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アゲハの心情

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『レイオン、よろしく頼む。』


ウェゼー神が最後の言葉を紡ぐと私の足は地面を叩いた。

って裸足!!

冷たくないし、寒くないけど、裸足ってありえないから!

あの馬鹿神め!!


何がレイオン、よろしく頼むだ!

レイオンって誰だよ!!


ふと視線を感じ、視線の方へ目を向けると愕然とした。


頭に耳がある者、頬に鱗のようなものと爬虫類のような尻尾がある者、背中から羽が生えている者も居る。


異世界感半端ねえ…


私が観察している間も彼らは微動だにしない


こっちから声をかけるべきか…と思っていると、不意に真っ白い耳をピンと立てた金髪碧眼の美青年と目があった。


うわぁ…海外のモデルみたいに綺麗な人。

物語の中ならヒーローポジション的な感じだな。


なんて考えていたら、その青年がいつの間にか目の前に来ていて、跪いている。


「アゲハ様、申し訳ございません。」


「えっ?」


美青年の上目遣いダメ!!その耳もさっきまでピンと立ててたのに、へにょっとしてる!触りたい!!可愛い!!


※アゲハは大の動物好き。動物の事になると多少変態になります。


「まさか裸足でいらっしゃるとは思いもせず…靴の用意をしておりませんでした。無礼とは存じ上げますが、抱きかかえさせてはいただけないでしょうか…」



抱きかかえる!?


「いや…私重いので……」


「ダメ…ですか?」


へにょっ耳がペタンと頭にくっついてしまった!!

可愛すぎるー!!!!
はっ!尻尾まで不安そうにへにょっとして右往左往ゆれてる!!


「だ……ダメ……じゃないです…」


負けた


いや、負けるだろう。


ケモミミ+尻尾の破壊力に勝てるわけがない。


青年はパッと華やいだ笑顔になり、耳もピンと立ち、尻尾をブンブン振っている。


いーやー!!私を萌殺す気ですか!?
鼻血噴きそうに萌萌キュンなんですけどー!!


※アゲハ、萌すぎて変態悪化中


「では失礼します」


そう青年は言うなり、軽々と私を抱き上げた。

おぉ!視界が高くなった!


「レイオン!!」


「…父上」



青年は眉間に眉を寄せ私達を遠巻きに見ていた人達の中から出てきた人へ視線を向ける。


「神子様、ようこそおいでくださいました。この帝国の皇帝レインバルト=ウェンゼルと申します。その者は私の息子レイオンです。」



「…帝国……レイオン?」

さっき馬鹿神が言ってたレイオン?

チラッと青年に視線を戻すと、今度は眉を八の字にし耳も少しへにょってなっている。


うーん…?



「父上、他国の王様方、神官殿方。いくら夏期であってもアゲハ様は薄着に裸足です。
中でお茶を飲んで頂きながらお話するべきではないですか?」

キリッとした顔で耳もピンと立たせて青年は口をひらき、そのまま神殿へ足を進めた。


一瞬ザワついたが、皆後からついてきた。

青年は先程の可愛い感じがなくなって、ピリピリした雰囲気をまとっている。

あの皇帝の息子なら、皇子ということか。

あと、ここに居るのは綺羅びやかな格好したのが各国の王様で、真っ白いローブを着ているのが神官ってことだな。



私が通されたのは(抱きかかえられたまま連れてこられた)楕円形テーブルを囲うように5人くらいが座れそうなソファが置かれた豪華な部屋だった。

大きな窓があり、シャンデリアがキラキラ輝く。

私の真ん前に先程挨拶してきた皇帝が座り、その両隣に神官とライオンの獣人っぽい王様が座り、私から見て右側のソファには天使の羽のような羽がある獣人の王様と爬虫類系獣人の王様、馬獣人の王様、トラ獣人の王様が座っている。
左側のソファには…熊獣人?体が大きくて可愛い丸い耳がついている王様と兎獣人の王様と…耳は人間と一緒だけど尻尾があるから、猿獣人かな?その王様と、象獣人の王様が座っている。

