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SIDE セイ
しおりを挟む通されたのは応接室
上座に座っている白髪の男が吾妻組の組長、吾妻義経
穂高さんとは全く似てなくて咲良さんとは目元が少し似ている
関西吾妻会は前組長が西日本をその手に牛耳る際、付けた名前だ
自分の力を他に見せつける為に
西の吾妻会、東の麒麟会
裏の世界ではこう呼ばれている
前組長は現在会長となり隠居生活を送っている
実はまだゴールドとして仕事をしていた時に依頼があり練習台としてではあるが現組長の素行調査などを行ったので組長については詳しかったりする
「龍洞会長、ようこそお越しくださいました。」
立ち上がり挨拶をする組長だが、席を移動するつもりは無いようだ
しかも、その横に先程の咲良が座っている
んでもって俺をメチャクチャ睨んでる
うっとーしーなー…………
「…親父。非常識な行動は慎め。咲良も早く出ていけ。」
穂高さんがそう言うと2人は目を瞬かせ何を言われてるか分からない様子だ
「あー…いいよいいよ。穂高、俺達はこちら側に座らせてもらうよ。」
静流はクスクス笑って俺の手を引く
ソファーの真ん中に座りその隣に俺その横に旬さん、反対側には兄ちゃん、その横に車椅子を止める
入り口に寅さんと鷹さん、俺達の背後に光一さんと穂高さんが立った
あれ?何故に穂高さんが背後に??
チラッと見上げると穂高さんと目が合いニヤリと笑われた
あー………もう始まってる感じ?
一難去ってまた一難なわけ??
俺の平穏の日々はどこ行った?
まぁ、つまらない毎日だったからそれも楽しいんだけどね
「お久しぶりですね組長。先に紹介します。彼は俺の婚約者の橘星、こちらがセイの兄で今度の総会で紹介しますが俺の右腕の一員となる橘晶。その横に居るのが晶の恋人の璃一です。」
兄ちゃんの恋人として紹介された璃一は目を見開き兄ちゃんを見上げる
兄ちゃんは多分極上の笑顔を見せているんだろう、璃一の顔が真っ赤になった
「……け…会長もお人が悪い…婚約者やなんて冗談…」
「冗談?まさか。セイは俺の婚約者ですよ。まだ各組に知らせてはいませんが、西日本の各組には明日の会合で周知する予定ですから。」
「そんな!じゃあ、うちの咲良は妾にでもする気なんですか!?」
顔を強張らせ怒鳴りだした
「咲良は全くもって俺には関係ないですよね?何です、妾って。俺にはセイしか必要ありませんよ?」
静流はクスクス笑っている
口元は笑ってるが目が笑っていない顔をこの部屋に入ってから崩さない
「咲良はずっと会長一筋やったんですよ!?顔もスタイルも良い、勉強もできるし商いの才もある!!会長を誰よりも支えれるんは咲良や!それに橘って言うと白虎会の橘でしょ?そんな所の息子が右腕で、もう一人息子が居たとは知らへんかったけど、ソイツが婚約者やなんて、麒麟会の名に傷がつきますわ!恥晒しもいいとこや!!」
組長の言葉に部屋の空気が一転、ピリピリし肌が痛く感じるほどの殺気があちらこちらから飛んでいる
「お前と話す事は無いようだな。」
静流が一睨みすると組長は顔を青くさせる
「ま……待ってください………」
「いちいちお前如きにセイや晶の素晴らしい所を聞かせる時間が勿体ない。」
静流はそれ以上喋る気がないのか、俺を抱き寄せ首筋に鼻を付け匂いを嗅いでいる
……静流って犬みたいだよな
そこも可愛いけど
「穂高、明日以降の予定を変更しましょう。」
「分かった。ホテルを用意するから今日から皆そちらへ泊まってもらえるか?」
「なら俺が取ってるホテルにすれば?俺等はJrスイートだから、スイートは空いてたぞ?」
穂高さんの言葉に兄ちゃんが提案する
「何でスイートにしなかったんだ?その方が広いだろ?」
「セイも璃一も広すぎると部屋が余って勿体ないってダメ出し食らった」
「だって、つかわないおへやはもったいないでしょ?みんなでとまるならスイートでもよかったけどね?」
「そうか。スイートの方には静流とセイ、護衛に光一と虎と鷹、の5人だから部屋は余るがお前達も移動するか?」
「しゅんにーは?いっしょにスイートとまらないの?」
旬さんは璃一の問いにチラッと光一さんを見る
「そうだな、光一と同じ部屋にすれば旬も落ち着いて寝れるか。」
穂高さんと兄ちゃんと璃一で話を進めていると
「勝手な事ばっかり言わんといて!!」
とキンキン声が部屋に響いた
「今日はしー君ここに泊まるやろ?!部屋だってもう用意してんねんで?皆麒麟会が来るからって朝から準備しとったのに、その気持ち蔑ろにする気なん?!」
確かに、普通ならとんだ我儘だ
「君さ、状況わかってて口挟んでる?いい加減常識の無さをひけらかすのはやめなよ。穂高さんが本当に可哀想だ。」
「は?」
「まず第一に、君達は何故そこに座ってるの?そこは上座で、本来なら静流が座る席だ。あ、上座ってわかる?一番偉い人が座る席の事だよ。
つまり、君達は麒麟会に対して自分達の方が格上だと言ったのと同等の行いをしたんだよ。
そして第二に。
会長自らが紹介した人物に対して暴言を吐いた。
しかも会長に恥晒しだと。
これはもう、宣戦布告だよねぇ?」
「ちがっ……!あれは橘組の者を右腕や婚約者にすると言った事に対してで!」
慌てて修正を図ろうとする組長に目をやる
「そして3つ目。静流が選んだ者を既にカタギになっているのにも関わらず貶し、現組長ではなくその息子達を実家が橘組だと言うだけで麒麟会に傷がつくとぬかす。
そんな組長が居るこの吾妻組で休むことなんてできないでしょう。
いつ寝首をかかれるか分かったもんじゃない。」
「そんな事するはずが無い!」
「どうでしょうね?貴方の息子でこの組の若頭がホテルを用意すると言ったのは可能性が0では無いからでしょう。
先程の数々の暴言に態度。どこを見て貴方を信じろと?
