2 / 17
2
しおりを挟む
『抑制剤何使ってる?』
『えーっ!それ新しいやつじゃん。やっぱ副作用軽いの?』
『結構高いよね~?』
『でもさぁ、僕ヒートキツくて…。』
俺の左側の席を2つ空けて座っている3人組の話に耳を傾ける。3人ともオメガのようだ。1人は俺と同じ男のオメガだ。抑制剤の話と発情期の辛さを語り合っている。
俺は教科書を読むフリをして聞き入っていた。3人ともタイプは違うが可愛らしいオメガだ。俺みたいにベータよりのオメガとはだいぶ違う。
東京に来て何人かのオメガに会ったが、みんな可愛かったり美人だったりと魅力的だ。俺は背もオメガにしては高く陸上部だったので筋肉もそこそこ付いている。高校3年の春に受験勉強のために引退したからムキムキってほどでもない。目は一重だし、鼻は小さいし、唯一色が白いって所だけがオメガっぽい。陸上を辞めてからはさらに白くなってしまった。哲雄曰く『サッパリした顔』らしい。3人組の中の男オメガの顔をこっそり盗み見る。ぱっちりとした二重にシュッと高い鼻。可愛いと美人が同居している。そして良い匂いだ。
「おい、聞いてる?隣いい?」
ハッとして右上を見ると男が机を指差している。左の会話に夢中で気が付かなかった。
「あっ、うん。」
どうも、と言って彼が座った。チラリと見るとかなりの男前で精悍な感じだ。おそらくアルファだろう。何となく分かる。
大学に入学して何人かのアルファを見てきた。話しをした事はないが見ただけで分かる。ベータやオメガと全く異なる人種、まさに選ばれし人間だ。隣の男も一目でアルファと分かるオーラが滲み出ている。
「オメガ?」
急にこちらを向いて訪ねてきた。チラチラ見てたのがバレたのだろうか。しかも急にバースの事を言われてびっくりした。初対面ではベータに見られる事がほとんどだ。もしかしたら匂いが漏れているのかと焦る。彼はじっとこちらを見ている。
「うん、そう。ごめん、匂った?」
「別に。」
「そっか。」
これが俺とヤツの出会いだった。ヤツの名前は西園寺忠臣、期待を裏切らない洒落た名前だ。
仲良くなってから知ったんだけど、西園寺家のお坊ちゃんでアルファの忠臣はめちゃくちゃモテる。でも浮いた噂はあまり聞かない。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「今日、ウチ来るか?」
「いいの?」
「ああ。あの部屋じゃ勉強どころじゃないだろ。」
優しくニコリと笑いながら俺の頭をぐしゃぐしゃと掻き回した。
その後、俺と忠臣は何度か授業で一緒になりノートの貸し借りをするうちに仲良くなった。なにせアルファだし見た目が良いもんだから怖いヤツかと思って最初の頃はビクビクしていたが、意外とフレンドリーで良いヤツだった。優しくて面倒見が良くてマメだ。キリッと精悍な顔だが笑うと目が垂れて人懐っこい顔になる。そして良い匂いもする。お高い柔軟剤でも使っているのだろう。ふわりと薫るソレにドキドキするのは内緒だ。こんな可愛くも色っぽくもないオメガに言われても困るだろう。
俺はオメガ専用の学生寮に住んでいるが、オメガってだけで入居を断る所も多いから仕方なく学生寮だ。築40年のボロい寮でエアコンも古いため、夏はサウナみたいに暑く冬は冷蔵庫みたいに寒いというどうしようもない代物だった。図書館が空いている時間は図書館で勉強し、寮には寝に帰るだけの生活だ。今は夏なので蒸し風呂のようになった部屋で勉強なんて出来たもんじゃない。
そんな話を忠臣にしたら『ウチのマンションで勉強すれば良い。』とありがたいお誘いをいただいた。
忠臣の一人暮らしのマンションはとても学生とは思えない立派な物だった。コンシェルジュとかいう何でも屋みたいな人が常駐している。もちろん冷房もバッチリ効いて過ごしやすい。その日も俺はなんの躊躇もなくヤツのマンションに上がり込んでいた。
『えーっ!それ新しいやつじゃん。やっぱ副作用軽いの?』
『結構高いよね~?』
『でもさぁ、僕ヒートキツくて…。』
俺の左側の席を2つ空けて座っている3人組の話に耳を傾ける。3人ともオメガのようだ。1人は俺と同じ男のオメガだ。抑制剤の話と発情期の辛さを語り合っている。
俺は教科書を読むフリをして聞き入っていた。3人ともタイプは違うが可愛らしいオメガだ。俺みたいにベータよりのオメガとはだいぶ違う。
東京に来て何人かのオメガに会ったが、みんな可愛かったり美人だったりと魅力的だ。俺は背もオメガにしては高く陸上部だったので筋肉もそこそこ付いている。高校3年の春に受験勉強のために引退したからムキムキってほどでもない。目は一重だし、鼻は小さいし、唯一色が白いって所だけがオメガっぽい。陸上を辞めてからはさらに白くなってしまった。哲雄曰く『サッパリした顔』らしい。3人組の中の男オメガの顔をこっそり盗み見る。ぱっちりとした二重にシュッと高い鼻。可愛いと美人が同居している。そして良い匂いだ。
「おい、聞いてる?隣いい?」
ハッとして右上を見ると男が机を指差している。左の会話に夢中で気が付かなかった。
「あっ、うん。」
どうも、と言って彼が座った。チラリと見るとかなりの男前で精悍な感じだ。おそらくアルファだろう。何となく分かる。
大学に入学して何人かのアルファを見てきた。話しをした事はないが見ただけで分かる。ベータやオメガと全く異なる人種、まさに選ばれし人間だ。隣の男も一目でアルファと分かるオーラが滲み出ている。
「オメガ?」
