い時代の砦にオークが棲み着き、乗っ取った場所のことだ。
 この地方にあるオークの一大拠点であり、奥にはオークエンペラーがいるとまで伝えられている。
 ただ、オークたちも下手に侵攻を行えば逆に攻められることがわかっているから、巣穴を増やすとか旅人などを襲うとかそういうことくらいしかしないんだよね。
 それが、なんでいきなり大規模な侵攻を行おうとしてきたんだろう?
 私が知っている限りだと、オークバーサーカーってオークの中でも上位種のはずなのに。

「オークバーサーカーを仕留めることができただけでも幸いだったな。オークマジシャンとオークシャーマンの多くは逃がしてしまったが、ハイオークは討ち取れた。被害も大きかったが、まあまあの戦果だろう」

「そうですか。……あ」

「……魔力切れか? もう何本もマジックポーションを飲んでいるだろう? 無理をせずにもう休め」

「いえ、私にできることはこれくらいなので」

 私はマジックバッグから新しいマジックポーションを取り出して一気に飲み干した。
 魔力が回復したことを確認したら、デイビッド教官の回復を続ける。

「それで、シャーマンの呪いを受けた人たちも大丈夫なんですよね?」

「それは大丈夫だ。最初から一気に混戦状態へ持ち込めたからな。強力な呪術を扱わせる暇など与えなかった。街の施療院にいる解呪師でも十分なんとかなる程度だ」

「よかった」

「今日は戦死者が出なかったからな。骨折者は出たから長期の離脱者が出るのは仕方がないが、それでも治療の見込みがあるのは嬉しい限りだ。せめて、もうしばらく時間を稼げれば一般冒険者も金属鎧を使える季節になる。それからなら砦を逆に攻められるが、いまは耐えることしかできないのが歯がゆい」

「……はい」

〝オークの砦〟も〝砦〟というだけあって防御設備が整っている。
 門扉や壁などは崩れているけれど、それでも守りやすく攻めにくい形になっているらしい。
 金属鎧がまともに使えないこの季節じゃ無理だよね。

「さて、俺の治療はもういい。俺はギルドマスターに今日の結果を報告してくる。お前は、そろそろペットたちを連れ帰って休め」

「え、でも」

「マジックポーションの飲み過ぎも体に毒なんだ。街の施療院からもたくさんの応援が来ている。これ以上無理をしてお前まで倒れると余計な手間が増えるからな」

「わかりました。もう少しだけ治療をしたら帰ります」

「そうしろ。これ以上マジックポーションを飲むような無茶はするなよ」

「はい!」

 デイビッド教官と別れたあと、あと数人だけ治療をさせてもらってメイナさんのところに帰った。
 メイナさんも私が相当無茶をしてきたことはすぐに気がついたらしく、食事を食べて体をお湯で清めたらすぐに寝ろって言われたよ。
 もっとも、体をお湯で綺麗にし終わったらすぐに眠気がやってきて寝ちゃったけど。
 今回の一件、これ以上大事にならなければいいなぁ。


********************


「……そうか。オークまで出張ってきてたか、デイビッド」

「はい。いかがしますか、サンドロックギルドマスター」

「今回出陣した連中以外でジェネラルのことを知っているのは?」

「いません。シズクに聞かれましたが、で押し通しました」

「シズクなら勘違いしてもおかしくないか。どの程度、強さに差があるかなんてわからないだろうからよ」

「彼女も頑張りすぎですからね」

「〝ペットテイマー〟の能力に目覚めてからその傾向が顕著に出てやがる。低級冒険者なんてもっと気楽でいいのによ」

「1年間助けてくれたこの街のためになりたいんでしょう。私の怪我もすべて治してもらいました。装備も予備のものになりますが明日も出陣できます」

「デイビッド、今日出陣していなかった連中を率いて〝ウルフのコロニー〟を調査してこい。なにか残しているかもしれねぇ。ただ、街門が閉じる前の時間には帰ってこい。夜襲を受けると危険だ。あと、今日はいなかったようだが、アーチャーにも気をつけろ」

「わかりました。それでは」

「おう。明日の午前中はシズクを鍛えてやる日だ。シズクはそっちに気を向けておいてやるから、そっちも気を抜かずに行ってこい」

「はい。シズクが間違ってもついてこないようにしてください」

「今日の様子だと心配でついて行きかねないからな。少々強めに訓練して午後は動き回る気力を削いでおくよ」

「よろしくお願いします。では」


********************


「げほっ!?」

「シズク、気が散ってるぞ? そんなに外の様子が心配か?」

「いや、だって、デイビッド教官があんなに怪我をして帰ってくるだなんて……」

「デイビッドだってオークバーサーカー相手だときついんだよ。そら、お前もついていけるようになりたいんだったら、もっと死ぬ気でかかってこい!」

「はい!」

 今日も朝早くからデイビッド教官たちはオークたちがいないか見回りに行ったらしい。
 私は昨日、魔力を使いすぎた反動で朝起きるのが遅くなってしまったけれど、冒険者ギルドにきたあとサンドロックさんに聞いたところによるとそうなんだって。

 それでサンドロックさんも今日は1日ギルドで待機任務だから、丸一日私の訓練をつけてくれるらしいけれど、今日は普段に比べてかなり厳しい。
 でも、オーク相手に勝てるようになりたいんだったら、これくらいはできるようにならないといけないんだよね!
 よし、もっともっと、力をつけよう!
 そして、いつかは私もオーク討伐の輪の中に入れるようになるんだ!
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