裏切りの蜜は甘く 【完結】

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麒麟会のお膝元

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「で?あれは誰だ?」


組長の部屋に集まったのは組長・姐・本部長・若頭・若頭補佐の2人


「わかりません」


若頭は組長の問いにそう答えた


「どういう意味だ?どこの誰かも分からずに連れてきたのか?」



組長の顔が険しくなる


「そうです。矢沢の屋敷の地下に監禁されていました。アイツに関しての書類は一切出て来てません。
矢沢個人が捕まえ、監禁していたものかと思われます」



「ほう、アイツを助けたのは調べる為か?」


組長がそう睨めば、若頭は口を閉ざした


「お前、アイツをどうする気だ?」

若頭の普段と違う態度に余計睨みはキツくなる


「親父、若。あの者の調査は私に任せてはいただけませんか?
親父と若は矢沢組の件の報告やら上納やらまだやることがあるでしょう。」


龍崎がそう口にすると、二人は頷いた


「では龍崎、調査を頼む。何者かわかるまでは監視下に置く。離れの部屋で治療し、外には数名監視を置いて部屋に入るのは限られた人間だけだ。
いいな?若頭。」


組長はチラリと若頭を見やる


「はい。佐山、お前がアイツの監視をしろ。何かあれば直ぐ組長と本部長、俺に報告しろ。」


若頭が自分の補佐である佐山にそう言うと、佐山は深く腰を折る


「御意」


狭山が離れに準備をしに部屋を出ていった



「それで?矢沢の屋敷にはどれだけあった?」


「現金が12億ほどと棒金が50本です。他はガラクタばかりで売っても殆ど金にはならないでしょう。」



もう一人の若頭補佐の要がアタッシュケースを机に並べていく


「矢沢の野郎、本当に舐めたマネしやがって…」


組長と姐、本部長がアタッシュケースの中身を確認していく


「凄い量ね。それで?会長にはいくら上納するの?」


姐が組長に訪ねる


「全部だ。今回の件、本来なら監督不行き届きでこちらも降格させられるはずだったのを、矢沢組を壊滅し、全てを上納する事で首が繋がってんだ。
少しでもハネたらこの組も終わるぞ。」


そう、本来ならご法度の薬に手を出した組は取り潰し
その上の組にも連帯責任があり、橘組は降格し組長は兼任している、麒麟会の舎弟頭から外されるはずだったのだ


麒麟会は会長を筆頭に、会長補佐が2名と青龍系第一団体相良組の組長が若頭を務め、朱雀系第一団体昴組の組長が本部長、玄武系第一団体竹中組の組長が若頭補佐を務めている


表では、麒麟会は龍洞財閥として、世界屈指の財閥として不動の位置にいる

若干26歳という若さで麒麟会を継いだ現会長にトップが変わってからは、右に出る者はいない独走状態をかれこれ7年走り続けている


相良組も表では龍洞財閥の顧問弁護士として、国際弁護や企業弁護など、表裏一体となって会長を支えている


昴組は表ではITコンサルタント企業としてその名を知らぬ者はいない程の会社を経営している
システムエンジニアからプログラマー、コンサルタント、ITを学ぶ為の学校など多岐に渡る


竹中組はゼネコンの大手だ
それだけでなく、家具のデザインや生産、販売、不動産などこちらも多岐に渡る


橘組は証券会社や代理店業、スーパーやドラッグストアなど色々と地域密着型の事業を行っている

龍洞財閥の傘下である相良弁護士事務所、SUBARU ITSP Enterprise、竹中カンパニー、橘総合株式会社の組員はその会社に属している為、世間一般では極道だとは誰も思っていない

その会社に属しているのは第一団体のみで、他の従業員は一般人である。

麒麟会組員並びに第一団体組員の素性は一切公表されて居らず、警察もマークしない


それには理由があった


今から13年前、世間を騒がした大事件


多くの大物政治家、自衛隊幹部、警視総監や検察庁長官等の不正や犯罪がインターネット上に証拠と一緒に曝されてしまったのだ


政治や秩序を司る職のトップのスキャンダルや犯罪に日本は大いに揺れ、国民の信頼は地に落ちデモや犯罪が横行する事になった


そんな国民を沈めたのが、当時の龍洞財閥の会長だったのだ
日本のトップ達を総入れ替えし、議員達の膨大な給料は大幅にカットされ金と権力の為に議員になった者を排除した
その為芋づる式で癒着のあった者達も辞職に追い込まれていった

便宜を図ってもらっていた会社はことごとく潰れたが、龍洞財閥が新たに立ち上げた会社に社員やアルバイト達は吸収され、貧困層には自立支援と共に半年間だけ国から生活援助を受けられるようにした


少子化問題の裏で、貧困層の増加により日本は孤児が増え問題となっていたが、同性結婚を認める事で、子供の生まれない婦婦や夫夫が引き取る事ができるようにも手を打つと、その問題も解決していった


勿論マイノリティーに関して差別などはあったが、マイノリティーを抱える者だけが学んだり、就職できる環境を作ることにより、マイノリティーを持つ者が大多数居る事を世間に知らしめると共にマイノリティーを持つ者の人権を保護した

ある意味、龍洞財閥の絶対王政のようになったが、色々な改革により国民の支持を受けたのだった



裏と表から人々を掌握し、内乱とも言えるこの事態を鎮静化させた


この時から日本は色々な面で変わる事となった


水面下では、龍洞財閥の会長が麒麟会の会長である事を国のトップに伝え、麒麟会と傘下の第一団体までは暴力団と認定しない事、自分達の邪魔をしない事を約束させた上で事件の鎮静化を行っていたのだった


この時から、この表と裏の世界では龍洞財閥、麒麟会に楯突く者は居なくなったのだった








それから程なくしてセイが佐山に連れられ状況の報告に来た

セイが渡したICチップを直ぐに調べる必要があったが、ここには壊れている可能性のあるチップを復元する技術を持つ者はいない


一同また頭を悩ませるのだった






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