3 / 84
第一章
~2~
しおりを挟む私がこの世界に転生し自らの利用価値を両親に印象づけるには、単に自分に出来る事を連ねれば良い訳では無い
私がこれだけの事が出来るのだと両親の前でプレゼンテーションを行ったところで、あの頭お花畑状態の両親である。流石だね。凄いね。と私を褒める言葉しか言わない役立たずでは意味がない
そこで家族でない第三者、兄の家庭教師に目を付けたのだ。
さも兄に懐いてる妹のように付かず離れずの距離を保ち、家庭教師に自らがいかに優秀であるかを見せつける。身内の贔屓目がなく、しかも比較対象たる存在がすぐ隣にいることもあり私の優秀さが際立つ訳だ。
兄としては面白くないことだろう、自らよりも格下であるはずの妹と事あるごとに比べられ、両親から親族の殆どがこぞって私の話題ばかり揚げ連ねる。
私の引き立て役として存分に利用させて頂いたのだが、そうこうしているうちに私よりも三年先に生まれてきた者としての意地か、両親からの関心を取り戻そうとしているのか、はたまた自らより優秀な私を出し抜きたいが為なのかはわからないが、私に追い付かんとばかりに必死になって勉学に励みながらも私より良い成績を取れずに歯噛みする様はそれなりに興に乗るものがあった
□ □ □ □
僕の妹はとても凄い。
かあ様の赤い髪もキレイだけど、とお様の銀髪もかっこいいけど、ミーシャの黒髪はずっとずっとキレイだと思う。
かあ様の金色の瞳より、とお様の紫の瞳より、ミーシャの瞳は世界中の美しいものを吸い取ったかのようにキラキラと輝いてみえる。
ずっと前に、かあ様から見せてもらった黒い宝石よりもずっとずっとキレイなんだ。
それに僕の知らない事や、僕でも家庭教師に教わってない事まで何でも知っている。
お兄ちゃんとしてミーシャに頼られるようになりたいと頑張っていてもまったく追いつけなくて、落ち込んだりもするけれど、ミーシャはそんな僕に仕方がないなと勉強を教えてくれる。
その時のミーシャは、僕の妹なのにまるで僕よりずっとお姉さんみたいで、とてもドキドキして顔が熱くなってしまうんだ。
嬉しくて、ずっと傍にいて見ていたいと思うのに、なんだか恥ずかしくて、顔を背けたくなる、変な気持ちになってしまうんだ。
僕は妹のミーシャが大好きだ。
可愛くて、とてもキレイな僕の妹
ミーシャが産まれてすぐ、かあ様は僕に絵本を読んでくれた。
遠い昔、世界を救った聖女の物語だ。
ミーシャと同じ黒髪黒目で、僕とミーシャの御先祖さまで、ミーシャはその聖女と同じ黒髪に黒目なんだって、僕はその時、きっとミーシャは聖女なんだと思ったんだ。
だから、お兄ちゃんとして、聖女を守る物語の中の騎士のようになりたいって、その時からずっと僕は僕自身に誓ったんだ、ミーシャを守れる大人になるって
とくに僕が可愛いと思うミーシャは、時々僕にだけ見せる優しい笑顔だ。
かあ様達がミーシャの事を褒めている時や、家庭教師が僕よりもミーシャの方が凄いと言っている時に、ちらりと僕の方を見て、とても優しい笑顔を向けてくれるんだ。
いつもいつも家庭教師の誰もがミーシャを褒めてばかりいて、僕が出来ない子供のように思えて辛い時、ミーシャが僕のことをとても優しい、まるでかあ様が時たま僕達に向けるような、慈愛に満ちた暖かな微笑みに、僕は胸の辺りがギュウッて感じがして、苦しいのに、とてもあったかい気持ちになるんだ。
それ以来、僕は僕の事よりも妹が褒められる事の方がとても誇らしくて、嬉しく思うんだ。
もっともっとミーシャの事を見て欲しい、僕よりもずっとずっと素晴らしい僕の自慢の妹を沢山褒めて貰いたいって、そう思うようになったんだ。
でも、だからって僕がそれに甘んじる訳にはいかない
勉強では無理でも、少しでもお兄ちゃんとして頼られるように、ミーシャを守れるような強い男になりたい
僕はとお様とかあ様に頼んで剣の先生と魔法の先生からの授業を受けるようにしたんだ。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる