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第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第3章 一人前の冒険者を目指して

7. 冒険者登録試験結果とクエストについて

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「う、うーん……」

「お、ようやく目が覚めたようだな」

「ええっと……」

 あれ、私どうしてたんだっけ?

「ん? お前、寝る前のことを覚えていないのか?」

「あ、はい……あ! デイビッド教官と登録試験!」

「ようやく思い出したか。もう昼だぞ? 魔力切れで寝てたんだからしゃーねーが」

 ああ、そうだった!
 デイビッド教官と冒険者登録試験を行っている最中、魔力切れを起こして医務室に担ぎ込まれたんだった!

「まったく。そっちのチビどもはしっかり警戒してるのに、主人の方は無警戒すぎるぞ?」

「チビ……あ! ミネルとキントキ!」

『儂らはここじゃ』

『僕たちは平気だよ!』

 よかった、ミネルとキントキは無事みたい。
 なにかあったらどうしようかと……。

「それにしても〝ペットテイマー〟か。小動物をテイムするなんて珍しい『天職』もあったもんだな」

「ええっと、あなたは?」

 さっきから普通に話していたけど、この獅子獣人の人は誰だろう?
 すごく体つきも大きくて……改めて見るとちょっと怖い。

「ん? ああ、自己紹介がまだだったな。俺は、サンドロック。この街でB+ランク冒険者をしている」

「B+ランク!?」

 冒険者ギルドのランクにもいろいろとあって、始まりはみんなGランクの見習いスタート。
 そこからF・E・Dという風に上がっていくんだけど、実質的な頂点はBランクっていうことになっている。
 なぜなら、Aランク冒険者って国難を排除したとかそういうクラスの実績を認められないとなれないからね。
 そこで出てくるのがB+ランク。
 B+ランクっていうのは、Bランクの中でもめざましい活躍がある冒険者にだけ与えられるランクで、これを持っている冒険者って国内でもそんなにいないんだって。
 そんなすごい人がなんで私のところに?

「ええと……なんで、サンドロック様は私のところにいらっしゃるのでしょうか?」

「俺相手に敬語なんて使わなくてもいいぞ。俺がここにいる理由はデイビッドのやつに頼まれたからだ。面白い新人がいるが魔力切れを起こすようなうかつなやつで、魔力訓練の仕方を知らなくちゃ大成できないだろうってことでな」

 うう……まさにその通りだ。
 戦闘中に魔力切れなんて起こしたら、間違いなく死んじゃう……。

「そういうわけだから嬢ちゃん……シズクっていったか。お前さんの訓練は週に一度程度だが俺が見てやるよ。とりあえず、最初は明日だな。一週間、つまり5日に一度、B+ランクの指導を受けられるんだ。光栄に思え」

「はい! よろしくお願いします!!」

 やった!
 なんだかよくわからないけれど、B+ランクなんてすごい人から指導してもらえるんだ!
 きっと、デイビッド教官のおかげだよね!
 明日、登録試験を受けにいったらお礼を言わなくちゃ!

「さて、もう動けるか?」

「ええと……はい、大丈夫です!」

「じゃあ、受付に行くぞ。今日の試験結果を聞かなくちゃいけないだろう」

「ええ、まあ。また明日頑張ります」

「明日は俺の指導だって言っているだろう? ともかく受付だ」

 サンドロックさんに連れられて冒険者ギルド1階にある受付カウンターまでやってきた。
 そこでは相変わらず、リンネさんがお仕事をしている。
 今日の試験結果を聞かなくちゃ。

「おう、リンネ。ようやく、目を覚ましたぞ」

「あ、シズクちゃん。だめですよ、午前中の早い時間に試験を受けたのに、お昼時まで魔力切れで寝続けるほど深刻な状況になるなんて。冒険者失格です」

「あはは……。明日また頑張ります」

「明日? あなたは今日から冒険者ですよ?」

「え?」

「デイビッド教官から合格の認定が出ています。あなたは今日からGランク冒険者になりました」

 え、今日から冒険者?
 でも、私、デイビッド教官に勝ててないよ?

「……その顔、デイビッド教官に勝てなくちゃ冒険者になれないと考えてましたね?」

「は、はい。違うんですか?」

「デイビッド教官はギルド所属になる前はBランク冒険者です。登録を受けようだなんて見習いが勝てるわけないじゃないですか」

 なるほど……だからデイビッド教官ってあんなに強かったんだ。
 てっきり勝たなくちゃいけないとばかり。

「あなたが冒険者になれてなかったのは単なる戦闘力不足です。それが解消されたため、冒険者登録が認められました。人格面と技術面では文句なしでしたから」

「よかった。でも、これで冒険者なんですよね!」

「はい、冒険者です。本来ならここで冒険者登録の証である冒険者証、つまりネックレスと冒険者タグを差し上げるのですが、あなたはいままで1年間も冒険者登録なしのまま毎日ウルフ狩りをしていましたよね? その魔石って保存していますか?」

「ウルフの魔石でしたら全部保存してあります。街の魔石屋に売ってもほとんどお金にならないので……」

「では、それらを持ってついてきてください」

「はい」

 リンネさんが案内してくれたのは『納品カウンター』と書かれた場所。
 ここでウルフの魔石を買い取ってくれるのかな?

