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監禁場所に着きました

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 私とリアが閉じ込められたのは、半地下の半牢屋みたいな所だった。

 当然、床は凸凹した石でお尻が痛い。ずっと座っていたら、もうすぐ初夏だけど身体が冷えそう。窓にも鉄格子がはまっていて、ほんのわずかしか外の様子が見えない。辛うじて、入口がドアだったから半牢屋って思ったんだけど……
 
 まぁとりあえず、俯いて、自分の手でも力を込めて握っていれば、少しは、恐怖を必死に我慢している健気な少女に見えるかな。それとなく、後ろから私の肩に手を回し、寄り添うリア。わかってるじゃない。

「絶対に騒ぐんじゃねーぞ!!」

 男はそう吐き捨てると、ドアを乱暴に閉めた。そのまま見張りに付くみたい。階段を上る音がしなかったから。

「決まり文句だよね。それよりも、恋人にあげた屋敷に、普通、牢屋ある?」

 人がいなくなったのを確認してから、小声でリア二話しかける。牢番が人族だったから、まぁ大丈夫かな。

「浮気していた恋人を折檻するための部屋ですね。普通の家庭にはありませんので、ご安心を。ここというより、先代ラメール侯爵が異常者だっただけです」

 耳元でリアは答える。

「嫌々、それおかしいでしょ。自分は何人も恋人をつくっておいて、恋人は駄目なんて身勝手すぎるでしょ」

「まぁ先代ラメール侯爵は異常者ですから。なんでも、男と話した時点で浮気だと認定されたみたいです」

 じゃあ、野菜買いにいったりして立ち話したら、浮気? ほんとに? ないわ~絶対にない。鳥肌が立ったよ。

「…………束縛系の極みだね。怖すぎるよ」

「ましてや、一度関係すると、恋人認定されていたそうですよ」

「全部屋敷が売れない理由がわかったわ。こんな、牢屋があったらね……」

 売れたとしても、ラメール侯爵家の醜聞を晒すことになるよね。できないわ……

「特殊な趣味嗜好の方なら需要はあると思いますよ」

「でしょうね。想像したくはないわ……それよりも、お花畑たちがくるのは、やっぱり真夜中かな? 私なら、昼にくるけどね」

「どうして、昼だと思ったのですか?」

 意外にも真剣な表情でリアが尋ねてきた。

「ここは王都、昼間に馬車が行き交うのは目立たないけど、陽が暮れたらは目立つと思って」

「さすが、カイナル様の番様です。アレは良い番を持てたのですね」

 アレって、カイナル様ことだよね。たまに、リナってカイナル様をぞんざいに扱うけど大丈夫なの? お咎めも注意も受けていないみたいだし、もしかして、二人知り合いなの?

「リナって――」

 尋ねようと口を開いた時だった。やけに乱暴な靴音と騒がしい声が聞こえた。

「きたようです」

 そう思っていたら、きたのはお花畑の一人、子供の方だった。まぁこれで、誘拐、及び監禁罪犯人は確定したんだけどね。
 
 お花畑はなにか勝ち誇ったように私を見下ろすと、声高らかに言い放った。

「罪人には牢屋がお似合いね。平民、私から運命の番であるカイナル様を禁術で奪った罪は重いわよ!!」

 一瞬、目が点にになったよ。禁術って、妄想凄っ。そこまでいったら、マジでヤバいよね、色々と。 

「はぁ!? 禁術!? なに言ってるの? とうとう、完全に脳内お花畑になってしまったの? 可哀想に」

 思わず、素で返答しちゃった。憐れみの目で見ながらね。被っていた猫が一気にどっかいっちゃったよ。

「禁術じゃなかったら、あの凛々しくて、逞しくて、格好良くて、美しいカイナル様が、平凡な平民を選ぶはずないでしょ。でも、その禁術はもうすぐ解けるわ。もう、その準備もできているの。お母様が色々手を尽くしてくれてね。貴方のその澄ました顔も、もうすぐ苦痛で歪みでしょうね。楽しみでしかたないわ」

 さらに自供してもらったわ。やっぱり、お花畑一号も率先して動いたようね。でも、まだこれじゃあ弱いよね。姿を見せていないもの。逃れられる可能性がある。なら、最後までこの茶番に付き合ってあげるわ。

「ありもしない、禁術をどう解くつもりなの? ほんと、頭大丈夫?」

 徴発してやった。

「せいぜい、粋がってなさい!! 今晩で全てが終わるんだから!!」

 そう吐き捨てると、お花畑二号は牢屋から出ていった。

 その後、ゴロツキはリナを人質にして、自分で猿轡さるぐつわをするように命じる。そして、私に荷馬車に乗るよう指示した。私が乗ったのを確認すると、リナも猿轡をされ放り込まれる。その上に藁を大量に被せられた。

 偽装工作ね。用意ができた? もしかして、王都の外に出るつもりなの? なにかしらの儀式をするのなら、王都内では不都合ってことか……



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