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第六章 田舎娘なのに王城に招かれました
我儘王女
しおりを挟む目の前に並ぶのは、見たことがないほどの豪華な食事。
王族ってスゴっ!! いつも、こんな食事食べてるんだ……目が点になったよ。フルコースっていうのもが、この世にあるのも今日知った。
これが学園で出されたものなら、普通に楽しめたんだけどね……テーブルに座る面々を見たら全然楽しめない。っていうか、今すっごく気疲れしてベッドにダイブしたい。
あのあと、本当に大変だったんだから。私もセシリアもお風呂に放り込まれて何着もドレス着せられて、完全に着せ替え人形状態。
セシリアは早々に服が決まって一人くつろいでいた。っていうか、なんでセシリアは男物なの? そりゃあ似合うけど。絵本から出てきた王子様みたいだけど。なんか、不公平じゃない!?
そうしているうちに、座らされて髪までセットされたし。知らない間に、人数増えていた。その人を王女殿下がお母様と呼んでたから、王妃殿下だったんだよね。今、私に向かって小さく手を振ってるし。それ答えてもいいのかな?
悩んでいるうちに国王陛下が言った。
「さぁ、さぁ、マナーなんて気にせずに食事を楽しんでほしい」
「……あ、ありがとうございます。食事に招いていただき、とても嬉しいです」
お礼を言うタイミングって、これであってたよね。食事が始まる前でいいんだよね……頭がグルグルしてきたよ。
「大丈夫、あってるから」
隣に座るセシリアが小さな声で耳打ちしてくれた。そして、セシリアも落ち着いた様子で国王陛下に感謝の言葉を述べた。
「そんなに硬くならなくていい。私がユーリア嬢とセシリア嬢を呼んだのは、エレーナの親としての気持ちからだ。私の娘を助けてくれて、心から感謝する。これからも、私の娘と仲良くしてほしい」
私が先に呼ばれた? 普通なら、セシリアが先だよね……もしかして、私が姫聖女だってことを知ってるの? 古竜様たちのことはまだ知らせてないって、教皇様は言ってたけど。
誰もが疑問を感じていない? スルーしている。あえて感じてない振りをしてるの? 戸惑っているうちにどんどん進んでいく。私もスルーしとこう。
「ありがとう、ユーリアちゃん」
王妃様、自然に私のことちゃん付けで呼んでるよ。まぁ私的には、嬢や様呼びよりは全然マシだから助かるけどね。
「いえ、私の方こそ、第一王女殿下様に支えられ助けられました。お礼を言われることではありません」
実際、そうだからね。王女殿下が平民で下級生である私の言葉に耳を傾け聞いてくれたから、混乱せずに乗り越えられた。
それに、そもそもオリエンテーションが無茶苦茶になったのは私のせいだから。理由は到底、ここでは言えないけど。その原因が、今、私の影の中にいるんだけどね。護衛として、世界の災厄と呼ばれているSSランクの魔物も一緒に。絶対、言えない……
「この娘が人を支えるとは……」
えっ!? 国王陛下泣き出したよ。そんなに感動することなの!? 驚いたけど、なぜか腹が立ってきた。
「ユーリア嬢が現れるまで、エレーナは我儘王女って言われてたからね。王宮での授業もすぐに抜け出すし、感情的だったからね」
王太子殿下が苦笑しながら教えてくれた。王女殿下は怒ってそっぽを向いてる。
その台詞に、私は首を傾げた。
「ユーリア嬢?」
私の反応に、王太子殿下は訝しげに名前を呼ぶ。
「第一王女殿下は気は強いですが、我儘ではありませんよ。もし我儘なら、平民の一下級生の話に耳を傾けたりはしません。宰相様と同じように、物事を公平に見て判断し、決して色眼鏡で見ることはしません。それに、悪いことをしたなら謝れる人です。あと……王宮の授業を抜け出すって言ってましたが、第一王女殿下は博識で聡明ですよ。レイティア様は第一王女殿下は本を読まないと言ってましたが、本当にそうでしょうか?」
話してるとすぐにわかるよ。すっごく勉強したんだって。レイティア様はわからなかったみたいだけど。
私の台詞に、その場にいる全員が王女殿下に視線を向けた。向けられた王女殿下は、顔を真っ赤にして、餌を待つ小魚のように口をパクパクしていた。私は皆の反応に、また首を傾げ続けた。
「第一王女殿下の知識は、本から得ただけではなく、自分で探求し身に付けたものだと思います。だから、いざという時に判断がくだせたのです。私は第一王女殿下は、とても真面目で努力家だと思います。確かに、自分が好きなものに過剰に反応してしまうことがありますがーー」
「そこまでにしなさい!! ユーリア!!」
まだまだ言い足りないのに、強引に王女殿下に止められたよ。そのまま腕を掴まれ、部屋を連れ出されてしまった。
廊下を抜けて中庭に出ると、ようやく、王女殿下は掴んでいた手を離してくれた。
「ユーリア!! どういうつもりで、あんなこと言ったのよ!?」
真っ赤な顔をして怒られた。
「だって……誤解されたままで悔しかったから」
少しふてくされながら私は答える。
「悔しいって、自分のことではないでしょ」
王女殿下は大きな溜め息を吐きながらが言った。
「家族に、レイティア様に誤解されたままって辛くはありませんか?」
私の台詞に王女殿下は泣きそうな顔をした。反論の言葉が返ってこない。だから、私は言葉を続ける。そこに、私たち以外の人がいることに気付かないで。
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