上 下
25 / 26

24

しおりを挟む

叶さんの楽屋に戻ると、頼さんが僕の荷物を大部屋の楽屋から移動させてくれていた

「お帰り。」

志乃さんが水の入ったペットボトルを渡してくれる

有難くそれを受け取り口をつけた

「もうそろそろカメラくるぞ。……彼方、髪乾かさないと風邪ひくぞ?」

頼さんは子供を見るような目で僕を見る

「時間なかったんですもん」

「彼方、こっち来い」

ソファーに座る叶さんに呼ばれ行くと、片手にドライヤーを持っている

家ではよく、ドライヤーをかけるのを面倒くさがる僕の髪を叶さんが乾かしてくれる

つい普段通り、叶さんの足の間に座り背中を預ける


ブオォォォォと暖かい風が流れ始め、優しい手つきで髪をすかれて気持ちがいい

「失礼しまーす!カメラ入りまーす!!」

後ろから大きな声がして振り返ろうとしたけど、まだ乾かし中の為叶さんに頭を抑えられ振り替えれなかった

叶さんは振り返ったのか「お疲れ様です」と返事をしている

「はい、次は皆さんお待ちかねの叶さんと相田さんにインタビューです!が、現在ドライヤー中だったんですね」

「あぁ、もうすぐ終わりますよ」

「わかりました!にしても、本当に仲良いですね」

「ふふふっ、ありがとうございます。」

「いつも乾かしてあげてるんですか?」

「いつもって訳じゃないですけど、家に居る時は大抵ですね。彼方って結構面倒くさがりなんで、風邪ひかないようについお世話しちゃうんですよ。」

頭の上で会話が繰り広げられている


ドライヤーが止まり、櫛で髪をとかれて終了した

「叶さんありがと」

頭を反らしお礼を言うと叶さんは優しい笑みをくれる

「どういたしまして。ほら、彼方も見てくれてる人に挨拶」

「ん。皆さんこんばんは~、相田でーす。」

体勢はそのままに軽く手を振る

「んー…彼方は既に眠くなってるね。」

「え?そうなんですか?」

「こんなゆるゆるな感じの時は大抵眠い時です。」

「大丈夫だよー?ちゃんと起きてる!」

若干ふわふわしてるだけ

「まぁ、初日でしたしね。明日からマチソワが続いて、25日はマチネの後は映画の方のお仕事でしたよね?」

「はい、25日はソワレがないので私達2人は映画の舞台挨拶へ行きます。」

叶さんに持たれたままの僕は、大きな胸に耳をペタリとつけてその会話を聞いていた

体の中で響く叶さんの声がいつもより低く聞こえて心地よい

「なかなかハードスケジュールですね」

「そうですねー、でも他のみんなも結構なハードスケジュールなので、お互い怪我だけは気をつけようっていつも話してますね。」

どんどん瞼が落ちてくる

ダメダメ…今はまだインタビュー中……

必死に目を開けようとするけど思うようにいかない


「……あれ?相田さん寝ちゃいました?」

カメラマンさんの戸惑った声が聞こえる

「ん?あらら……今日は相当緊張してましたから、終わってホッとしたんでしょうね」

クスクス笑う叶さんの声が耳に響いて気持ちがいい

「いやぁ~、貴重な映像、ご馳走様です」

「なんですかそれ」

2人して笑ってる

ちゃんと聞こえてるよ?

聞こえてるけど目が開かないだけ……




次に気づいた時には見知った天井が見えた

……マジであのまま寝ちゃったんだ……最悪だ……やらかした……

横を見ると、叶さんはまだ眠っている

その寝顔をじっと見つめる

切れ長の目は堀が深く瞑っていてもまつ毛が長く、きれいな肌に影を落としている

鼻筋も通っている高い鼻

薄い形のいい唇


……そういえば、映画のラストシーン

台本には【華月】が【咲夜】にキスをし、抱き抱えてその場を退場としか書かれていなかった

僕(【咲夜】)はあの時本当に意識朦朧としてたから知らなかったけど、この唇とキスしたんだ

僕にとってはファーストキス……その相手が叶さん……

ドクンッと心臓が大きく跳ねる

うわぁ……マジか……叶さんとキス……してたんだ……

撮影中、頬や額にキスされる事はあったけど……唇にも……


あの場面を思い出して顔が一気に熱くなる

ヤバい…いつも通りできるかな……

チラッともう一度叶さんの顔を見る

ドキドキドキドキ……心臓が煩い……ダメだ…兎に角落ち着こう



叶さんを起こさないよう、ゆっくりとベットから出た


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...