色んな種族がいるんだなぁ…なんてボケっと見ていたら、真横に人の気配を感じて飛びのいた。


「神子殿、初めまして。私は御子殿と同じ人間のラッセン=ジョイントです。」


ニヤニヤと笑い、でっぷりとした体を近づけてくるこの人間の王様に、生理的に無理!気持ち悪い!!という感想しか出てこず、反射的に立ち上がった。


「近いです。離れてください。」


「おやおや、神子殿は恥ずかしがりやなんですね」


は?マジでキモい……日本にもたまにいる勘違い野郎みたいだ…。


「人国の王よ。神子様に無礼はなりませんぞ。真向かいの席に移動するのじゃ。」


威厳たっぷりのお爺さん虎獣人の王様が人間の王に言ってくれる。



「ふん。そんな席、獣臭くてかなわんわ。人間同士同じ席に座るほうが、神子殿も安心されるであろう」


人間の王の言葉に皆ムッとした顔つきになる。


ないわー。
コイツ見た目だけじゃなく、中身もないわー。
獣人最高!モフモフ最高じゃないか!


「ならば、そこに立ってなさい。私の隣に座る事は許可しません。今すぐ離れなさい。」


私はドアの前を指差し、人間の王に命令した。


人間の王は最初ポカンとした顔をしたが、自分が何を言われたのか理解すると顔を真っ赤にした。



「神子殿。私は人間の国の王である。そのような無礼は許されませんぞ!!」


「私は神から遣わされた神子です。神が仰っていたでしょう?私の言葉は神の言葉と思えと。貴方は神よりも立場が上だと仰るの?なら…貴方の国に私の…いえ、神の祝福も加護も必要ありませんね?」



「えっ…いや………その……」


真っ赤にしていた顔を今度は真っ青にしワタワタする人間の王を睨みつける。


「獣人の方々を差別するようなら次は許しません。大人しく向かいの席に座るか、部屋を出ていくかしてください。」


私が睨みつけたまま言うと、すごすごと向かいの席に向かった。


そのやり取りが終わるのを見計らって、メイドさんが人数分のお茶をテーブルに並べお茶菓子も置いてくれる。


お礼を言うと、猫っぽい耳と尻尾をピンと立て、真っ赤な顔でペコペコ頭を下げて逃げていった。


う~ん、可愛い!!

ちょっと癒やされた!


ソファに座る王様達の後ろに立っている人達は多分王太子だとか宰相なのだろう。

さっきのやり取りで皆が緊張しているのがわかる。


…あれ?
レイオンがいない…


後ろを振り向くと私の左斜め後ろに立って控えていた。



「…レイオン。隣に座って。」


ポンポンとソファを叩くと、レイオンは驚いた顔をする。


「…ですが………」


あぁ、さっきのやり取りのせいか。


「神からレイオンよろしくって言われたよね?貴方がそのレイオンでしょ?
レイオンは一番初めに私が裸足だと気づいて声をかけてくれた。
ちゃんと私の事見てくれて気を使ってくれてるの分かるから。
隣に居てくれたらちょっと安心なんだけど…だめ?」



「いえ!……では失礼します」



尻尾をフリフリしながら隣に腰掛けてくれたレイオンに満足げな笑みを向けると、彼も微笑んでくれた。



さぁて…あの馬鹿神は本当に説明不足なお願いをしてくれたもんだ。


私がここでしなければいけない事。

まずはそこを話さないといけないよね。

ただなぁ…私極度の面倒くさがりなんだよね。

あと嫌いな事が多すぎて、この異世界に来てイライラボルテージがすでに30%は溜まっちゃった。


チラッとレイオンを見る


レイオンも私を見ていて、どうしたの?って感じで首をかしげた。



うん、イライラマックスになったら、モフらせてもらおう。
私の癒やし。

もふもふパラダイス!




「では初めに、皆さんにお伝えしておくことがあるので口を挟まず聞いてください。」


さぁ、始めよう。

天国となるか地獄となるか。


それは君たち次第だよ。




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