34 / 73
監禁場所に着きました
しおりを挟む私とリアが閉じ込められたのは、半地下の半牢屋みたいな所だった。
当然、床は凸凹した石でお尻が痛い。ずっと座っていたら、もうすぐ初夏だけど身体が冷えそう。窓にも鉄格子がはまっていて、ほんのわずかしか外の様子が見えない。辛うじて、入口がドアだったから半牢屋って思ったんだけど……
まぁとりあえず、俯いて、自分の手でも力を込めて握っていれば、少しは、恐怖を必死に我慢している健気な少女に見えるかな。それとなく、後ろから私の肩に手を回し、寄り添うリア。わかってるじゃない。
「絶対に騒ぐんじゃねーぞ!!」
男はそう吐き捨てると、ドアを乱暴に閉めた。そのまま見張りに付くみたい。階段を上る音がしなかったから。
「決まり文句だよね。それよりも、恋人にあげた屋敷に、普通、牢屋ある?」
人がいなくなったのを確認してから、小声でリア二話しかける。牢番が人族だったから、まぁ大丈夫かな。
「浮気していた恋人を折檻するための部屋ですね。普通の家庭にはありませんので、ご安心を。ここというより、先代ラメール侯爵が異常者だっただけです」
耳元でリアは答える。
「嫌々、それおかしいでしょ。自分は何人も恋人をつくっておいて、恋人は駄目なんて身勝手すぎるでしょ」
「まぁ先代ラメール侯爵は異常者ですから。なんでも、男と話した時点で浮気だと認定されたみたいです」
じゃあ、野菜買いにいったりして立ち話したら、浮気? ほんとに? ないわ~絶対にない。鳥肌が立ったよ。
「…………束縛系の極みだね。怖すぎるよ」
「ましてや、一度関係すると、恋人認定されていたそうですよ」
「全部屋敷が売れない理由がわかったわ。こんな、牢屋があったらね……」
売れたとしても、ラメール侯爵家の醜聞を晒すことになるよね。できないわ……
「特殊な趣味嗜好の方なら需要はあると思いますよ」
「でしょうね。想像したくはないわ……それよりも、お花畑たちがくるのは、やっぱり真夜中かな? 私なら、昼にくるけどね」
「どうして、昼だと思ったのですか?」
意外にも真剣な表情でリアが尋ねてきた。
「ここは王都、昼間に馬車が行き交うのは目立たないけど、陽が暮れたらは目立つと思って」
「さすが、カイナル様の番様です。アレは良い番を持てたのですね」
アレって、カイナル様ことだよね。たまに、リナってカイナル様をぞんざいに扱うけど大丈夫なの? お咎めも注意も受けていないみたいだし、もしかして、二人知り合いなの?
「リナって――」
尋ねようと口を開いた時だった。やけに乱暴な靴音と騒がしい声が聞こえた。
「きたようです」
そう思っていたら、きたのはお花畑の一人、子供の方だった。まぁこれで、誘拐、及び監禁罪犯人は確定したんだけどね。
お花畑はなにか勝ち誇ったように私を見下ろすと、声高らかに言い放った。
「罪人には牢屋がお似合いね。平民、私から運命の番であるカイナル様を禁術で奪った罪は重いわよ!!」
一瞬、目が点にになったよ。禁術って、妄想凄っ。そこまでいったら、マジでヤバいよね、色々と。
「はぁ!? 禁術!? なに言ってるの? とうとう、完全に脳内お花畑になってしまったの? 可哀想に」
思わず、素で返答しちゃった。憐れみの目で見ながらね。被っていた猫が一気にどっかいっちゃったよ。
「禁術じゃなかったら、あの凛々しくて、逞しくて、格好良くて、美しいカイナル様が、平凡な平民を選ぶはずないでしょ。でも、その禁術はもうすぐ解けるわ。もう、その準備もできているの。お母様が色々手を尽くしてくれてね。貴方のその澄ました顔も、もうすぐ苦痛で歪みでしょうね。楽しみでしかたないわ」
さらに自供してもらったわ。やっぱり、お花畑一号も率先して動いたようね。でも、まだこれじゃあ弱いよね。姿を見せていないもの。逃れられる可能性がある。なら、最後までこの茶番に付き合ってあげるわ。
「ありもしない、禁術をどう解くつもりなの? ほんと、頭大丈夫?」
徴発してやった。
「せいぜい、粋がってなさい!! 今晩で全てが終わるんだから!!」
そう吐き捨てると、お花畑二号は牢屋から出ていった。
その後、ゴロツキはリナを人質にして、自分で猿轡をするように命じる。そして、私に荷馬車に乗るよう指示した。私が乗ったのを確認すると、リナも猿轡をされ放り込まれる。その上に藁を大量に被せられた。
偽装工作ね。用意ができた? もしかして、王都の外に出るつもりなの? なにかしらの儀式をするのなら、王都内では不都合ってことか……
54
お気に入りに追加
397
あなたにおすすめの小説
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる