スパダリ社長の狼くん

soirée

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第四章

十五話※R18

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 メールを送った通りに、パーキングの車の中で待っていた忍に矢田が──秋平がウィンドウをノックする。忍が手元のボタンで窓を開けた。
「どうぞ。僕の体なら好きにすればいい。瞬には絶対に手を出すな」
 秋平が嗤った。煙草を咥えて火をつける。佑から全ての情報を聞いた今、その煙草さえも瞬の肌にあの刻印を残したものなのかと焼け付くような怒りを覚えた。
「話が早くていいね。俺はお前のことは気に入ってた。仕込んだ通りになんでもやってくれたからな。フェラもところてんもメスイキも……覚えが良かったよな?」
「黙れよ……僕はそんな戯言に付き合ってる時間なんてないんだ、僕は……」
「落ち着けよ。いいのか? 俺としてはお前を堪能する前に坊やを絶望に叩き落とすのも一興だ、それでもいい。でも俺にとってのメインディッシュは今も昔もお前だから。お前が言うこと聞いてくれれば別にあの坊やに執着する気はないんだよ」
「だったらホテルでもどこでも連れ込めばいい……!」
 囁くように叫んだ忍の車の窓から腕を差し込んで、器用にドアを開ける。忍の表情が引き攣った。
 抵抗しても同じレベル、同じ流派の秋平とではこの状況で逃げ切ることはできない。秋平が非道極まりない宣言をして、病院の裏口を指す。
「分かってないな。あの坊やに見られるかもしれないエクスタシーは最高だろ? その挙句に見られちまった時のお前の絶望が絶品なんじゃない。ほら、大人しく中入れよ、いいだろ。お前がきちんと声を我慢できればそれでいいんだからな。忍君」
 蒼白になった忍が静かにその顔を見据える。従うのではない、奴隷になるわけではない。今だけだ。
 どんな目に遭わされるかと記憶の底から手を伸ばして己を引き留める13歳の己を振り払い、黙らせる。
「……分かった。それで瞬に手を出さないと約束するなら」




