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徹底的に潰したいの
しおりを挟む私が部屋から取り出して義両親の所に逃げたせいで、この計画はカイナル様抜きで始まった。とはいっても、本人は全部把握しているはずだけどね。ピアスは付けたままだし、魔法具も付けたままだから。ツーツーでしょ。
あの時、少しでも私の気持ちを理解してくれる素振りを見せてくれたなら、追いかけてくれたなら、この計画にカイナル様も加わってもらおうって考えていた。だけど……
「ならならばっかりで、溝があいた気がするな……」
つい、自分も気付かないうちに、そんな独り言が漏れていた。
確かに、亜人族と人族との違いはあっても、言葉にすれば伝わるって思っていたの。でも……考えてみれば、価値観が違う者同士だもの、カイナル様の反応はある意味正解だったのかもしれない。だとしても、相容れたいって思うのは、私の我が儘なのかな?
あ~~もう!! なんか、苛々する!! モヤモヤする!! 私ってこんなに女々しかったかな。
「さっきから、百面相してますよ、ユリシア様」
義お父様が付けてくれた侍女は、リアといって、別に騎士ではなく、普通に侍女をしてくれている人だった。何度か義両親の傍で仕事をしているのを見たことがあったから。
な、なんでも、この清楚系美女がコンディー公爵家で働いている騎士よりも強いなんて驚きだよ。聞いた時は目を丸くしたからね。でも、納得。コンディー公爵家はバリバリの武闘派だからね。私も、護身術ぐらいは身につけたし。
「えっ!? そんなに表情に出てましたか、気を付けていたのに。教えてくれてありがとうございます、リナ」
思わず、頬に両手を添え照れる。
「侍女として、この発言は適さないと思いますが、喧嘩することは良いことでは。それだけ、自分が本気で考え思ったことをぶつけた。私はとても良いことだと思います。そもそも、本気で相手のことを考えていなければ、喧嘩などしません。疲れますから」
確かにそうだよね。
侍女だったとしても、私の考えを後押ししてくれるのは嬉しい。でも、私の気持ちはあまり晴れない。
「そうですね……」
一方通行は、やっぱり悲しくなるし辛いから。カイナル様の方もそうだろうけど。
「ユリシア様は堂々としていればいいのです。そして、あのバ、いえ、カイナル様を顎でこき使えばいいのですよ」
バ? もしかして、馬鹿って言おうとした!? 顎でこき使う? えっ、それ、貴女が言っていい言葉じゃないよね?
本当は叱責しなければいけないけど、その言い方が壺にはまったみたいで笑ってしまった。
「だったら、その方法教えてくれますか?」
私がそうリナにお願いすると、リナはとっても良い笑顔で、「はい。お任せください」と言ってくれた。本当に、ゴルティー公爵家の皆は優しいな。
リアのおかげで少し気分が浮上した頃、学園に馬車が到着した。私はリアから鞄を受け取り、学園に向かった。
私は気付かなかったけど、私たちを物陰から監視する者がいたらしい。リアは気付かない振りをして放置し屋敷に戻った。
義お母様がお茶会で話す内容がラメール侯爵家に伝わるのは今日の午後、動くなら、今日の夕方、帰りの馬車からになるわね。
うまく釣れればよし、釣れなくても、これまでの暴言は録音済み。それが私たちゴルティー公爵家が握っている以上、ラメール侯爵家に勝ち目は始めからないの。いくら、国王陛下の妹でもね。約束の日の返答次第によっては公表すると言ってるしね。
重ねるのは醜聞だけ――
私はその醜聞で、徹底的にラメール侯爵夫人とシルク嬢を潰したいの。この国にいるのが恥ずかしいくらいにね。
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