上 下
54 / 84
第一章

~53~

しおりを挟む



「噴火するな」

「へ?」


振り子式とコイル式の地震計の紙を見て、最悪の可能性を予測する
確実では無い、これだけで火山噴火を予測するのはまず無理だ。
しかしこう言った自然災害の前では常に″最悪″のパターンを考えて置かねばならない

「地図を」

「あっ、はい!」

「・・・・・・ここ、から・・この辺りか」

「ミーシャ様、それは?」

人一人寝ころべるだろうテーブルを囲むように集まっている若者たちは私の発した噴火、の言葉に一様に難しい顔をさせている。

「この辺りの活火山はこれらが該当する。今の時期は風向きはこちらからこちら側へ流れるが、当日もそうとは限らないからな
マグマの質や火山灰等も調べて欲しかったが、無い物は仕方ない。
この一帯に住む者達を避難させる。出来るな?」

「はいっ!やります!」

「これだけの規模となると・・集合住宅の建築の前倒しと空き家探しも必要だな」

「まずはこの地区に行って避難勧告をしよう。お年寄りや病人の移送が最優先だ」


私の言葉を疑う事無く行動に移す彼等に、少しばかり呆れるものの、事が事だけにやり過ぎるくらいの方が調度いいだろう。
四年近く録り溜めてきたという地震計の紙は丁寧にファイリングされており、一日三度の計測がされてきたのが分かる。
設置場所は複数あり、今の今まで欠かすこと無く行ってきたのだろう
継続は力なり。とは良く言ったものだ。
しかし、本当に噴火するのだろうか?
ただその可能性があるというだけの事だ。
火山の噴火は予測がとても難しい
地震が起きたからといって噴火するとは限らないし、前兆も無く突然起こる事もある
何も起こらないのならばそれに越した事は無いのだが

「バッカ!ミーシャ様がそう言ったんだぞ!疑う暇があんならさっさとしろ!」

「ミーシャ様が言ったんだから間違い無いわよ!早く避難させなきゃ!」


これはやらかしてしまったか・・・?

「私はあくまで可能性の話をしただけだ。必ず噴火が起こるとは限らないからな?」

「大丈夫ですっ!そこん所は上手くやるんでっ!」


何をどう上手くやると言うのだ。
結婚式を挙げるまでに私の印象が悪くなるような事は避けるべきなのだが、こうも私の名前を使って騒がれてしまってはもう手遅れだろう
不謹慎ながらも噴火してくれやしないだろうかと思ってしまう

「計測はなるべくギリギリまで粘りたいですね。
どれくらいまでなら許されるでしょうか?」

「知らんよ。移動時間を考慮するとして・・・・・」

再び計測紙を捲っていき日付の古いものから新しいものへと目を移らせる。
過去にこの山が噴火したという記述は一切無い
手掛かりはこの紙の山のみ
正確な予測はほぼ不可能
なら


「一度この地区へ行こう。直接調べる」


地殻、マグマ流動を実際に調べるしかないだろう

「危なくないですか?」

「今日明日に起こる事では無いだろう、私が行った方が確実だ」

「・・・ミーシャ様の確証があった方が確かですからね。頼めますか?」

「頼まれずとも行くさ」


北西部、王都からずっと離れた地区だ。
今の時期になると山頂付近に雪が積もっているのだとか
ルークを横目に見る。
もまた、雪山の事だったな





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 旧名「異世界でひっそりと暮らしたいのですが」  俺──柊 秋人は交通事故で死んでしまった。  気付き目を開けると、目の前には自称女神様を名乗る神様がいた。そんな女神様は俺を転生させてくれた。  俺の転生する世界、そこは剣と魔法が飛び交うファンタジー世界!  その転生先はなんと、色鮮やかな花々が咲き乱れる楽園──ではなかった。  神に見放され、英雄や勇者すら帰ることはないとされる土地、その名は世界最凶最難関ダンジョン『死を呼ぶ終焉の森』。  転生から1年経った俺は、その森の暮らしに適応していた。  そして、転生してから世界を観てないので、森を出た俺は家を建ててひっそりと暮らすも次々と巻き込まれることに──……!?

【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン
ファンタジー
高校二年生にもかかわらず、見た目は小学生にも見える小柄な体格で、いつものようにクラスメイトに虐められてロッカーに閉じ込められた倉戸 新矢(くらと あらや)。身動きが取れない間に、突然の閃光と地震が教室を襲う。 気を失っていたらしく、しばらくして目覚めてみるとそこは異世界だった。 異色な職種、他人からスキルを習得できるという暴食王の職種を活かして、未知の異世界を仲間達と旅をする。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~

一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】 悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……? 小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位! 更新予定:毎日二回(12:00、18:00) ※本作品は他サイトでも連載中です。

公爵家御令嬢に転生?転生先の努力が報われる世界で可愛いもののために本気出します「えっ?私悪役令嬢なんですか?」

へたまろ
ファンタジー
ここは、とある恋愛ゲームの舞台……かもしれない場所。 主人公は、まったく情報を持たない前世の知識を持っただけの女性。 王子様との婚約、学園での青春、多くの苦難の末に……婚約破棄されて修道院に送られる女の子に転生したただの女性。 修道院に送られる途中で闇に屠られる、可哀そうな……やってたことを考えればさほど可哀そうでも……いや、罰が重すぎる程度の悪役令嬢に転生。 しかし、この女性はそういった予備知識を全く持ってなかった。 だから、そんな筋書きは全く関係なし。 レベルもスキルも魔法もある世界に転生したからにはやることは、一つ! やれば結果が数字や能力で確実に出せる世界。 そんな世界に生まれ変わったら? レベル上げ、やらいでか! 持って生まれたスキル? 全言語理解と、鑑定のみですが? 三種の神器? 初心者パック? 肝心の、空間収納が無いなんて……無いなら、努力でどうにかしてやろうじゃないか! そう、その女性は恋愛ゲームより、王道派ファンタジー。 転生恋愛小説よりも、やりこみチートラノベの愛読者だった! 子供達大好き、みんな友達精神で周りを巻き込むお転婆お嬢様がここに爆誕。 この国の王子の婚約者で、悪役令嬢……らしい? かもしれない? 周囲の反応をよそに、今日もお嬢様は好き勝手やらかす。 周囲を混乱を巻き起こすお嬢様は、平穏無事に王妃になれるのか! 死亡フラグを回避できるのか! そんなの関係ない! 私は、私の道を行く! 王子に恋しない悪役令嬢は、可愛いものを愛でつつやりたいことをする。 コメディエンヌな彼女の、生涯を綴った物語です。

乙女ゲームに転生したことに気づかない~氷上の舞姫~

クロウ
ファンタジー
 事故が原因で転生した椎名楓。 身体能力が高いことを生かしてフィギュアスケートで活躍をする。  恋愛が始まるのは高校から。 自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知らない楓はどう過ごしていくのか。 思ったより皆様に読まれていないから執筆する気が……… アイデアも尽きたし、もう更新しないかも。 1日1話更新する予定です。 7話から本格的に話が始まります。 プロローグも楽しんでいただければ幸いです。

処理中です...