雛人形の男雛に求婚されました。改訂版

謝罪合戦１

居間に戻ってお茶とお持たせのきんつばを専用の楊枝(クロモジ)と一緒に出して勧めた。お茶は三回にわけて順々に濃さと量が均等になるように急須で慎重に次いだ。

 クロモジで切り分け口に運ぶと優しい甘味。自然に顔が緩んでくる。老舗の和菓子屋さんのきんつばと、玉露とかじゃなくて普通の緑茶だけど美味しい。支倉さんが、微笑ましい顔で見ていたみたいだけど、それよりも目の前の残りのきんつばを味わうことに、集中していた。いまは、色気より食い気なのである。


休憩後


「まず、カナちゃんに謝りたいことがあるんだ。」そう、支倉さんが切り出した。真剣そうだったので、余計な口を挟まず、相づちだけして真面目に聞いてみることにした。

「初めて会ったときに本当はカナちゃんが男の子だと気付いていたのに姉さんの服を押し付けてしまってごめんなさい。カナちゃんは別に女装が趣味なわけではなかっただろ？カナちゃんに男の子も女の子も近づいて欲しくないからって、束縛していたことについては謝らないけれど、あと、迎えに来るのが遅くなって本当に申し訳ない。」

「小学校からは、普通に男の子として過ごせてたし別にいいよ。周りは、皆優しかったし、あとで、なんか言う人がいても鈴木とか磯谷が言い負かしてくれてたもの。もう、私を置いてどっか行っちゃわなきゃ良いんだよ。許します。女の子だと騙してた罪悪感がなくなって、むしろほっとした。それに私もいくつか謝らせてほしいよ。」

「何かな？」

「中学生の頃、浮気してゴメン。」

「大丈夫だよ。知ってた。手を繋いでるところをみちゃった時は絶望したけど…それ以上は本当に何もなかったんだろう？」え、なんて間が悪いんだろ…それがなかったら…。とっくに。あとで、従兄弟夫婦の元にロシアンルーレット激辛饅頭でも嫌がらせに贈ろうかな？割って調べてから食べれば双子ちゃんは食べずに済むし。