裏切りの蜜は甘く 【完結】

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SIDE セイ

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ふと目が覚めると隣に居た璃一が居なくなっている

「…あれ?」

璃一が寝ていたところを触ると既に冷たくなっている

ベッド脇に置いてた車椅子も無い

兄ちゃん帰ってきたのか…なら起こしてくれたら良かったのに……


璃一の診察をしようと部屋を出た




嘘………何で?


リビングのソファーには兄ちゃんも璃一も居なかった


居たのは何故か静流


「セイ……」


咄嗟にドアを閉めてしまう


何で??どうしてここに静流が居るの?


皆でご飯に行ったはず…



壁に掛かっている時計は13時30分を指している


コンコンーーーーー


ノックの音に体が跳ねる


『セイ…そのままで良いから聞いて欲しい。』


静流の悲しげな声がした


胸がギュッと掴まれた様に痛む


『先に謝らせて欲しい…セイを傷つけてごめん。何も説明してなくてごめん、不安にさせてごめん……一人にしてごめん……咲良が誰なのかも言わずに、彼女をかまってセイを嫌な気持ちにさせてごめん………。
咲良は穂高の一番下の妹なんだ。そして俺が初めて心臓移植した患者でもある。』



…初めての心臓移植………?


『俺が医師免許をとってしばらくした頃、穂高から連絡が来た。妹が重い心臓病で心臓移植しか手は残ってない、助けて欲しいと。
俺はすぐアメリカへ連れてこさせた。新しい心臓と共に…新しい心臓の持ち主は、吾妻組に膨大な借金をしていた人の子供だった。
一家心中を図ったが、両親は助かり子供は脳死判定を受けた。
吾妻組は借金をチャラにする代わりに、脳死した子供の心臓を提供させることにした。
咲良の心臓移植は成功し、俺は主治医として数ヶ月面倒を見た。
咲良は俺に懐き、日本に戻ってからも俺が穂高に会いに行けば今日の様に飛びついて来た。
俺にとって咲良の存在は言い方は悪いが、今も昔もまるで犬猫がご主人様に戯れてるみたいな感覚でしか無い。』


ホント言い方が悪い…でも…静流らしいとも思った


『旬に、まるで恋人同士みたいだと言われたが…俺にとっては動物を愛でてる様なものだったんだ。穂高もそれを知っているから、基本的に放置している。でも……セイから見れば説明を受けてようと受けてなかろうと、傍から見ればイチャついてる様に見える行動をとった俺を許せないだろう…。』



うん……許せないって言うか……事情を知って、静流にとっての咲良さんの位置を知ってもあの光景を再び見るのはキツイ……


イライラと胸の痛み、不安、咲良さんへの憎悪……そんなモノが波のように押し寄せてくる


『セイ……二度と今日みたいな事はしない。
俺の事信じれないかもしれない、もう嫌いになったのかもしれない………声も聞きたくない、顔も見たく無いのかもしれない………
でも……俺が欲しいのはセイだけなんだ………セイが二度と誰とも関わるなって言うならその通りにする。
会長職も降りるし、この目にはセイ以外映すことはしない……セイが望む事は何でもするから……離れて行かないで……俺の隣に居てくれ……頼むから………』


ちょっ………何でそうなるの!?

会長職降りるって……俺以外見ないって……そんなの望んで無いのに……


『ごめんね、セイ。人を好きになるのが初めてで、どうしたらセイの気持ちを取り戻す事ができるのか、どうしたら傷を癒せるのか、どうしたら不安を取り除けるのか分からないんだ……俺、どうしたら良い?教えてよ…セイ………』


あまりにも静流の声が弱々しくて、心配になった俺はついドアを開けてしまった


目の前にいる静流は顔色が真っ青を通り越して真っ白になっていて今にも倒れそうに見える


俺がドアを開けるとは思わなかったのか、驚いた顔をする静流の手を取り中へ引き込んだ




そのままベッドへ突き飛ばす


静流は簡単にベッドへ倒れ込んだ


「…セイ?」


「静流のバカ……俺凄く不安になった………あの子は誰なんだろう、何で静流はあの子を受け止めたままなんだろうって……そう思ったら、彼女の事何だか憎らしく感じて……俺の静流なのに何で抱きついてんの?って思って……静流は俺じゃなくても良かったのかなって……俺が他の人と同じ事しても静流は平気なんだって考えたら胸が痛くて…」


