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第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第1章 〝ペットテイマー〟ってなに?

1.〝ペットテイマー〟シズク、ステップワンダー、21歳、女性、お仕事募集中

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本日より新連載開始!
しばらくは毎日3話更新です。
更新時間は朝7時10分、昼12時、夜19時10分の3回!
どうぞお楽しみに!

_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*


「はぅ……今日もだめだった……」

 私の名前はシズク。
 ステップワンダーの21歳。
 私の暮らしていた〝草原の遊牧小人〟と呼ばれる種族、ステップワンダーの里では20歳になると、儀式として里の外で最低100年は暮らさなくちゃいけないの。
 そのときに多少の路銀は渡されるけれど、それ以降は自分で稼がなくちゃだめ。
 だから、多くの仲間たちは人の街に入って〝冒険者〟ってなんでも屋になって稼いで生活するらしいんだけど……。
 私はそれにすらなれていないんだよね……。

「私の『天職』、ペットテイマーってなんだろう……?」

『天職』っていうのはその人が最も向いている職業……というか、スキル適正にあった職業を指す職業で、私の『天職』はさっきも言ったけれど〝ペットテイマー〟。
 私が覚えているスキルだって、〝ペット用ご飯作り〟、〝ペット強化〟、〝ペット語理解〟、〝ペット主従契約〟、〝ペット能力一時利用可能〟っていう、ペットの名前がつくものばかり。
 というか〝ペット用ご飯作り〟ってなに……?

「ペットってお貴族様とかが飼う愛玩動物のことだよね。そんなお金、私にはないしなぁ」

 この国〝ライミント〟で〝ペット〟といえば、お貴族様が飼育する愛玩用魔獣のことしか思いつかない。
 でも、そういう魔獣って大人しくなるように生まれた頃から調教されているって聞くし、戦力にはならないよね……。
 私は仕方がないから今日も宿代を稼ぐため、弱いモンスター退治と薬草探しのためにアイリーンの街を出た。
 私はステップワンダーだから身長こそ1メートル程度しかないけど、すばしっこくて何度も攻撃できるから普通のウルフが2匹程度だったら無傷で勝てちゃうんだよね。
 あと、野山に囲まれた里で暮らしていたから薬草が生えていやすい場所とか、採取方法だってバッチリ!
 冒険者じゃなくても、魔物の肉や薬草の葉はお肉屋とか錬金術師店に直接持ち込むことでお金になるからなんとか日銭には困ってないんだよ。
 ……日銭にしかならないんだけど。

「ああ、今日もあんまり稼げそうにないなぁ。どうしよう……」

 そんなことを考えながら街の近くにある林に分け入ってみる。
 他の冒険者は知らないみたいだけど、この林の奥に薬草の群生地があるんだよね。
 ちょっと沢登りをしなくちゃいけない場所だから簡単にはたどり着けないけれど、薬草採取で気をつけなくちゃいけないことを守ればある程度の枚数は毎日採れてお小遣いになるもん。

「ホーホー」

「あれ? 鳥の鳴き声?」

 普段この林じゃ聞いたことのない鳥の鳴き声がする。
 一体どこにいるんだろう?

「ホー(お主、儂の声が理解できぬか?)」

「ふぇ!?」

「ホーホー(その反応、声が理解できるようじゃな)」

「ど、どこから!?」

「ホホー(上じゃ)」

「上?」

 上の方を見上げると真っ白い……あれはなんていう鳥なんだろう?
 体が細長い丸のような……よくわかんない。
 顔もここからじゃよく見えないし。

「ホッホッ(とりあえずそちらに行かせてもらう。緊急事態じゃしな)」

 そう言うと鳥さんは翼を広げて……結構大きい翼だね。
 ともかく、翼を広げて私の肩に止まった。
 ……鉤爪とか鋭そうだし、しっかりした革製のショルダーパットついててよかった。

「ホーホッ(儂はシロフクロウ。すまぬが、急ぎで助けてもらいたい者がいる)」

「助けてもらいたい者?」

 この鳥さんと会話できていることが不思議でたまらないけれど、細かいことはあとあと!
 とりあえず助けたいっていう人を助けなくちゃ!

