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第三章 学園生活の始まりです

天使様はとても美しい女の子でした

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「着いたよ。ここが、私とユーリアの部屋だよ」

 天使様、疲れたのかな。意味不明なことを言い出したよ。

「…………はぁ? 無理」

 完全に敬語を忘れちゃったわ。素が出ちゃったよ。

 セシリア様はとても悲しそうな、辛そうな顔をしている。私のせい……。友だちにそんな顔をさせて、胸が痛くなるよ。

「私と一緒は嫌? ごめん、ユーリアの気持ちを考えなくて勝手に決めてしまって。でも、我慢してくれないかな」

 セシリア様、論点がズレてるって。

「違うから!! セシリア様が嫌じゃなくて、根本的な問題があるでしょ!!」

「根本的な問題?」

 天使様は首を傾げても様になるわね!!

「まだ子供ですけど、さすがに、異性と一緒の部屋はちょっと……」

「異性? 私が? 私、性別女だけど」

 ……ん? 女? 誰が? セシリア様が?

「誰がです?」

「私が」

「セシリア様が女?」

「そう、生まれた時から女だよ」

 そう照れくさそうに笑う姿は、どこからどう見ても、可愛い美少年にしか見えない。もしくは天使様。少なくとも、女の子には見えないわ。

「ほ、ほんとに女ですか!?」

「そんなに、驚かれて念押しされると、結構傷付くものだね。でも、間違いなく女だから安心してほしい」

 そこまで言われたら、信じるしかないじゃない。

「ごめんなさい!! てっきり、男の子だと思ってました」

 土下座しそうな勢いで謝る。実際は土下座してないけど、一番頭を勢いよく下げたよ。だって、それほど酷いことを言ったから。悪気はなかったけど、傷付けることを言ってしまった。

「別に怒ってないから、頭を上げて。初対面の人は皆間違うから、気にしなくていいよ。……でも、セシリアって、女の名前だと思うけど」

 そうだよね。そこ、突っ込まれると思ってたよ。

「貴族の方々の中には、男の子に女の名前を付けることもあるのかなって……思ってました」

 正直にそう答えると、とても困った表情をしたセシリア様は苦笑する。

「……身体が弱い子供を、成人するまでの間、災から身を護るために異性として育てる慣習が、昔あったことは聞いたことがあるけど。私は健康体だよ」

 うん。どこからどう見ても健康体だね。

「間違えた私が言うのは違うって思いますが、セシリア様はとても美しいです。天使様です。なので、自分に自信を持ってください」

 励まし方なんてわかんないよ。昔から苦手だったし。そもそも、私が傷付けの。そんな私が励ますのはちょっと違うと思うけど、それでも、美しいことだけは知っていてほしかったの。どうしても、

「天使様って」

 キョトンとした顔をした後、セシリア様はおかしそうに笑い出した。

 なんにもおかしなこと言ってないのに。笑うツボあったかな? それとも、セシリア様の笑いのツボはかなり特殊なのかな?

「今まで、本当に失礼なことを言ってすみませんでした。こんな私ですが、これから先、ご指導ご鞭撻べんたつよろしくお願いします」

 再度、私は頭を下げた。

「私の方こそ、よろしく頼むよ。わからないことがあったら何でも言ってね」

 右手を出されたので、私は頭を上げるとその手を掴んだ。

 私のルームメート兼家庭教師の容姿は美少年で天使様。でも、本当はとても美しい女の子だった。



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