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嵐の前のパーティー

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一週間ぶりに会議室には各国の国王と神官が集結していた。

まずは現在集まっている情報の共有を行った。


●国民は洗脳されており、先ずは洗脳を解かなければならない。
●光属性の魔術師が居なければ洗脳は解くことができない
●二度と洗脳させない為に洗脳魔法に使用した魔法陣を破壊する必要がある
●魔法陣は王城の広場に描かれている(鳥獣人が確認済み)
●攫われた獣人は地下牢に繋がれている。
●国境に建てられた塀や堀は強度を保つ為魔法が少し使われている


中級以上の光属性持ちは各国から集め、神官達も力を貸してくれる事になり総勢70名となった。

まずレイオンが塀や堀の強化魔法を解除し、王城の魔法陣を破壊する。

その間に光属性持ちは王城から一番遠い所から洗脳を解いていく。

人数、時間的にも王城の人間はレイオンが洗脳を解きに行ったほうが良いという判断で一人で行う事になった。

猿獣人はその間に人国に潜入し、潜伏する。(洗脳が解けた国民の動向を探る為)

虎獣人と神官達は地下牢へ攫われた獣人達の保護に向かう。


空には鳥獣人が待機し、保護した獣人達を運搬する。


一連の流れはこんな感じになった。




「決行は明後日の未明、皆が寝静まった時に行動します。全員黒の衣服とお渡しした加護のブレスレットを必ず着用してください。」


加護のブレスレットとは、私が創り出した物だ。

私にも何か出来ないかと、レイオンに怪我一つなく無事に帰って来ますようにと願いを込めてミサンガを作ってみた所、それに加護が付いていたという代物。

メアリにもミサンガを作って貰って私が祈りを込めた所、そちらにも加護が付与されていたので、手の空いた侍女達と共にミサンガを作り続け人数分揃えた。


光属性持ちの方と空で待機する獣人、潜伏する猿獣人と魔導騎士達、総勢120名分となると本当に大変だったけど、沢山の人が協力してくれた為何とか今日までに間に合った。


「明後日は22時までにライオン国の王城に集まりましょう。
この案件は決して外部に漏らさないように。
もし、一言でも漏らした場合は…私には分かりますので。」


レイオンはニヤリと笑い言葉を切った。


いや、最後まで言おうよ。
色々想像しちゃって怖いじゃん!


「確認ですが、明後日は神子様はこちらで待機でよろしいですか?」


「ああ」

「え!?私も行くよ!?」


グイッとレイオンの服を引っ張り見上げると拗ねたような顔をされた。


「ダメです」 

「やだ」


「何があるか分からないんですよ。」


「そんな所にレイオン一人行かせるなんて嫌!」


「…アルグレイも連れていきますよ。」


「それでも、ここに一人残るなんて嫌!一緒に行く!」


何だか嫌な予感がするんだもの。


「アゲハ様……」

「せめて、ライオン国に一緒に連れて行って。」


うーんと唸るレイオン。



「レイオン、アゲハ殿も一人で残されたら不安じゃろ。ライオン国の王城でレイオンの帰りを待っててもらったらいいじゃろ?
アゲハ殿に何かあっても直ぐにお主が駆けつけれる距離に居たほうが安心じゃて。」



「お爺ちゃん!!」



援護射撃してくれる虎国のお爺ちゃん王様に嬉しくてついお爺ちゃんと呼んでしまった。


お爺ちゃん王様は目尻のシワを深めニコニコ笑ってくれる。


「はぁ………まるで孫娘の我儘を聞くお爺ちゃんですね、ゴルディ王。ならばライオン国で私が離れている間はゴルディ王が必ずアゲハ様を守ってくださいよ。」



拗ねたままの口調でレイオンはお爺ちゃん王様に言う。


「もちろんじゃ」



レイオンとお爺ちゃん王様は、師弟関係にあると聞いた。
当時世界一の魔術師であったお爺ちゃん王様は、魔力が膨大で魔力暴走を起こしていたレイオンを預かり力の使い方を遊びと称して訓練してくれたそうだ。

父親の皇帝よりお爺ちゃん王様と話す時のほうが飾らず気を許しているのはそういう事からなのだろう。


こうして、私も一緒に行ける事になった。




ーーーーーーーーーーーーーー



会議の後、パーティー会場へ移動し、レイオンとお爺ちゃん王様に両側を挟まれ各国の国王と挨拶をかわした。

驚いたのは、兎国の王様は女王様だった事。

女性っぽい見た目だなと思ってはいたが本当に女性だった。

しかも旦那さんは熊国の王様。

王様同志が結婚しても問題ないのかと思っていたら、国境を挟んで城が背中合わせに建てられていて、廊下で繋がっているそうだ。

ならもう一つの国にすればいいじゃんと思ったのは私だけではないようだ。

他国の王達もそう思ってはいるみたいだが、本人達は頑なに一つの国にしないらしい。



そして爬虫類獣人の国王は龍族だった。
しかも人国に連れ去られた龍獣人はこの国王の息子だった。
王子は番を探しに出たまま戻っていない。龍には不思議な力がある様で、もし家族が死んでしまったらわかるらしい。
しかし、王子が死んだという感覚はなく、気配は人国の方からするらしい。