「ホッホッホー(この先の茂みに隠れているが、ウルフ4匹に囲まれていて身動きができぬ。見つかるのも時間の問題。儂と契約して構わないので、すぐさま助けてやってほしい)」

「え? 契約?」

「ホー? (お主、『ペットテイマー』じゃろ? 儂に名前をつければ契約完了じゃ。急げ)」

 いや、急げといわれても、ペットテイマーってどういう職業なの?
 それ以上に、この鳥さんと契約ってどうすれば……?

「ホッホッホー! (名前はあとからでも変えられる! ともかく急げ!)」

「わ、わかりました! じゃあ〝ミネル〟で!」

 私がそう宣言すると白い鳥さん、〝ミネル〟は光り輝き、首に銀色のネックレスがかかっていた。
 あと、私にもいろいろな知識が流れ込んできて……なにこれ!?

『契約は無事終了じゃな』

「ミネル!? 普通に喋ってる!?」

『心配するな。他の人からはホーホー鳴いているようにしか聞こえぬ。それよりも……契約者名はシズクか、急ぐぞ。せっかく契約したのに手遅れになっては元も子もない』

「う、うん。わかった! 〝飛んで〟行けばいいの!?」

『いまのお主では林の中など飛べぬよ。儂のあとをついてこい』

 ミネルが私の方から飛び立つと林の奥の方へ向かっていった。
 私も必死でそのあとをついていくけど、私ってこんなに体力あったかなぁ?
 いろいろ疑問はあっても、ともかくミネルに置いていかれないようにするのが先。
 そして、ミネルはある程度奥まで進んだところで木の上に止まった。
 ここが終点?

『視覚を共有する。状況を把握せよ』

 視覚の共有……そんなことまで『ペットテイマー』ってできるんだ。
 そんなことを考えていたら、ミネルが見ている光景が飛び込んできた。
 確かにウルフが4匹、茂みの前をウロチョロしてなにかを探している。
 あの茂みの中に助けてほしい者がいるのかな?

『相手は4匹。まともに戦って勝てるか?』

「無理。3匹相手でもきつい」

『では儂の能力を使え』

「わかった。頭をグシャってやっちゃえばいいんだね!」

『胴体ごとでもいいぞ? 儂の鉤爪はその程度で防がれるほど弱くなどない』

「お肉を持って帰って売りたいの!」

『……まあ、よい。儂には儂のスキルを使えぬ。あとは任せた』

「うん! 視界にはバッチリ見えているし……行くよ! 《魔の鉤爪》!」

 私がミネルから借りた力で発動したスキル、《魔の鉤爪》。
 魔力を使って鋭い鉤爪を作り出し、対象を握りつぶすスキルなんだって。
 ウルフの頭も狙い通り潰れてはじけ飛んだし……おぉ、スプラッタ!

『1匹が突然死んだことで、残りの3匹もこちら側に集まって来たな』

「残りの3匹もグシャってやっちゃおう!」

『……好きにしてくれ』

 ミネルも好きにしていいっていうことだし、私は《魔の鉤爪》で残り3匹も頭をグシャってやっちゃった。
 体には一切傷をつけていないから、今日の買い取り価格は期待できそう!
 あと、毛皮も高く売れるかも!

『とりあえず、危機は去ったな』

「そうだね! 早く、茂みに隠れている人を助けなくちゃ!」

『人? 隠れているのは人ではないぞ?』

「え?」

『ともかく近くに行くぞ。怖くて出てこられないのじゃろう』

「う、うん」

 隠れているのは人じゃない?
 じゃあ、なにが隠れているんだろう?
 私は不思議に思いながらもミネルと一緒に茂みの側までやってきた。
 ……そういえば、この茂みじゃ人は隠れられないよね。
 ステップワンダー基準で考えちゃってたよ。

『もう安全じゃぞ。出てこい』

「クゥーン(もう大丈夫?)」

 茂みをガサガサ揺らしながら出てきたのは……とってもかわいらしい犬でした!
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