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SIDE セイ
しおりを挟む珈琲を準備し来たばかりの5人の前に置いていく
やたら視線を感じ、珈琲を置き終わり顔を上げると視線がぶつかった
鷹のようなその瞳に一瞬にして思考が奪われた
綺麗………
どうしてか目が離せない
それだけじゃない
俺可笑しくなかったのかな?
この目に他の誰も映してほしくない
俺だけを映していて欲しいだなんて……
この人誰なんだろう
この人の事知りたい
この艷やかな髪に触れてみたい
名前を呼んでほしい
そう思った時「セイ」と呼ばれた
驚いて呼ばれた方へ顔を向けると、兄ちゃんが優しく「おいで」って言った
急に我に返り、恥ずかしくなって急いで兄ちゃんの元へ行き抱きつく
兄ちゃんも抱きしめ返してくれて、耳元で「静流に一目惚れしちゃった?」とからかう様に言われた
「何言って……そんな事……」
一目惚れ!?
俺が!?
そんなわけ…ない…はず………
あれ?静流って確か会長の事だよな?
え?会長を凝視しちゃった?
テンパりながらもそう言うとフフッと兄ちゃんが笑う
耳がくすぐったい
「アイツを独り占めしたいっておもったんじゃねーの?」
「…それは………」
反論し難い…確かにあの目に俺だけ映してほしいって思ったから……
いや、でも……俺会長の事何も知らない…それなのに惚れるなんて…
「俺も璃一の事は何も知らねぇけど惚れたぞ?これから知っていけば良いじゃねぇか」
「でも…会長だよ?俺なんて…」
そうだよ
あの会長だぞ?
容姿端麗で金も地位も持っていてIQ300のスーパーマン
誰からも憧れを抱かれ結婚したい男NO.1って何かの雑誌に書いてた
そんな皆から愛される様な人が俺なんて眼中に入れるわけない
「どうだろな?さぁて、そろそろ向こうも限界みたいだし先ずは自己紹介な。会長の話に気になる事があればちゃんと聞けよ?」
「…うん」
兄ちゃんに促され前を向いて座ると、皆ジッと俺達を見ていた
自己紹介をしたら会長に本当弟なのか疑われた
確かに俺達はあまり似ていない
俺は兄ちゃんみたいにカッコよくないし、背も高くない
それに…この目なんて全く似てない
ずっと目の事を言われてきたから、黒縁の今時誰もかけない伊達メガネをかけている
俺が一人考えに耽っていると話しは進んでいて、兄ちゃんが俺が組で受けていた扱いについて今は話していた
兄ちゃんの話しを聞く皆は眉間にシワを寄せている
確かに何故こんな仕打ちをされるのか、それなら引き取らなければ良かったのにって思った事は何度もあった
けど…俺には兄ちゃんが居た
「俺は……敵だらけのここで、兄だけが心の拠り所でした。兄がいつも側に居てくれて、常に守ってくれたから組長達のそんな仕打ちはへでもなかった。けど、俺が隠れて折檻されてる事を知った兄は俺と距離を置くようになりました。」
あの日の事を思い出すと今でも胸が痛い
俺の為だと分かっていても凄く寂しかった
けど、距離を置く事を決めた時の兄ちゃんの顔は今にも泣き出しそうな顔で…寂しいのは俺だけじゃないんだって思えたから耐えることができたんだ
けど今度は海外へ無理矢理行かされた
俺と兄ちゃんが離れ離れにされていた時の事を後から聞いたけど、兄ちゃんに凄く苦労かけたんだなって思った
荒れ狂っていた兄ちゃんをたった一言で変えた人
まさかそれが会長だったなんて…
兄ちゃんは俺から見ても凄く嬉しそうだ
でもどうして、会長ほどの人がここまで俺達を気にかけるんだろう?
組長達からの仕打ちなんて子供の頃からの事だ
それなのに、凄く後悔した顔で謝罪される
会長が謝ることじゃないのに…そんな顔して欲しくない
勿論麒麟会の会長として、橘組をこのままにしておく事はできないだろう
それなら直ぐに組自体を破門にして企業グループからも組長の退任を迫ればいい
今までちょろまかしていたお金は返済させたら良いだろう
なのに、俺達の計画に全面的に協力するって…どうして?
その疑問がつい口から出てしまった
会長は少し困ったような顔をしたけど、胸の内をあかしてくれた
会長の言葉に、周りの人達がニヤついている
俺も兄ちゃんもその一人だった
「…すっげぇ口説き文句だな」
ほんとにね
こんなに求められて嬉しくないはずがない
それに、何でも出来てしまうらしい会長が一人じゃ駄目なんだと、自分では手が回らない事を助けてほしいと素直に言えるこの人を俺は凄いと思った
人は自分の弱い所を隠すものだ
人の上に立つ人なら特に、付け入られないよう徹底する
なのに、会長は弱い所を隠さず信頼している彼等に背中を預けているんだ
俺も会長を微力ながらでも支えられたら……
そう思っていると、兄ちゃんがニヤニヤしながら会長をからかい出した
「欲しいならくれてやってもいいぜ?ただし、奴等を地獄に落としてからな?」
兄ちゃんの言葉に、俺と同じ考えだと嬉しくなる
「はい。俺達の長年の計画が遂行できるなら良いですよ。」
俺もそう言うと、会長はテンパり出したのか自虐ネタを口にする
会長ってもっと落ち着いてて、何でも卒なくこなして絶対王者的な感じなのかと思っていたけど、それだけではなく可愛い一面も持っている人なんだと知れた
つい兄ちゃんみたいにからかいたくなってしまった
実際からかってみると、凄く必死に否定された
それがまた子供っぽくて俺達は久々に大きな声で笑ったのだった
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