私は最後まで君に嘘をつく

井藤 美樹

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今回、嘘は吐いてません

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 いつもの夜の時間とは別に、昼間に蓮君がラインを送ってきた。

 これ……亮君と立花ちゃんが家に遊びに来るまでの間を狙ってるわね。この時間なら、邪魔されないからかな。ここ最近は、直ぐに返信できなくて、あんまり会話できなかったしね。

 不機嫌にはなるんだけど、文句や不満は口にしないんだよね……そういう所が、ほんと、大好きなんだよ。包容力があって。

 大好きな気持ちとは別に、蓮君に対して居た堪れない想いと罪悪感があるのだけど、それを抜きしにしても、嬉しくて胸が一杯になる。スマホ越しだけど、君の体温と呼吸を感じるのは私だけかな。カップルシートのこと思い出しちゃう。あ~もう、恥ずかしいな!!

〈長い事会えなくて悪いな。やっと、起きれるようになった。あと二、三日で熱も下がってくると思う〉

 珍しく饒舌じょうぜつで長文だね。

〈よかった~。季節の変わり目の風邪は厄介だね。インフルじゃなくてよかったね。ゆっくり休んで。あっ、起きれるようになったのなら、お見舞い行けるかな? なんだったら、見舞いの品だけ渡して帰ってもいいし〉

 再チャレンジしてみた。すると、速攻に返事が返ってきた。

〈来なくていい〉

 酷いな~

〈え~大丈夫だよ〉

〈来るな〉

 不満そうな柴犬のスタンプをタップしようとしたら、それより先に返事がきた。今度は三文字、命令口調。

〈絶対、来るな。わかったな〉

 蓮君の中で、私は病弱認定されてるからね、私の身体を気遣って、そう言ってくれてるのだとわかっていても、なんか面白くないわね。っていうか、かなりムカつく。

〈来るんじゃねーぞ〉

〈絶対、来るな〉

 返事を返さない私に、蓮君はさらに追い打ちを掛けてくる。私がねてるくらい、蓮君はわかっているよね。面白くないのもわかってるよね、なのに、何回も同じことをラインしてくるなんて、酷っ。

〈……わかった。私いかない〉

 そう送ったあと、私は〈またね〉のスタンプを送り、一方的にラインを終わらせた。

 なんとか、起きれるくらいには、蓮君の体調戻ったみたいでよかったよ。まだ少し微熱があるって言ってたけど……結構、微熱がしんどいんだよね。身体が高熱の時よりダルく感じて。

 取り敢えず、コンビニで差し入れ買ってこようかな。追加で買いたいのあったし。新作のデザート食べたいし。

 私は嘘は言ってないよ。

 私は悪戯を思い付いた子供のように、ウキウキ気分でコンビニに向かった。




「え~俺が持って行くの」

 あのラインから数時間後、すっごく嫌そうな亮君の声。私服姿も可愛いね。

「だって、私が持って行ったら怒られるから。さすがに、中学生の立花ちゃんには頼めないし、亮君しかいないのよ。お願い!!」

 手を合わせてお願いしてみる。

「…………はぁ~~わかった。ウワッ!!」

 めちゃくちゃ盛大な溜め息を吐かれながら、超渋々引き受けてくれたよ。ほんと、優しいな。抱きついちゃうほど嬉しいよ。

「悲鳴上げるなんて、お姉さん傷付くな~」

 色が白いから、耳まで真っ赤。あたふたとしてるけど、強引に離そうとしないんだから、将来、すっごくイイ男に成長するわね。立花ちゃんは美少女だし、二人とも超モテそう。

 その姿も見てみたかったな……

 生きてるって……常に望みを胸に抱いてるんだって、私はこの時知ったの。この奇跡の時間で、私は本当に色々なことを勉強したよ。でもそれは、ほんのほんの一部なんだよね。次の人生は、もっと色んなこと勉強したいな。そう思わせてくれて、ほんと、神様に感謝の気持ちで一杯だよ。



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