今回、鳥獣人が空で待機するが、数人の龍獣人が獣化して一緒に待機する事になった。


龍国王はとても気さくな方で、虎お爺ちゃん王様と親友だそうだ。

レイオンが皇帝に呼び出された。

私は虎お爺ちゃん王様と龍国王と一緒に居る様に言われ、アルグレイまで護衛としてつけられた。



「神子様、レイオンは我儘を言ったりしていませんか?」


アルグレイにそう聞かれた。


「え?いや、私の方が我儘を言ってますので」


「そうですか?アイツは今まで誰にも執着した事が無かったんですよ。なのに神子様には凄く執着している。常に張り付かれてるんでしょ?母さんが言ってました。」


「メアリったら……」


レイオンはメアリとバルトロイの前でも気にせず私を膝に乗せるから恥ずかしくてしょうがない。


「母さんも父さんも、もちろん俺も嬉しいんですよ。あいつは白氷狼だから番に対する執着が強い。そのせいで、人を好きになる事をずっと避けてきました。特別な人を作ることも。」


遠くで皇帝と話しているレイオンを見つめる。


「もし自分に特別な人ができた時、ちょっとした事で嫉妬したり執着から相手を傷つける事を怖がっていました。
でも貴女がここに来てくださってから、レイオンはとても楽しそうで、常に張り詰めていた空気が今は穏やかです。」


「レイオンは常に張り詰めていたんですか?」


「えぇ。会議の時のアイツですよ。ピリピリして冷たい目をしていました。城で働く者たちや国民には優しいのですが、結婚を急かしてきたり、自分の娘を当てがおうとする貴族達にはそれはもう容赦がなかった。
貴族の気持ちも分からなくはないんですよ?
顔良し器量良し、地位もあって魔力量も世界一。そんな完璧な男に娘を嫁がせれるものなら嫁がせたいでしょう。」


「そうかもしれないけど、レイオンの気持ちは置いてきぼりになっちゃうよね。」


「えぇ。まぁ一度冷たく断られればそれ以上言っては来ませんが、たまに自分に自信のあるご令嬢がしつこく付き纏う事はありますね。」


「えぇ………」


「付き纏われても、レイオンは徹底して冷たい態度を変えませんよ。酷い時は、俺達魔術騎士につまみ出させますから。
触れて来ようとした令嬢にシールド張って、弾き飛ばした時は場の空気が凍りましたね」



ケラケラ笑うアルグレイ。

いや、笑えないよ…


女性にも冷たいレイオンなんて想像できないなぁ。


「何がそんなに面白いんだ?」


いつの間にか戻って来ていたレイオンにアルグレイは肩を掴まれ飛び上がった。


「お前!気配消して近づいて来るなって昔から言ってるだろ!!」


「はいはい兄様。アゲハ様に変な事吹き込まない。」


「兄様??」


アルグレイとレイオンのやり取りは結構好きだ。


「聞いてくださいよ神子様。レイオンは昔から一緒に過ごしてたせいで、俺の事本当の兄だと思ってたんですよ。」


「子供の時の話だろ!」


「子供の頃は可愛かったよなー。寝る時は直ぐに獣化して人のベッドに潜り込んできたり、俺が学園に通う事知った時レイオン大泣きして獣化して鞄に潜り込んだんだよな」


「まじで止めろ…アゲハ様、アルの話は聞かなくていいですから!」


必死にアルグレイを止めようとするレイオンだが思わぬ所から爆弾が透過された。


「儂の所に来たばかりの頃は、アルグレイ達に会えなくて寂しくて獣化が解けなくなったことがあったのぉ。あのレイオンはとても可愛かった」


「あぁ、初めて私の獣化を見て怖かってゴルディの頭によじ登ってぷるぷる震えておったなぁ」



虎お爺ちゃん王様と龍国王が懐かしそうに笑っている。



「もうホント止めて…」


ガックリと肩を落とすレイオンに、私達はケラケラと笑った。


「見てみたかったなぁ、レイオンの子供の時の姿。凄く可愛かったんだろうね」


小狼とか絶対可愛いだろうなぁ。

この世界には写真とかないのかなぁ?


「可愛かったですよ。今度写真見ます?」


「あるの?!見たい!!」


アルグレイはニヤッと笑って頷いてくれた。


レイオンは諦めたのか、「もう好きにして…」と耳をへにゃっとさせている。


こうしてパーティーは楽しい時間で過ぎていった。












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