急にこちらを向いて訪ねてきた。チラチラ見てたのがバレたのだろうか。しかも急にバースの事を言われてびっくりした。初対面ではベータに見られる事がほとんどだ。もしかしたら匂いが漏れているのかと焦る。彼はじっとこちらを見ている。
「うん、そう。ごめん、匂った?」
「別に。」
「そっか。」
これが俺とヤツの出会いだった。ヤツの名前は西園寺忠臣、期待を裏切らない洒落た名前だ。
仲良くなってから知ったんだけど、西園寺家のお坊ちゃんでアルファの忠臣はめちゃくちゃモテる。でも浮いた噂はあまり聞かない。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「今日、ウチ来るか?」
「いいの?」
「ああ。あの部屋じゃ勉強どころじゃないだろ。」
優しくニコリと笑いながら俺の頭をぐしゃぐしゃと掻き回した。
その後、俺と忠臣は何度か授業で一緒になりノートの貸し借りをするうちに仲良くなった。なにせアルファだし見た目が良いもんだから怖いヤツかと思って最初の頃はビクビクしていたが、意外とフレンドリーで良いヤツだった。優しくて面倒見が良くてマメだ。キリッと精悍な顔だが笑うと目が垂れて人懐っこい顔になる。そして良い匂いもする。お高い柔軟剤でも使っているのだろう。ふわりと薫るソレにドキドキするのは内緒だ。こんな可愛くも色っぽくもないオメガに言われても困るだろう。
俺はオメガ専用の学生寮に住んでいるが、オメガってだけで入居を断る所も多いから仕方なく学生寮だ。築40年のボロい寮でエアコンも古いため、夏はサウナみたいに暑く冬は冷蔵庫みたいに寒いというどうしようもない代物だった。図書館が空いている時間は図書館で勉強し、寮には寝に帰るだけの生活だ。今は夏なので蒸し風呂のようになった部屋で勉強なんて出来たもんじゃない。
そんな話を忠臣にしたら『ウチのマンションで勉強すれば良い。』とありがたいお誘いをいただいた。
忠臣の一人暮らしのマンションはとても学生とは思えない立派な物だった。コンシェルジュとかいう何でも屋みたいな人が常駐している。もちろん冷房もバッチリ効いて過ごしやすい。その日も俺はなんの躊躇もなくヤツのマンションに上がり込んでいた。
17
お気に入りに追加
885
あなたにおすすめの小説
幼馴染から離れたい。
じゅーん
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)
Oj
BL
オメガバースBLです。
受けが妊娠しますので、ご注意下さい。
コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。
ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。
アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。
ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。
菊島 華 (きくしま はな) 受
両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。
森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄
森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。
森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟
森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。
健司と裕司は二卵性の双子です。
オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。
男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。
アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。
その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。
この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。
また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。
独自解釈している設定があります。
第二部にて息子達とその恋人達です。
長男 咲也 (さくや)
次男 伊吹 (いぶき)
三男 開斗 (かいと)
咲也の恋人 朝陽 (あさひ)
伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう)
開斗の恋人 アイ・ミイ
本編完結しています。
今後は短編を更新する予定です。
可愛くない僕は愛されない…はず
おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。
押しが強いスパダリα ✕ 逃げるツンツンデレΩ
ハッピーエンドです!
病んでる受けが好みです。
闇描写大好きです(*´`)
※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております!
