もふもふパラダイスと神の野望

アゲハとレイオン

『俺に甘えて欲しい』

と言ったあの日から、レイオンとの物理的な距離がメチャメチャ近くなった。

ソファに座る時は膝抱っこ。

寝る時は獣化して添い寝。

皇子としての仕事は執務室でするけど、何故か私も一緒に行って図書館で借りた本を読んでいる。

四六時中一緒に過ごしている。

おかしい。

いや、おかしいのはレイオンだけでなく私もなのだ。


元々一人で過ごすのが好きな私はこんなに他人と居るなんて無理なはずなのだ。

なのに、レイオンと居るだけで安心し、苦痛など感じない。

それどころか、レイオンが居ないとソワソワして落ち着かなくなる。

ナンダコレ

どうした私。




異世界に来て早8日

今日は各国の王様が集まって、情報交換と今後の方針を決める事になっている。


この一週間でこの帝国の事と他国のことを知った。

この帝国の国民は多種族で吸収された国の元王族が領主を代々務めている。


多種族の為、法律はしっかりしている。
本能だとか、性質だとかに関わらず皆が法律に則って生活している。

簡単に言えば、子供は各領地で国語と算数を学ぶ。
親は親の義務として学ばせなくてはならない。
もし学ばせなければ、親は親権を剥奪の上罰金を払わされる事になる。

子供は領主の家で引き取り12歳までそこで暮らす。
子供が親に会いたければ好きなだけ会うことは可能だ。
子供が12歳になった時、親元へ帰るか養子に出るか決める事ができる。

ただし、虐待(精神的·肉体的·育児放棄)があった場合は親権の剥奪と、実刑が言い渡され子供には一切会えなくなる。
子供は養子を望む家で暮らし、12歳になったらそのまま養子縁組をするか、他の家と養子縁組をするか決めることができる。

結婚は成人を迎える年になればできる。
成人は18歳で魔法学園を卒業と同時に成人として扱われる。

刑罰は年齢に関係なく、故意に相手を傷つけた場合や殺人、強盗、嫌がらせ、ストーカー行為など、罰せられる。

裁判は証拠が無くても、真実の指輪を嵌め裁判で話すことで、真実しか話せないので判決がくだる。

この指輪は歴代の闇属性の魔法使いが作ったもので、着けた者の魔力を使い発動するすぐれものらしい。

嘘発見器より恐ろしい物である。


こうやってこの帝国は平和を築いているらしい。



「レイオン、そろそろ降ろして？」


まだ膝の上に抱っこされたままな私。


「…ここで待ってますか？」


「行きますー」



さっきから何回このやり取りしてるんだか。


レイオンは何故か私を他の王様達に会わせたくないみたいだ。


「どうしても行きたいですか？」


「もちろん」



はぁ…と溜息を吐き私を膝から降ろした。


「洋服着替えません？」


「もう時間ないよ」


今日はこの会議の後、私の歓迎会みたいなパーティーが開かれる。
本当はもっと早くする予定だったらしいけど、人国の事があって、バタバタし過ぎた為今日まで延びていたのだ。


だから今日の洋服はドレス。

青いチューブトップのドレスは金色の刺繍が裾とウエスト部分に施されていてシンプルだけど凄く綺麗。

首にはネックレスではなく黒のチョーカーをつけている。
白い大きな宝石が真ん中に付いていて模様を描く様に金色の小さな宝石がちりばめられている。

イヤリングは無し。

この世界はピアスしかないみたいで、私は耳に穴を開けていないので着けれない。

その代わりに、小さめのティアラを着けて貰った。



「………ではせめてこれを羽織っていてください。」


そう言って上着からマントを外し私の肩にかける。


「これじゃあ歩く時引きずっちゃうよ」


「抱いていくので問題ありません」


いやいや！！問題大有りですから！



「レイオン…」


「…今日だけです。お願いですから……」


耳をへにゃっとさせ上目遣いで手の甲にキスをするレイオンは、この仕草に私が弱い事を理解しててやってくる。

ズルい…と思いつつ私はレイオンにまたしても勝てなかった。


「…今日だけね…」


「はい♪」


ニコニコ上機嫌に微笑み、尻尾をブンブン降ってくるレイオンに溜息がこぼれた。