「あぁっ……は、あっ……ふっ……うぅっ……」
「こらこら……ちゃんと我慢しないと坊やが起きちまうぞ。お前昔からすぐ啼くからな」
 指先が背筋をなぞり、爪を立てる。同時に首筋に強い痛みを覚えた。噛みつかれた感触に瞳が歪む。
 指先が遠慮も躊躇もなく挿し込まれ、慣らすようにかき回しては熟知された弱点を責めてくるのに、感じたくもないのに忍のものは先走りを溢れさせてしまう。違う、これはただの身体の生理的な反応だと胸中で繰り返しながら、よがってしまう身体をなんとか抑えようと力を込める。そんな動きがより挿入された秋平の指先を締め付けてしまい、下卑た含み笑いを耳元に落とさせた。
「すっごい締まるな。やっぱお前の良さはこの締まりの良さだったから、そのままでいてくれて嬉しいよ」
その言葉と同時に圧迫感が増す。咥えこまされた指が増やされたことを知って、その先に待ち受ける攻めが簡単に予想され、思わず腰を引いて逃げを打つ。秋平の体が背後からそんな忍を押さえつけて、決して逃れられないようにきつくホールドする。
「やめ、っ……あっ?! んあああっ、だめだ、それはっ……や、めぇぇっ……!!」
3本の指を潜り込ませた秋平は、人差し指と薬指で忍の敏感なしこりを摘み上げて中指で強弱をつけて揉みしだく。腰がガクガクと震えてのけぞろうとするのさえも阻み、一切の逃げ道を絶って忍に無理矢理絶頂を促す。
「気持ちいいよな? 昔からこれやってやるとお前、泣きながらよがってくれたもんな。お前も仮にもDomなのに情けない限りだよな……Subに生まれてりゃ諦めもついただろうに。ほら、どうして欲しい? 潮を吹くまでここでイかされたいか? あとちゃんと声を抑えろ、啼きまくってんの自覚してるか?」
「や、やめてっ……それもう、やめてくれっ……んんんんっ、あ、ああぁ」
懇願する忍の首を下拵えするように舐める。びくっと撓る背を撫でながら引きずり起こす。
「充分慣らしてやったからそろそろ本番だな」
 忍の腰を高く引き上げ、華奢な忍には不釣り合いなほどのモノを容赦なく突き刺す。忍が必死で声を殺して痛みを涙に逃した。そのうなじにまた咬み傷を残して、秋平が動く。
 ずっ……ぐちゅっ……と肉の擦れる音と共に忍のアナルから鮮血が伝う。その地獄にも似た痛みさえも、強すぎる力で前立腺を突かれる衝撃に悲鳴じみた嬌声に変わる。
「……っ、ひ、ぁ……や、めろっ……そこ、はっ……!! あっ……」
「気持ちいいのか? 前立腺、コリッコリだぜ。何回イくかな、お前最高記録5回だっけ。こっちもちゃんとイジってやるからもっと頑張って声抑えろ、んでケツは締めろ。でないとまた首絞めるか尻引っ叩くか……なにかしら追加オプションがつくぞ」
 震える身体を背後から抑え込んで何度も何度も蹂躙する。細くしなやかな背が撓るままに、限界を迎えている忍を顧みもしないで執拗に、肉食獣が獲物の肉を骨までしゃぶりとるように、忍が何度精を吐き出しても解放もせずにまたさらに奥に凶器のような雄を突き立てる。
 体格差がありすぎて忍の内臓を圧迫するようにさえも思えるモノは、もたらす快楽も大きさに比例して際限がない。頭でその快楽を否定すればするほどに、精神と身体が引き裂かれてバラバラにされていく。恐れ続けたその快楽は、初めて体に叩き込まれた二十三年前と同じく暴力的で身勝手だ。
 ぐちっとぬめった音と共に秋平の指先と忍のものの間に白い糸ができる。容赦もない手つきで乱暴に扱きながら、激しいピストンもやめはしない。
「どうだ……気持ちいいだろ? ここが好きだよな、ほら。本当は声が出そうなんだろ? 啼けよ」
「は、ぁ……っ、んっ……死んでも、断る……う、ぁ……」
 気狂いを起こしそうな快楽をかぶりを振って否定する忍のものを掴んだ指先が鈴口を執拗に押し広げてそのまま裏筋へと伸びる。噛み締められた唇に鬱血した血ぶくれができる。くちっ……クチュッ……と濡れた音が響いた。
「あっ……ん、んっ………ンぅ……っ! がっ……あっ……」
 首に手をかけた秋平がそのまま締め上げる。息が詰まって酸欠になる忍の身体が弛緩していくのを散々楽しんだ挙句に、不意に手を緩める。窒息した忍が必死で呼吸を繋ぐのを、子供が蝶の羽をちぎって遊ぶような残虐さでまた締め上げる。
 忍の指先が床の上で剥がれ、血が滲んだ。睡眠薬を処方されていた瞬が朦朧としながらはっと瞼を開いた。困惑するように泳いだ視線が、ベッドの横で乱暴されている忍に気づいて凍りつく。
 咄嗟に飛び出して殴りかかろうとする瞬を、視線だけで忍が捉えた。怒りとも恐怖とも付かぬどんな感情にも似ない激情がその瞳を染め、瞬の動きを縛り付けた。
 忍が限界まで酸素を絶たれてがくんと力を失う。矢田の背がびくんと一瞬大きく波打ち、忍の中に精を放ったことが知れた。ぐったりとした忍の服さえ整えてやらないまま、ゆっくりと身を起こして忍の中から萎えてなお巨大なものを引き抜く。何事もなかったように服を整え、締めていた忍の首を解放し、気道確保をして人工呼吸を施す。げほっと咳き込んで瞼を開いた忍に微笑みを落とした。
「よく頑張ったな。今日はこれで解放してやる。明日は昼も暇なときは来てもらおうかな、リップサービスくらいできるだろ」
 リップサービスという一言に忍の身体が強張る。言葉通りではないそのサービスはもちろん、咥えろと……そういうことだ。何度も何度も仕込まれたその奉仕。
 秋平はそのまま病室を出る間際に、身を固くして布団に潜り込み、必死に息を殺し続けていた瞬に呪いを残した。
「どうやら坊やは何も見てないみたいだな。お義兄さんは綺麗な体のままだよ、君と同じ」
 布団の中で眼を見開いた瞬の瞼から涙が伝う。屈辱なのか、恐怖なのか……怒りなのか。圧倒的な悪意に直面してしまったことに対するドス黒い何か。
 スライドドアが閉まる。
 
 静かに響く嗚咽が忍のものであると気づいて、ベッドを降りて乱れた服の上で膝を抱えている忍の肩に触れる。
 異常なほどの強張りを見せる華奢な身体が、今しがた起きた忌まわしいレイプを忘れようと懸命に記憶を封じるために戦っている。
 首に残った手の痕は痛々しく、何度も締め上げられたせいで泡の滲んだ口元が震えていた。そのまま顔を僅かにあげた忍が、涙を指先で払いながら瞬に嗤って見せる。自嘲のようなそれはしかし、妙に強い。
「忍……大丈夫じゃ……ねえ、よな。ごめん、俺……こんな側にいたのに」
「いい、んだ……必死で声を抑えた甲斐が、あった……最後までヤってくれたじゃ、ないか……僕の中の精液をし、証拠にすれば……君の件では無理でも、僕の件で立件、できるだろ……?」
 流れ落ちた黒髪に窓から降りた月光が弾かれて輝く。なめらかな頬に伝う透明な涙と白い肌の華奢な線。彫像のような見た目に秘められた中身の強かさに何を隠しているのだろう。
 瞬が点滴の支柱を引き寄せながら忍の隣に膝をつく。無防備なその全てを守るように、強く抱きしめた。
 こんなに強くなってほしくなかった。人並みに、辛いときは辛いと言える人間でいさせてやりたかったのに、時間は逆戻りはしない。忍の過去を消してやれるような、そんな魔法は瞬には使えない。
「ごめん……ごめんな……」
 剥がれてしまった爪を見て、顔を歪める。
「いいんだよ。こ、これも……全部、証拠になる。ああ……レコーダー止めないと……」
 瞬のベッドの下に手を差し込んで、レコーダーを回収しようとして固まる。外されている。やはり、と思いながら、瞬に抱きしめた腕を外すように指示する。
「? なんだよ……」
「ごめん。勝手に仕込んで」
 瞬のベッドの上、背の下に隠していたスマートフォンを回収する。起動したままの超高感度ボイスレコーダーの音声を確認する忍に、瞬が絶句した。
「まさか生きてる人間の下に隠してるとは思わなかったのかな」
 肩をすくめた忍がそのデータを槙野に転送しようとするのを瞬が手を抑えて止める。
「……いいのか、そんなの送って……お前は平気なのか……?」
「……今更だよ。僕はもともとこういう扱いには慣れてる。そんな事よりも優先すべきなのは秋平を塀の中へ送る事だからね……」
「なぁ、自分の痛みをあんまり無視するなよ」
 あまりにも己を顧みない忍に涙を滲ませる瞬に、忍が僅かな苛立ちを見せた。今までは何があっても拒絶だけはしなかった忍が、立ち入らないでくれと強く瞬を遠ざけた。瞬がショックを隠しきれずにいるのを見遣って小さく微笑む。ごめんね、と呟いた声の距離の遠さに肩に触れていた指に力が籠る。駄々をこねるような瞬に、忍が小さく嘆息した。
「……無視せざるを得ないんだ、痛いと傷を見据えて弄り回してどうなる? 何も変わらない。その間に動けることをした方がいいんだ、僕はそうやってここまでのし上がってきた。……他人は何もしてはくれない。僕は君にこんな思いをさせたくないんだ。分かって」
「他人じゃないだろ……!?」
 縋るように問うても、忍の涙の滲んだ朱の目尻は頑なにまつ毛を伏せる。
「ごめんね……」
 優しい拒絶が囁きとなって瞬の耳朶を打つ。冷たくもない、温かくもない……温度も感情も抜けた忍に瞬が口を閉ざした。
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