また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)
番いのαから逃げたいΩくんの話
田舎
BL
八木唯は冴えない平凡な高校生だった。
ただオメガ故に地位が低く、オメガを嫌う母親にも愛されない。
そんな彼が密かに憧れ片思いしていたのは数学教師の新野俊哉。
ただ、見ている… それだけでよかったはずなのに…
執着スパダリ系α×逃げたい不憫Ω
※オメガの地位が低く16歳になれば結婚できるシステムです。
※両思いですがどちらも拗らせてます
※最終的に妊娠描写はいるかも、です
アルファ嫌いの子連れオメガは、スパダリアルファに溺愛される
川井寧子
BL
オメガバース/オフィスラブBL/子育て/スパダリ/溺愛/ハッピーエンド
●忍耐強く愛を育もうとするスパダリアルファ×アルファが怖いオメガ●
亡夫との間に生まれた双子を育てる稲美南月は「オメガの特性を活かした営業で顧客を満足させろ」と上司から強制され、さらに「双子は手にあまる」と保育園から追い出される事態に直面。途方に暮れ、極度の疲労と心労で倒れたところを、アルファの天黒響牙に助けられる。
響牙によってブラック会社を退職&新居を得ただけでなく、育児の相談員がいる保育園まで準備されるという、至れり尽くせりの状況に戸惑いつつも、南月は幸せな生活をスタート!
響牙の優しさと誠実さは、中学生の時の集団レイプ事件がトラウマでアルファを受け入れられなかった南月の心を少しずつ解していく。
心身が安定して生活に余裕が生まれた南月は響牙に惹かれていくが、響牙の有能さが気に入らない兄の毒牙が南月を襲い、そのせいでオメガの血が淫らな本能を剥き出しに!
穏やかな関係が、濃密な本能にまみれたものへ堕ちていき――。
【完結】その家族は期間限定〜声なきΩは本物に憧れる〜
天白
BL
オメガバース。家族モノ。ほっこりハッピーエンドBL。R18作品。
~主な登場人物~
・須中藍時…24歳。男性のΩ。フリーター。あることがきっかけで、純の「ママ」として扇家で働くことになる。失声症を患わっており、手話と筆談で会話する。なぜか純の前でのみ、声を出して話すことができる。秀一の妻であるヒナに顔立ちが似ているらしい。身長は168㎝。
・扇秀一…31歳。男性のα。純の父親。大柄な男で強面だが、他人には優しく穏やかに接する。藍時の雇い主。仕事人間で一年前に妻に逃げられたと藍時に話す。身長は198㎝。
・扇純…4歳。秀一の息子。出会った当初から藍時をママと呼んでいる。歳のわりにしっかり者だが、まだまだ甘えん坊なママっ子。
〜あらすじ〜
恋人からの暴力により声を失い、心と身体に深い傷を負ったΩの青年・須中藍時は己の人生を悲観していた。人知れずして引っ越した場所では、頼れる家族や友人はおらず、仕事も長く続かない。
ある日、藍時は自分を「ママ」と呼ぶ迷子の少年・扇純と、その父親・扇秀一に出会う。失われたと思っていた声は、なぜか純の前では出せるように。しかしαの秀一に得体の知れない恐怖を感じた藍時は、彼らからのお礼もそこそこに、その場から逃げ出してしまう。
そんな二人の出会いから一週間後。またも職を失った藍時は、新たな仕事を求めて歓楽街へ訪れる。そこで見知らぬ男達に絡まれてしまった藍時は、すんでのところを一人の男によって助けられる。それは秀一だった。
気を失った藍時は扇家にて介抱されることになる。純は変わらず藍時のことを「ママ」と呼び、終始べったりだ。聞けば純の母親は夫である秀一に愛想を尽かし、家を出て行ってしまったという。藍時はそんな妻の顔に、よく似ているらしいのだ。
そしてひょんなことから提案される「家事代行ならぬママ代行」業。期限は純の母親が戻ってくるまで。
金も職もない藍時は、秀一からの提案を受けることに。しかし契約が交わされた途端、秀一の様子が変わってしまい……?
※別サイトにて以前公開していました自作「FAKE FAMILY〜その家族は期間限定!?〜」(現在は非公開)を改題、リメイクしたものになります。
Pixiv、ムーンライトノベルズ様でも公開中です。
伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜
にゃーつ
BL
大きなお屋敷の蔵の中。
そこが俺の全て。
聞こえてくる子供の声、楽しそうな家族の音。
そんな音を聞きながら、今日も一日中をこのベッドの上で過ごすんだろう。
11年前、進路の決まっていなかった俺はこの柊家本家の長男である柊結弦さんから縁談の話が来た。由緒正しい家からの縁談に驚いたが、俺が18年を過ごした児童養護施設ひまわり園への寄付の話もあったので高校卒業してすぐに柊さんの家へと足を踏み入れた。
だが実際は縁談なんて話は嘘で、不妊の奥さんの代わりに子どもを産むためにΩである俺が連れてこられたのだった。
逃げないように番契約をされ、3人の子供を産んだ俺は番欠乏で1人で起き上がることもできなくなっていた。そんなある日、見たこともない人が蔵を訪ねてきた。
彼は、柊さんの弟だという。俺をここから救い出したいとそう言ってくれたが俺は・・・・・・
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる