ただのADだった僕が俳優になった話

プロローグ

某テレビ局のスタジオ

ここでは様々な人が働いている

業者さんやスタッフは勿論、キャスターや俳優、アイドルに芸人さん

ここで働いていると、『平等』なんて言葉はこの世に存在しないって嫌でも理解させられる


「何やってんだ！このタコ！！」


こんな暴言が四六時中飛び交ってるのだ

新人ADなんてストレス発散の為のサウンドバックにしか過ぎないと思う

僕の同期も何人も既に辞めていった

芸能人に会えるからとADになった奴もいたが、裏の顔とやらを見てショックを受けていた


僕は派遣アルバイトでADをしている

だから、このテレビ局の社員でもないし直接雇用のアルバイトでもないから時給は良いけど扱いは最下層である


でもどれだけ暴言を吐かれても、理不尽な扱いを受けても、僕はこの仕事を辞める事はしない

何故なら僕にはお金が必要だからだ


僕の人生は中学を卒業するまでは凄く普通だった


けど、両親が交通事故で死に祖母がショックのあまり食事が喉を通らなくなって、色々な病気を併発し結局去年死んでしまった

両親が死んでから4年、あんな状態だったのに4年生き続けたのは大分頑張った方だと思う

祖父は痴呆症の為施設に入っている

もめにもめたが、ある親戚が祖母の遺産を全て受け取る代わりに祖父の面倒を見るというので、その人達に任せその後は一切連絡をとっていない


僕には兄弟もいないし、親もいない、頼れる家族なんてもうこの世にはいない

だから、自分が困らない様にお金を貯めて老後に備えようと思っているのだ

昔から友人にはジジくさいとか完璧主義者とか言われていたが、僕はただ石橋を何度も叩いて渡るタイプなだけだと思っている


両親の生命保険で大学に進み、あと2年で卒業だ

就職先はまだ見つかってない

景気が回復傾向にあるとニュースでは言ってるけど、実際はそんなこと無いと思う

景気が回復してるなら、僕の就職先は既に決まってるはずだ

大学内でもまだ皆就活に勤しんでいる

4年生なんて、顔色悪く求人とにらめっこしている


僕の人生はどうなっていくのか

ただなる様になっていくのだろう…