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一週間振りの登校です
しおりを挟むカイナル様による半監禁状態から開放されて、今日は一週間振りに学園に登校できるみたい。
別居もなし崩し的に解消されちゃったよ。まぁ、私がなにに怒っていたか気付いてくれたからね。今回はそれでいいかな。私もかなり無茶したし……それに、助けにきてくれたしね。
カイナル様たちが護ってくれた変わらない日常。なのに、変わらないこともあるようだ。
「……あの~リアお姉様、なぜ、まだ侍女の格好をしているのですか?」
危険は過ぎ去ったはずだけど、どうしてまだ一緒に馬車に乗ってるのかな? 襲われる危険性は少ないのに。
それにしても驚いたよ、リアがカイナル様のお姉様だったなんて。だから、カイナル様のことを馬鹿とか平気で言えてたんだね、納得。変装をしていないのに、侍女服を着てるから気付かなかったって……先入観ってやつかな。
「侍女の格好は私の趣味。可愛いでしょ。もし着たかったら、ユリシアの分もあるからね」
用意されてるんだ……ハートが飛びそうな感じで答えられても困るよ~キャラ変わりすぎじゃない? というか、趣味って。でも、コンディー公爵家の侍女服って、ほんと可愛いの。もしかして、リアお姉様がデザインしてるとか……ありそうよね。癖がありすぎる家族だけど、私は好きかな、こういうの。
「ありがとうございます」
ニコッと微笑むと、リアお姉様にギュッと抱き締められた。
「帰ったら、一緒に着ようね!! 私の妹、超可愛い!! 最高!! カイナルの奴腹が立つわ、なかなか紹介してくれないんだから!!」
プリプリと怒るリアお姉様。なんか可愛い。でも、騎士団の団長を務めるほど強いんだよね。因みに、兄二人も騎士団と魔法師団の団長なんだって。
カイナル様は英雄。あとは全員、騎士団長と魔法師団長、義お父様はすべての騎士団を束ねている将軍。義お母様も、出産するまでは魔法師団の団長をしていたらしい。国の防衛を担っているコンディー公爵家によく喧嘩売れたよね~普通の神経ならまず無理だわ。
「カイナル様のお兄様たちにも、まだ会ってないんです」
コンディー公爵家にきて七年経つのに、おかしいよね。カイナル様にそれとなく訊いたら、さり気なく話題そらされたよ。何度も、何度も。だから、本当に会わせたくないだって思った。結構ショックで悲しくなったよ。
「それはしかたないわ。あの二人、まだ番を見付けていないからね。私は同性だから、やっと許可がおりたのよ」
やっとって……七年だけど。
「番を見付けてないからですか?」
それだけの理由で? 意味がわからなくて、首を傾げる。
「そう!! 例え、血を分けた兄弟でも、番を持たない雄には会わせたくないのよ。本能的にね。だから、カイナルとユリシアの屋敷は本宅から独立してるでしょ」
確かにそうなんだよね。本宅からカイナル様の屋敷は通路で繋がってるけど、きて暫くは、通路があること自体知らなかったからね。扉を閉め鍵をかけていたから気付かなかったの。今は通れるようになってるけどね。
「ここ数年閉まっていた日は、お兄様たちが帰ってきてた日ですか?」
そんな話をしていたら、馬車が停まった。
「そうよ。外に出ないよう言われてたでしょ。それじゃあ、いってらっしゃい、ユリシア」
「いってきます、リアお姉様」
「心配しなくても大丈夫だからね」
にっこりと微笑みながらリアお姉様は言うと、帰っていった。
「確かに言われてたわね、外に出るなって……そうだったんだ……ふ~ん、なんかムカつく」
ぶつくさ文句を言いながら学園に登校したはいいけど、ラメール侯爵令嬢が退学した件で、また悪目立ちしたなって思っていた。だけど、意外にも普通だったことに驚いたよ。ヒソヒソ話もされない。
心配しなくても大丈夫って、こういうことだったのね。カイナル様と両殿下が根回しと火消しをしてくれたのかな……
護られてる幸せを感じながら午前中の授業を受け、昼休み。
私は一人で生徒会室にきていた。両殿下と一緒じゃないけど、もはや習慣になってるわね。ここで昼ご飯を食べて、生徒会の仕事を手伝うことが。でも、この日は少し違ったの。扉を閉めた途端、私は立ち尽くしていた。
結構、生徒会室で際どいことを話していて、生徒会長と副会長に困惑させていたけど、その気持ちがわかった気がする。今も固まってるし。
両殿下が私に頭を深々と下げていたからね。
まぁ、元王族とその娘がやらかしたことが、とんでもないことだったから、両殿下が頭を下げる気持ちはわかるけど、謝罪はカイナル様を通してされたし、慰謝料も支払われた。そもそも、臣下に下った人に対して頭を下げる必要ない。
「頭を上げてください。皆困ってますから。それに、臣下に下った者に対して、両殿下が謝罪する必要はありません」
「「しかし……」」
なかなか納得してくれない。お花畑二号の件が特に思うところがあるみたいね。だとしても、両殿下にはまったく関係ないのに。
「線を越えてしまったのは、元ラメール侯爵令嬢様自身ですよ。いくら両殿下でも、止めることはできません。ましてや、気付くことも。なので、あまり気にしないでください。それよりも、知りたいことがあるの」
「「知りたいこと?」」
またハモった。本当に仲がいいよね。
「はい。教えて欲しいのです、包み隠せずに。ユベラーヌ・コーマンのことを」
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