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第一章
~53~
しおりを挟む「噴火するな」
「へ?」
振り子式とコイル式の地震計の紙を見て、最悪の可能性を予測する
確実では無い、これだけで火山噴火を予測するのはまず無理だ。
しかしこう言った自然災害の前では常に″最悪″のパターンを考えて置かねばならない
「地図を」
「あっ、はい!」
「・・・・・・ここ、から・・この辺りか」
「ミーシャ様、それは?」
人一人寝ころべるだろうテーブルを囲むように集まっている若者たちは私の発した噴火、の言葉に一様に難しい顔をさせている。
「この辺りの活火山はこれらが該当する。今の時期は風向きはこちらからこちら側へ流れるが、当日もそうとは限らないからな
マグマの質や火山灰等も調べて欲しかったが、無い物は仕方ない。
この一帯に住む者達を避難させる。出来るな?」
「はいっ!やります!」
「これだけの規模となると・・集合住宅の建築の前倒しと空き家探しも必要だな」
「まずはこの地区に行って避難勧告をしよう。お年寄りや病人の移送が最優先だ」
私の言葉を疑う事無く行動に移す彼等に、少しばかり呆れるものの、事が事だけにやり過ぎるくらいの方が調度いいだろう。
四年近く録り溜めてきたという地震計の紙は丁寧にファイリングされており、一日三度の計測がされてきたのが分かる。
設置場所は複数あり、今の今まで欠かすこと無く行ってきたのだろう
継続は力なり。とは良く言ったものだ。
しかし、本当に噴火するのだろうか?
ただその可能性があるというだけの事だ。
火山の噴火は予測がとても難しい
地震が起きたからといって噴火するとは限らないし、前兆も無く突然起こる事もある
何も起こらないのならばそれに越した事は無いのだが
「バッカ!ミーシャ様がそう言ったんだぞ!疑う暇があんならさっさとしろ!」
「ミーシャ様が言ったんだから間違い無いわよ!早く避難させなきゃ!」
これはやらかしてしまったか・・・?
「私はあくまで可能性の話をしただけだ。必ず噴火が起こるとは限らないからな?」
「大丈夫ですっ!そこん所は上手くやるんでっ!」
何をどう上手くやると言うのだ。
結婚式を挙げるまでに私の印象が悪くなるような事は避けるべきなのだが、こうも私の名前を使って騒がれてしまってはもう手遅れだろう
不謹慎ながらも噴火してくれやしないだろうかと思ってしまう
「計測はなるべくギリギリまで粘りたいですね。
どれくらいまでなら許されるでしょうか?」
「知らんよ。移動時間を考慮するとして・・・・・」
再び計測紙を捲っていき日付の古いものから新しいものへと目を移らせる。
過去にこの山が噴火したという記述は一切無い
手掛かりはこの紙の山のみ
正確な予測はほぼ不可能
なら
「一度この地区へ行こう。直接調べる」
地殻、マグマ流動を実際に調べるしかないだろう
「危なくないですか?」
「今日明日に起こる事では無いだろう、私が行った方が確実だ」
「・・・ミーシャ様の確証があった方が確かですからね。頼めますか?」
「頼まれずとも行くさ」
北西部、王都からずっと離れた地区だ。
今の時期になると山頂付近に雪が積もっているのだとか
ルークを横目に見る。
あの時もまた、雪山の事だったな
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