1 / 7
1話 パーティー追放
しおりを挟む「お前が居るとパーティーの価値が下がる! 出てけ!」
レドルンドがそう言うと、周りにいた冒険者が一斉に笑い出した。
レドルンドは、このパーティーのリーダーで、僕の倍くらい背が高く右手には剣を持っていた。
パーティーに入ったばかりの頃から僕に対してだけ当たりが強く、いかにも僕のことが嫌いそうだった。
今までは、僕に対して何をするかわからないレドルンドに対し、怖くて反抗することが出来なかった。
でもいざとなったら反抗できるだろうと内心何処か思っていた僕が間違っていた。
恐怖で震える左手をもう片方の手で押されながら僕は、レドルンドに理由を聞いた。
「ど、どうして!」
「お前のその雑魚スキルのせいで俺たちの価値が下がってんだよ!」
レドルンドが、そう声を荒げて言った。
僕には唯一のスキルがあった。
それは「透視」と言う何かを透かして見ることができるスキルらしいが、僕にはずっと何も見えていなかった。
何故なのかはわからないが、こんなスキルを使うこともできないくらい自分が弱い可能性があるってことは何となくわかっている。
ただ、僕が今こんな状況になっているのはそれだけが理由じゃない。
このスキル「透視」が、女性の服を透かして見ることができるんじゃないかと勝手に噂され、それが他の冒険者たちに広まってしまった。
でもこのスキルはそんな有能な能力は今の僕が見る限り持っていない。
それなのに、僕は女性の服を透かして見る事が出来るスキルを持っていると言う嘘の噂でパーティーの価値を下げていると言われ続けてきた。
もちろん、その自覚はあったがどうすればいいのか自分でも分からなかった。
でも、僕はパーティーを自分から抜けるわけにはいかない。
幼い頃に両親から捨てられた僕は、なんとか自分で生きていくためお金を稼がないといけなかった。
そのために僕は周りからなんと言われようとこのパーティーの役に立とうと全力で協力してきた。
なのに……
「僕には何も見えてない!」
「じゃあお前のその透視とか言うスキルはどうゆう効果なんだよ!」
そうレドルンドに言われるが何も答えられない。
このスキルの効果がわからないせいで、噂を否定しても何も答えられず、本当に透視できていると思われ逆効果になる。
これを何度繰り返したことか……
ただ僕にはこうして否定し噂が広まるのを止める事しか出来なかった。
「何も言わないって事は、本当に見えてるって事じゃね?」
周りの冒険者は、小声でそう口づさんだ。
男冒険者には馬鹿にされ、女冒険者には避けられ、それでも折れる事なくパーティーに協力してきたのに……
ついに今日はパーティーにも……
考えれば考えるほど打開策が分からなくなる。
僕は、後がなく泣き崩れてその場でしゃがみ込んでしまった。
レドルンドは、その場を盛り上げ、掛け声をしながら泣き崩れた僕の頭に3発蹴りを入れてその場を去った。
「じゃあな。ヴィリー」
他の冒険者たちも、レドルンドに続き呆れたような顔をしながらその場を去り、僕は1人取り残された。
こうして僕は、パーティーを追放された。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる