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第一章

~61~

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◆レオクリス






俺は彼女に何を望んでいるのだろう


好きなのに、嫌いな彼女










ユキノには未来視の能力がある。
魔法とは違うその不思議な力を目の当たりにして、
ユキノが言う、この国の危機に恐怖した。
それと同時に、不謹慎ながらも期待もした。

ユキノの視た国の危機を解決したなら、
俺の事を見てくれるんじゃないか
年々王族の力が削がれていくのを何も出来ずに見ている事しか出来なかった。
王城で働いていた官僚達が次々に辞めていくのを引き留める事すら出来なかった。
お父様もお母様も、この国の王制は俺の代で最後になるかもしれないと
もしかしたらそれより速くに終わるだろう、と

考えた事も無かった。


ずっとずっと、俺が生きるより何倍も長い歴史を誇るサズワイト王国が変わってしまうだなんて
子供の頃の俺は、俺がこの国を支える国王となるのだと思って信じていたし、今だってそう思ってる。
王の居ない国なんて、そんなのは有り得るのか?

代表選挙だとか聞いたけれど、そんな物で選ばれた人と、国王と、何が違う?
同じ人間じゃないか
選ばれた人間だと言うのなら、俺だって同じだろう
誇り高いサズワイト王国の王家に生まれ育った俺が国王になれないだなんて嘘だ。
王家の威信を、王族の誇りを、
人々が忘れつつある本来の王国の在り方を取り戻す
ユキノの力があれば、きっとそれは出来るはずだ

この国は俺の国だ。
サズワイト王家が代々守ってきた国だ。
王太子である俺がこの国を守る事は当然の事で、この国を導くのも俺であるべきだ。

漁業会は調子に乗り過ぎだ。
漁業会を守る為に設立されてしまった巫山戯た法律を無くす

この国を正しく俺が導く
そうすれば、そうすれば、
お父様もお母様もミーシャも、俺を見てくれる

もう俺にはそれしかない、ライネルは漁業会の一員だ。
やりたい事をやりたいようにしているだけだと言うけれど、俺にはそんなものは無い
俺にあるのはやらなければいけない事だけだ
王族の血を引いているから、王太子だから、だから、この国を守る

国の一大事を解決出来たなら漁業会の奴らだって俺を評価せざるを得ないだろう

速く、速く、速くこの国に危機が訪れないだろうか




「カッコつけたい、のかな」

「どうされたんです?殿下」

「君は、俺を殿下と呼んでくれるんだね」

「殿下は、殿下ですから」


精霊官は王家の味方なのか?と思うもきっと違うのだろう
精霊信仰の象徴とも言える社も一つ、また一つと壊され新しい建物が造られていく
街の景色も、国の情勢も、気が付けば変わってしまっていて、俺にはどうしようも出来ない
俺を敬っていた筈の人達の存在ももう今では珍しいくらいだ。
何でこんな事になってしまったんだろうと考えるたびに、目に映るのは漁業会のエンブレム

「あいつらがいなければ・・・」

そんな事言った所で、ただの愚痴でしかないのだけれど

「でも、彼等のお陰で民の暮らしが豊かになったのも確かです」

「わかっているさ」


わかっている。わかってはいても、俺の立場からだと不満を持たずにいられない
だからこそ

「ユキノの予言した。魔物の大量発生
それを私達でくい止めましょう。そうすればきっと」

「・・・ああ、見返してやる。
王家の威信を取り戻す」


彼とユキノは俺の協力者だ。
漁業会がこの国を支配つつある現状を嘆いてくれた。
共にこの国をあるべき姿に戻そうと言ってくれた。

俺は一人じゃない
きっと大丈夫だ。

正しくあるべきサズワイト王国を、
俺にはその使命がある。
ミーシャに、見て貰える。





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