「おや、リンネ。その子が今日登録したっていうステップワンダーか?」

「はい。1年かかってようやく登録できたステップワンダーです」

「そうか。じゃあ、ウルフの魔石もたくさん持ってるよな。それ、全部ここに出してみな」

 指し示されたのは、一台の天秤のようなもの。
 それの大きな方のお皿を指さされている。

「えっと、いいんですか? かなりの量になりますが」

「魔石の計算はすぐに終わるから気にするな。そういう魔導具だ」

「はぁ? じゃあ……」

 私は肉とかとは別に詰めていた魔石袋の中身をすべてこの天秤の上に置く……というか、袋からジャラジャラと出して天秤の上に落としていく。
 すると、天秤の上に落ちた魔石がどんどん消えていって、もうひとつのお皿の上にもっと大きな魔石ができあがっていってる!
 なにこれ、すっごい!

「……本当に1年間ってのはすごいな。こっちの皿からもあふれたじゃないか」

「1年ですからねぇ。再計算ですか?」

「さすがにこれは数えたくないから再計算だな。ステップワンダーのお嬢ちゃん、もうしばらく待っていてくれ」

 もうひとつのお皿の上に出てきた魔石をもう一度、大きなお皿に載せるとまたもっと大きな魔石ができあがっていっている。
 それを何回か繰り返して、かなり大きな魔石が1個と、それより小さな魔石数個ができあがった。
 ウルフの魔石も3個ほど残っているけれど、どうすればいいんだろう?

「まず、ウルフの魔石3個は返品だ。ウルフの魔石は5個で1回の納品だからな」

「あ、はい。わかりました」

「さて、残りの魔石だが……かなり大量だな。大銀貨になるぞ」

「ふぇ!? 大銀貨!?」

 大銀貨なんてあったらもっといい装備が買えちゃう!
ナイフもそろそろ買い換えないとだめになってきていたし、レザーアーマーも買い換え時だし!

「それで、適正な買い取り価格は?」

「大銀貨4枚と銀貨5枚、大銅貨2枚だな」

「……それ、一気にEランクですよね?」

「Eランクだな」

「クエスト達成回数票をください」

「ほれ」

「……Eランクの3分の1くらいまでですね。1年の功績としては多いですが、頑張った結果ですし、実績が出ている以上仕方がないでしょう」

「そういうことだ。まず、ステップワンダーのお嬢ちゃんには買い取り金だな。なくすなよ」

「はい!」

 私はもらったお金をお金袋にしまうフリをして《ストレージ》の中にしまい込んだ。
 こっちの方が安全だからね!
 ああ、新しい装備、楽しみ!

「というわけで、新人登録の結果、あなたはEランクスタートです。EランクなのでFランクモンスターのウルフ以外にもEランクモンスターのゴブリンやDランクモンスターのオークなどを相手にできますが……無理をしないでくださいね?」

「はい! しばらくはウルフだけを相手にします!」

「それから、Eランク冒険者証の有効期限は3カ月です。3カ月に1回はクエストを達成してください」

「……それってお肉とかも納品しなくちゃだめですか?」

「納品してくれるとありがたいですが、あなたは独自の販売経路を持っていますよね? 魔石の納品だけでも十分ですよ」

「やった! ミノス精肉店やウェイド毛皮店にもこれまで通り品物を売れる!」

「たまにはギルドにも売っていただきたいですが……まあ、仕方がありませんね」

 これでウルフの戦利品や薬草の葉はいままで通り街のみんなに売ることができるよ!

 やったね!

「よかったな、シズクの嬢ちゃん」

「はい!」

「俺からの訓練だが、明日の午前中につけてやる。できれば早い時間から来てくれ」

「わかりました! 訓練、お願いします!」

「ほれ、街で納品する分の狩りもしてこなくちゃいけないんだろう? さっさと行った方がいいんじゃないのか?」

「あ、そうでした! リンネさん、サンドロックさん。ありがとうございました!」

 狩りにも行かなくちゃいけないけれど、まずはメルカトリオ錬金術師店に戻ってメイナさんの話を聞かなくちゃいけないよね。
 新しい装備は……明後日かな。
 これからどんどん楽しくなりそう!


********************


「それで、なんでまたシズクちゃんの訓練をするだなんて言いだしたんですか? サンドロックギルドマスター?」

「ん? ああ。新人登録試験の様子を見ていたんだが、楽しそうなやつだったからな。デイビッドにも頼まれたしちょうどいいかなと思ってよ」

「まあ、構いませんけど。お互い怪我にだけは注意してくださいね」

「わーってるって。さて、珍しい『天職』を授かった期待の新人、どこまで磨き上げられるかねぇ!」
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