言ってて涙が出てくる 


「違う…違う!!セイが他の人と…?そんな事したら相手を八つ裂きにしてやる…!」


例え話なのに静流は居ない相手に殺気をだす


「俺だって…そうしたくなった……その前に吾妻組の組員に車に連れて行かれたけど。
静流は……本当に俺を愛してる…?」


頬を伝った涙が静流の頬へ落ちていく


「セイだけを愛してる……セイに嫌われたかもと思った時、胸が痛くて苦しくて…セイを傷つけた俺自身を殺したくなった…」


「静流……他の人に触れさせないで…他の人を愛でたりしないで……愛でたいなら俺か本当の動物にして」


「うん、約束する。」


殺気を引っ込め、真剣な表情で頷く静流


「それから、もっと静流の事教えて。知らなければ誤解するし、不安になる…もし今回の様な事があったら……俺、静流にやり返すから。」


「…やり返す?」


「静流がした事を俺もする。でも静流は相手を八つ裂きにしちゃ駄目」


そう言うと静流が悲しげな顔をする


「…それは……嫌だな………」


「そうならない為にも、俺を不安にさせないで。でも……俺もごめん。」


「何でセイが謝るの?悪いのは俺でしょ?」


「あの時、静流の腕をとって『この子誰?』って聞けば良かったのに俺は逃げた…」


「それは俺がセイを蔑ろにしたからだろ…ごめん…セイ、どんな時でも不安になったら教えて?前に言いたい事は言ってって伝えたけど、セイはすぐ周りの空気読んじゃって我慢しちゃうでしょ?
空気なんて読まなくて良いから、言いたい事言って。」


「いや…それは人としてどうかと……… 」


「大丈夫。俺の周りもそうしてくれた方が安心するから。だろ?そこで覗いてる晶と璃一。」


静流の言葉に顔を上げドアを見ると…兄ちゃんと璃一がこっそり覗いている


「!!」


いつからそこに!?


「静流にはバレてると思ったけど…セイ覗いて悪かった。ちゃんと仲直りするか心配で…それから、静流の言う通りセイはいつも空気読みすぎだから。それで言いたい事我慢されると俺達は心配するんだよ。」



「…じゃあ言いたい事言わせて貰う………いつから見てた!?せめて会話を盗み聞きするだけにしてよ!せっかく静流を押し倒して今からお仕置きしようと思ってたのに!」


「おぉ……素直に話すセイは脳内がダダ漏れになるのか」


「兄ちゃん!茶化さないで!言いたい事我慢しないってそういうことでしょう?俺は心ん中真っ黒だよ!頭ン中じゃ結構毒吐いてるんだからね!」


「聞きたい!!毒吐くセイの本心!!」


静流が目をキラキラさせる


「聞いて引いたりしたら、静流の事監禁するからね?静流は会長である前にもう俺のモノなんだから。」


「引いたりしないよ?なんなら今から監禁する?」


嬉しそうに笑う静流に毒気が抜かれる


「しない…それよりお腹すいた……」


「静流と何か食いにいけよ。俺と璃一は今食べてきた所だから。」


なるほど、だから居なかったのか。


「セイせんせい、なかなおりできた?」


「うん、心配かけてごめんね?」


「いいよ。セイせんせいがしーせんせいといるときのえがおが、ぼくいちばんすきなんだ!!だからぼくがんばったよ?」


「頑張った?」


「しーせんせいにおせっきょうしたの!!」


え…璃一が説教?

未だ押し倒したままの静流に視線を向ける


「うん。そしてアドバイスも貰ったんだ」


「…アドバイス?」


なんか嫌な予感がする…


「愛で窒息する程愛さないと逃げられちゃうよって。愛の鎖でしっかり繋いでおけばいいんだと。」


静流はニヤリと笑う


その笑みにゾクッとした何かが背中を駆けた


「璃一…そんな言葉どこから…?」


「かーくんがみせてくれた『ひるあいぞうげきじょうスペシャル』だよ!」


榊ー!!要らんもん璃一に見せんな!!


「うん……帰ったら榊さんシメル………」


そう心に誓ったのだった




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