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第一章

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■ルーク




首筋から背筋にかけて、ピリピリとする感覚が続く

強いなんてもんじゃない
規格外だ。


精霊王

なんて、本やら紙やらで散々読んだしこいつの作った問題集でもよぉく知っている。
世界には精霊が満ちていて、その精霊達を率いる存在が精霊王と呼称される事
精霊王の命令一つで、風が吹かなくなったり、雨が降らなくなるという事
精霊を祀る社で祈りをする事でそういった災害が起こらないように、豊かであれるようにと精霊頼みをする事、だとか
ハッキリ言って良くわかっちゃいない
こいつの問題集にはそーいった精霊の問題もあれば、雨の降る仕組みだとか、風の吹く原理だとかの問題もあって、正直頭ん中ゴッチャゴッチャになった。
とにかく理解するより覚えろ。と詰め込んでなんとか無事に学院卒業を果たした訳だが

これがヤベー奴だってのは確かだ。
勝てる気がしねぇ
槍を向けることすら出来ないだろう
こうして向かい合ってるだけでもかなりキツイ
だが、目を逸らしては駄目だと俺の勘が告げる。
絶対にこいつから離れてはいけない、と


こいつらの会話を聞いて、納得した。
やたら頭の良いこいつの前世が、精霊、いや、精霊モドキ?
どっちでもいい、とにかくこいつが前世じゃ人間じゃなかったって事だ。
産まれて来た意義だとか、自分が何物であるのかを知りたいだとか、何言ってんだが良くわかんなかったが
そういう事か

この長髪野郎はどうにもこいつに帰って来て欲しいとゴネていやがるが、それをバッサリと切り捨てるこいつに良く言ったと拍手を贈りたくなる。
にしても長髪野郎、随分とこいつに嫌われてんな。
ここまであからさまに嫌悪な雰囲気を纏ったこいつは始めて見たかもしれねぇ

だが、頂けねぇ会話だ。
『その時は別の世界に転生でもするさ』って
こいつは、死んでも次があると平然としていやがる
ふざけんなよ。
いや、確かにこいつにとっちゃ人間として過ごす事なんざただの暇つぶしの余興なんだろうよ
俺はそれに八つ当たりに怒りを燃やす
散々俺の事引っ掻き回しやがっといて、俺の人生振り回しといて、何ほざいてやがんだ。

あの頃の記憶なんて思い出したくも無い恐怖ばかりの日々だった。
次は俺かもしれない、次こそ処分ころされるかもしれない
そんな場所から拾ったのはおまえだろう
俺を選んで、俺を振り回して、俺を着き従わせておいて、自分は死んでも構わないだなんてふざけてる。


『ノリと勢いだ』


・・・・・なんかバッカみてぇ
そうだ、こいつは真面目な癖にどっか物臭なんだ。
面倒な事を避けたがるが、頼まれるとなんだかんだ付き添うような、そんな奴だ。
だが、俺が、『おまえについていきたい』と言って、それを受け入れるのか?
それは難しい気がする。
実際この長髪野郎の頼みをバッサリ切り捨てたんだ。
ただ頭を下げて頼むだけじゃあ駄目だ。
俺に、こいつに付いていけるような力があれば
転生とやらに付いていける事が出来れば、そんな力があれば
そうすりゃこいつも呆れながらも妥協すんだろう
『おまえがそうしたいのなら好きにすれば良い』って言ってくれんじゃねーかって
転生とやらが出来るような力が欲しい
こいつに、なにがなんでも付いていけるだけの力が欲しい

頭ん中の冷静な部分が何を必死になってんだと言うが
仕方がないだろう
俺は決めた。
何があっても、何がなんでもこいつの傍に居るって
始めに俺を選んだのこいつなんだ、なら俺にはその権利があって然るべきなんじゃあねーのか







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