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君からのライン
しおりを挟む今日も、両親は帰ってこない。電気が付いているのは、私の部屋だけ。もう慣れた。
そんな中、私はまたスマホとにらめっこをしている。頭に浮かぶのは、最後に見た蓮君の顔。
あんな表情、させたくなかったな……
「…………ほんと、どうしたらいいの」
ラインを送った方がいいってことはわかってはいるけど、なんて送ればいいのかな。
悩んでいると、珍しくその日の夜に蓮君からラインがきた。
〈大丈夫か?〉
あいかわらず、素っ気なくて短い。でも、すごく蓮君らしくて温かい。ほんとは、嬉しいの。でも、あんな別れ方をしたから超気まずい。それでも、既読無視はできなくて、当たり障りのない返答をする。
〈大丈夫。今日はごめんね〉
〈なら、いい〉
直ぐに返事がきた。
予想してなかったよ、どうしよう!? 蓮君見てる。なんて続けたらいいの? 素直に、会いたいって書いてもいいかな? 引かない?
『会いたいと書かないのですか?』
スマホを握り締め苦悶していると、耳元でラキさんの声がした。思わず、スマホを落としそうになったよ。
「ラキさん!! 急に話しかけないで!! びっくりしたじゃない!!」
反射的に振り返り、ラキさんを怒鳴る。
『それは失礼しました。それで、会いたいと打たないのですか?』
「ラキさんも傍にいたからわかってるでしょ!! あんな別れ方をしたんだよ、素直に会いたいなんて打てないよ……」
『つまり、彼に綻びを突かれたくないということですか?』
ほんと、ラキさんって、嫌になるほどズバリと確信を突いてくるよね。
「……そうだよ。突かれたら、ボロが出そうで怖いんだよ」
だから、会いたいって打てない。
悲しくないのに、涙がボロボロとこぼれ落ちてきた。まるで、色々な感情が溢れ出てきたみたい。恥ずかしいな……
『三奈様、嘘を吐くっていうことは、そういうことなのですよ』
親が子供を諭すように、ラキさんは言う。
「ラキさん……」
『嘘を吐くということは、相手を騙すこと。いつかは、必ずバレます。バレそうになった時、人が取る行動は二つ。素直に相手に告げ謝るか、告げた後のことを恐れて、さらに重ねて嘘を吐くか……三奈様は、どちらの道を選択なさいますか?』
「そんなの決まってる!! 嘘を吐き通すしかないよ……もう、立ち止まれない。それに、なんて説明したらいいかわからないよ」
ラキさんが突き付けた現実。
選択肢が二つあるようで、始めから選択肢は一つしかなかった。
私の秘密は、絶対知られてはいけないものだから。
限られた時間、私が蓮君と一緒にいたいと願った瞬間に、他の道は全部消えてしまったの。脇道もない、ガードレールもない、落ちれば即アウトの険しい道。このまま立ち止まることもできる。でもそれは、したくない。それに、余計に突っ込まれる可能性が大だしね、悪手だよ。
なら、進むしかない。
自分が選んだ道――
『ならば、強くなるしかありません。これ以上、綻びを大きくしないように』
結構、無茶苦茶なことを言うね。
「……私にできるのかな?」
『やるしかないと思いますよ』
ほんと、ラキさんは厳しいね。でも、その通りだ。
「そうだね、やるしかないよね」
私は小さく呟くと、蓮君にラインを送った。
〈明日、一日家で大人しくしとくね。元気になったら、また一緒に遊んでくれますか?〉
〈わかった〉
送った直後に、ピコンとスマホがなった。蓮君からの短い返事。
「よかったよ~~」
私は安堵し、肩の力がどっと抜けた。
『彼は、三奈様からのラインを待っていたようですね』
だとしたら、嬉しいな。えっ!? ラキさん、笑った……?
見間違えたかもと思うほどの一瞬、ラキさんの口角が上がったように見えた。
「……だとしてら、嬉しいな」
私も小さく微笑んだ。
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