上 下
37 / 45

33

しおりを挟む
「···················え?」


あまりの唐突な出来事に裏返りの声が出てしまった。


「····春馬、だよね?」


主人公の虹宮はキラキラした顔で俺を見てきた。


「はい、そうです。」と答えてしまえばきっとこの場は上手く収まるだろう。


だが、俺は言いたくない。考えてみろ?


今朝、俺の家に居た不審者だぞ?


例えこのゲームの主人公だとしても不法侵入で訴えるよ?え?


そんな奴に俺の名前を覚えられてたまるか。


俺は意地を張ることにした。


「いえ、違いますけど?」


我ながら何にも同様しているようには見えない素振りだろう。


俺の答えに虹宮は目を丸くした。


が、その後すぐにニマ~とニヤけて悪巧みをしているような顔で話をした。


「え~?じゃあ、昨日の夜、飼い猫にデレデレだったのは誰~?」


そう言って携帯を取り出し、録画していたであろう動画を俺に向けて見せてきた。


『シルクぅぅ!』


『にゃあ』


『なんでお前はそんなに可愛いんだ?』


『にゃあー』


『んふふ!にゃー』


「···················」


それは昨日の夜の俺がシルクに癒されている時の映像だった。


「······や、ちがう。·····俺、じゃ········」


まさにこれは公開処刑だった。


この動画を見てクラスメイトが何やらボソボソを呟いているが俺には聞こえてこない。


「じゃあ~これも??」


そう言って、抱き枕を抱えて寝ている俺の写真を見せてきた。


もちろん、クラスの人たちに。


(·······え?なんでこいつ、持ってんだ?は?·······え?なんで家に·····?え?)


漂う不信感と羞恥心で俺の気持ちはぐちゃぐちゃだった。


「ね~?違う?」


(······こいつ·····っ!)


きっと俺の額には立派な青筋が立っていることであろう。


俺はこの際、もう開き直ろうと思った。


「·········よ。」


「え?」


「そうだよ!!おれだよ!!猫なで声で喋ってんのも、その写真も!大体なぁ···俺は抱き枕が無いと寝れないんだよ!文句あんのか!?」


「···············」


もう、最後の言葉は八つ当たりだった。


そして、俺の放った言葉にクラスがシーンと静まり返った。


*****


星吾side


今日、このクラスに1人の転校生がやって来た。


何やら、あんまいけ好かない奴だと俺の脳が言っていた。


名前を、虹宮唯。


容姿は一際目立ち、よく通るその声にクラスは興味を持っていた。


すると、虹宮は自分の席に着くのではなく春馬の目の前に立った。


春馬は驚いているのか口をポカンと開けて、目をぱちぱちさせていた。


(·····可愛い。可愛い。)


虹宮は春馬の前に立つなり、キスをした。


触れるだけの、だったが、俺は頭に血が登り今にも飛び掛りそうだった。


更なる連続で、春馬が飼い猫と猫なで声で喋っている動画と、抱き枕を抱いて寝ている写真を見せられた。


(·······は?かわいいかよ。)


春馬に対する好感が上がるのと同時に、虹宮に対する嫌悪感と不信感が俺を襲った。


(······俺も写真持ってないのに!)



チラと横を見ると春馬は手を握ってプルプルと産まれたての子鹿のようになっていた。


「そうだよ!!おれだよ!!猫なで声で喋ってんのも、その写真も!大体なぁ···俺は抱き枕が無いと寝れないんだよ!文句あんのか!?」


目に涙を貯めながら、顔を真っ赤にしながら訴えた。


(······抱き枕が無いと寝れないとか、················はぁ、天使かよ。)


俺が春馬に熱い視線を向けていると、虹宮が俺に向かって「くっつけ」と口パクで言ってきた。


その言葉に不思議と嫌味を感じなかった。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

ボスルートがあるなんて聞いてない!

BL
夜寝て、朝起きたらサブ垢の姿でゲームの世界に!? キャラメイクを終え、明日から早速遊ぼうとベッドに入ったはず。 それがどうして外に!?しかも森!?ここどこだよ! ゲームとは違う動きをするも、なんだかんだゲーム通りに進んでしまい....? あれ?お前ボスキャラじゃなかったっけ? 不器用イケメン×楽観的イケメン(中身モブ) ※更新遅め

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」 え?勇者って誰のこと? 突如勇者として召喚された俺。 いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう? 俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。 背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。 魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。 魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。 少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。 異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。 今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。 激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ

悪役転生したはずが主人公に溺愛されています

zzz
BL
死んだ。そう気づいて目を開けると、全く知らない世界にいた。 いや、全くと言ったら嘘になる。 俺はこの世界を知っていた。 なぜならここは、俺も開発に携わったゲームの世界だったからだ。 そして俺は主人公である勇者に転生……ではなく、勇者に嫌がらせをし、最終的に殺される悪役に転生していた! 死ぬのはごめんだがケツを狙われるのもごめんなんだけど!!?

噂の補佐君

さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。 [私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。 個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。 そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!? 無自覚美少年な補佐が総受け * この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。 とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。 その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

処理中です...