俺は確かに一般人ですか…………貴方の事よーく知ってるんですよ。もしかしたら貴方自身よりも…ね?
貴方の秘蔵っ子に殺される訳にはいかないのでこれ以上貴方方と関わりたくないんですよ。」
「セイ、秘蔵っ子って?」
後ろから穂高さんが尋ねてくる
「暗殺を専門とする女性を一人飼ってるんですよ。愛人の振りして別宅で囲ってますがね?」
俺がバラすと組長は顔を青くする
「お……お前……何者だ………」
恐怖の色を帯びた目で俺を見る
「俺?静流の婚約者ですよ。」
「ただの婚約者が俺しか知らない事を何故知っている!!」
バンッと机を叩き怒りを顕にする
「さぁ?貴方に教える必要はありません。」
「セーイ…もうソイツ構わなくて良いから俺を構ってくんない?ホテルも取れたみたいだし。」
静流に言われ旬さんを見ると頷かれた
「じゃあホテルに移動しようか?」
「うん、夕ご飯何食べようか?穂高も来るだろ?」
静流はもう組長にも咲良にも目を向けることは無い
「あぁ。飯なら璃一と約束してたたこ焼きとお好み焼きの店行くか?自分で焼ける店があるから。」
「いくー!!」
璃一は嬉しそうに手を上げる
「店に連絡入れときますね。」
どこの店の事なのか知っているらしい旬さんが電話をかけ始める
俺達は帰る準備を始めた
「…しー君!!」
咲良は泣きそうな顔で静流を見るが、静流はとても冷たい眼差しを咲良へ向ける
「あのさ、余りにしつこいと俺怒るよ?何度も言ったよね。咲良と結婚する気は無いって。好きでもない人間と結婚して何が楽しいの?
もしセイと出会っていなくても、咲良と結婚する事はなかったよ。俺にとって君はただ8歳のままの患者で、懐いてきたからペットみたいだなって相手してただけに過ぎ無い。」
「そん…な………でも……いつも……うちには優しかった……他の女には冷たくしてても…それって…うちはしー君の特別って事やろ…??」
「いや?別に優しくしたつもりはないよ?って言うか正直愛玩動物みたいだなって思って接してただけ。」
「静流、それじゃあまるで人間としてさえ見てなかったって言ってるようなもんだよ?」
わざと意地悪くそう言い笑うと静流はキョトンとした顔をする
「ん?そう言ってるんだよ??」
……俺の嫌味を肯定されてしまった
反応に困り帰り支度をしドア付近にいた皆を見ると目を逸らされた
いやいや!穂高さん関西人でしょ!ツッコんでよ!!
「酷い……うちはずっと好きやったのに………」
遂に泣き出した咲良を組長が慰める
「勝手に好きになっただけでしょ?勝手に理想を創り上げて、それを押し付けられても迷惑でしかないよ。どうでもいいから、何も思わなかっただけだ。
俺の気持ちを少しでも理解したなら二度と近寄らないでくれる?」
話しは終わりだとでも言うように、俺の腰に腕を回しドアへ誘導する
すぐに光一さんが背後に立ち両サイドを虎さんと鷹さんが守る
旬さんが両扉を開け先に兄ちゃん達が出ていく
「瀧本、予定変更」
穂高さんが瀧本さんに今後の予定を話しているのを見ながら俺達は部屋を出た
瀧本さんは穂高さんと話し終えるとどこかへ消えていった
「さぁ、まずは夕飯を食べに行こうか」
いつもの静流に戻り、璃一が大阪の歌を歌っているのを聞きながら俺達は吾妻組を後にした
因みに璃一が歌っていたのは…
♪大阪には美味いもんがいっぱいあるんやで~
たこ焼き 餃子 お好み焼き~ 豚まん!
である
知っている人は知っている
知らない人は『大阪うまいもんの歌』で検索してみてね☆
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