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「落ち着いてください、アルキス伯爵。冷静にならないと建設的なお話ができませんわ」
「これが落ち着いていられるか!ミリアーヌが罪人?彼女にはなんの罪もないはずだ!」
「いいえ、ありますわ。王族から盗みを働いたという罪が」
「王族から盗み…?」
カイルにしてみれば寝耳に水、まったく知らないことだ。
「ええ、王族とは私。彼女は私からたくさんの物を盗んでいきましたの」
「なん、だと?」
「彼女がよく身に着けていた黒い宝石のネックレスありましたでしょう?あれはヤルシュ王国でしか採れない貴重な宝石です、母が嫁ぐ際に持ってきた物です」
「…あ」
覚えていた、ミリアーヌの見事な黒髪と同じ黒い宝石。すごく似合っていた。
「アルキス伯爵は、とても良く似合っている、としか思っていなかったでしょう?あれがどこで採れるのか、どこで買ったのか?なんて疑問を抱きもしない、ただ彼女に似合っているかどうかしか考えていなかった」
「それは…」
あまりにも図星なのでカイルには反論のしようがない。
「母の形見は全て彼女達に奪われました、あぁ、継母なんて、贅沢だ!と言って奪っていきましたわ。その中にあの黒い宝石もありましたわ。気づいたらネックレスになっていましたわね」
カイルはもう何も言えなかった。自分が信じていた世界が崩れ去ろうとしている予感が押し寄せていた。
「そうそう、私が異母妹をいじめているという噂もありましたわね、まったく、誰がそんなことを言い出したのか…、しかもみんな信じてしまって。アルキス伯爵、あなたも信じたでしょう?」
そうだ、カイルはその噂を聞いて…。
「ご丁寧に苦言を呈しに来ましたわね?」
それは仕方なかった、婚約者のミリアーヌから聞いたから…、ということは?あることに気づいたカイルは恐る恐るレオノーラに視線を向ける。
「あら、気づかれました??」
軽く肩を竦め、いつからこちらを見ていたのか、レオノーラの口調が軽くなった。
「彼女が嘘をついていたの」
「そんな…、どうして?」
カイルにはもう怒鳴る気力もない。
「さあ?私が聞きたいわ」
ミリアーヌが嘘をつく理由なんてカイルでも思いつかない。
「母が亡くなってから良いことなんてなかった、だから王太子妃になればカージリアンから逃れられて少しは良い生活が出来ると希望を持っていたのですが、ね」
目線を下に向け、レオノーラはポツリと呟いた。
「幽閉されても人間らしい生活が出来れば良かった、でもね?カビたパンに薄い塩味しかしない野菜スープ、それを一日一食よ?食べられるだけましだとでも?あなた方は戦争で勝利するたびにパーティーでしたわね?あの女は私から盗んだ宝石を着けてそれはそれは楽しんだのでしょうね?」
レオノーラが言うあの女とはミリアーヌのことなのだろうか、カイルに聞き返す勇気はない。
「私が幽閉されたのはヤルシュ王国と連絡を取っているからだと、いわゆるスパイと疑われていたからだとか。私、ヤルシュ王国に行ったことないんですの、従兄弟とも会ったことありませんし、どうやって連絡をとるのか、不思議ですわね?」
「…え?」
「それだけではないというのは分かっております、なんせ私はヤルシュ王国の血を引いておりますから、いざとなったら人質となったでしょう。生かしておけば使い道はある、そうでしょう?」
「これが落ち着いていられるか!ミリアーヌが罪人?彼女にはなんの罪もないはずだ!」
「いいえ、ありますわ。王族から盗みを働いたという罪が」
「王族から盗み…?」
カイルにしてみれば寝耳に水、まったく知らないことだ。
「ええ、王族とは私。彼女は私からたくさんの物を盗んでいきましたの」
「なん、だと?」
「彼女がよく身に着けていた黒い宝石のネックレスありましたでしょう?あれはヤルシュ王国でしか採れない貴重な宝石です、母が嫁ぐ際に持ってきた物です」
「…あ」
覚えていた、ミリアーヌの見事な黒髪と同じ黒い宝石。すごく似合っていた。
「アルキス伯爵は、とても良く似合っている、としか思っていなかったでしょう?あれがどこで採れるのか、どこで買ったのか?なんて疑問を抱きもしない、ただ彼女に似合っているかどうかしか考えていなかった」
「それは…」
あまりにも図星なのでカイルには反論のしようがない。
「母の形見は全て彼女達に奪われました、あぁ、継母なんて、贅沢だ!と言って奪っていきましたわ。その中にあの黒い宝石もありましたわ。気づいたらネックレスになっていましたわね」
カイルはもう何も言えなかった。自分が信じていた世界が崩れ去ろうとしている予感が押し寄せていた。
「そうそう、私が異母妹をいじめているという噂もありましたわね、まったく、誰がそんなことを言い出したのか…、しかもみんな信じてしまって。アルキス伯爵、あなたも信じたでしょう?」
そうだ、カイルはその噂を聞いて…。
「ご丁寧に苦言を呈しに来ましたわね?」
それは仕方なかった、婚約者のミリアーヌから聞いたから…、ということは?あることに気づいたカイルは恐る恐るレオノーラに視線を向ける。
「あら、気づかれました??」
軽く肩を竦め、いつからこちらを見ていたのか、レオノーラの口調が軽くなった。
「彼女が嘘をついていたの」
「そんな…、どうして?」
カイルにはもう怒鳴る気力もない。
「さあ?私が聞きたいわ」
ミリアーヌが嘘をつく理由なんてカイルでも思いつかない。
「母が亡くなってから良いことなんてなかった、だから王太子妃になればカージリアンから逃れられて少しは良い生活が出来ると希望を持っていたのですが、ね」
目線を下に向け、レオノーラはポツリと呟いた。
「幽閉されても人間らしい生活が出来れば良かった、でもね?カビたパンに薄い塩味しかしない野菜スープ、それを一日一食よ?食べられるだけましだとでも?あなた方は戦争で勝利するたびにパーティーでしたわね?あの女は私から盗んだ宝石を着けてそれはそれは楽しんだのでしょうね?」
レオノーラが言うあの女とはミリアーヌのことなのだろうか、カイルに聞き返す勇気はない。
「私が幽閉されたのはヤルシュ王国と連絡を取っているからだと、いわゆるスパイと疑われていたからだとか。私、ヤルシュ王国に行ったことないんですの、従兄弟とも会ったことありませんし、どうやって連絡をとるのか、不思議ですわね?」
「…え?」
「それだけではないというのは分かっております、なんせ私はヤルシュ王国の血を引いておりますから、いざとなったら人質となったでしょう。生かしておけば使い道はある、そうでしょう?」
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