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「はい、皆さん。今日はお集まりいただきありがとうございます。」
恰幅の良い助産師の声でざわついていた会場が静かになった。
俺は相変わらず後ろから樹里に抱きついて腹を撫でている。
「今日は赤ちゃんをお迎えする準備やお母さんの身体に起こる変化、お父さんの役割や心の準備を学んで行きましょう。」
「「「はい。」」」
みんな真剣だ。樹里は鞄からペンを取り出してメモする準備をしている。
「樹貴のときは必死だったからあんまり覚えてないんだ。」
「そうか。ありがとな。産んでくれて、あんなに立派に育ててくれて。この子は二人で頑張ろう。」
「うん。樹貴もね。お兄ちゃんになるの張り切ってるから。」
助産日はホワイトボードで母体の変化や出産までの流れを説明してくれた。
妊娠、出産はとても神秘だ。特に男のオメガについては解明されていないことの方が多い。
オメガは安産が多いと聞くが、出産は何があるか分からない。
真剣に話を聞きながら樹里と産まれてくる子どもの無事を祈った。
「さあ、皆さん、今日はどうでしたか?もうすぐ可愛い赤ちゃんに会えます。最後に私から大事なことを言います。」
今日のメニューを全て終えたあと助産師が真面目な顔で俺たちを見渡した。
大事なこと?何だろう。
「今日集まった皆さんは番いのカップルや夫婦です。とても愛し合っていて仲が良いのも知っています。セックスは九ヶ月に入ったらやめて下さいね。早産の危険があります。パートナーを大事に思うなら我慢しましょう。産後も一ヶ月はダメですよ。セックス以外にもキスやハグなどで愛を確かめる方法はたくさんあります。ではこれで以上です。お疲れ様でした!」
全員キョトンとしている。
おそらく助産師は今日、これを言いたかったんだろう。
番いのカップルはラブラブだからな。俺たちだってつわりが終わってからは毎日している。きっとみんなもそうだ。
隣の修くんは唖然とした顔で助産師を見つめていた。
そうか、二カ月はセックスできないのか。
大丈夫だ。俺は樹里が居ればいい。助産師が言ったようにキスやハグをたくさんしよう。
二カ月くらい大丈夫だ。…たぶん。
それよりもショッキングな話があってそれが頭から離れない。
「慎一郎、どうしたの?さっきから黙って。」
帰りの車の中で俺は放心していた。
樹里もそれに気付いたようだ。
「いや、何でもない。と、とにかく身体に気を付けような。」
「うそ、なんかあったんでしょ?」
「え?いや、まぁ、その…、」
退院まで一週間もあるのかとさっき知った。
一週間も樹里と離れるなんて…。そりゃ毎日面会には行くけど、一週間も樹里と別々に寝るのか…。
ショックだ。耐えられないかもしれない。
でもこんなこと樹里に言ったら引かれるかも。
出産は大変だということは今日の話で改めて実感した。
それなのに一緒に寝られないのが辛いなんて、そんな子どもみたいなことを言えないだろ。
「どうしたの?ちゃんと言ってよ。」
そうだ。お互い嘘はつかないこと。言いたいことはきちんと言おうと決めんたんだ。
俺は意を決して樹里に伝えた。
「入院は一週間だろ?寂しくて…。樹里と一週間も離れるかと思うと、耐えられるか分からないんだ。」
「え…?そ、そっか。」
「ごめんな。樹里はそれどころじゃないのに。」
「ううん。でも面会には来てくれるんでしょ?」
「当たり前だ。毎日行くし、面会時間ギリギリまでいるつもりだ。」
「うん。僕も寂しくなったら電話やメッセージ送るよ。」
チラリと隣の樹里を見ると俯いているが顔が赤い。
「はぁ、樹里。そんな可愛い事言うなよ。」
早く家に帰ってイチャイチャしよう。
俺は寂しい気持ちも少し和らいで車を走らせた。
「産後はお母さんに来てもらうね。」
「そうだな。」
俺だけでも大丈夫だと思うが念のためだ。それに樹里の母親も楽しみしている。大事な一人息子の出産だ。
樹貴もおばあちゃんが来るって言って喜んでいた。
「リビングの隣の部屋に布団を敷いて、僕と赤ちゃんはそこで寝るよ。」
「え?一緒に寝ないのか?」
「だって夜中泣いてるし、慎一郎も樹貴も寝られなくなっちゃうよ。」
「そうか。寂しいな。でも夜泣きは俺も付き合うからな。」
「ふふ。ありがと。でも寂しいって、同じ家の中だよ?」
ソファーに座っている樹里にお茶を出して横に座る。
樹里は俺の肩にもたれてきた。
可愛いな。本当に幸せだ。
樹里は命懸けで子どもを産むんだ。俺も一週間離れるくらい頑張ろう。
「樹里、お腹は大丈夫か?」
顔にキスしながら優しく腹を撫でる。答えるように腹がぽこぽこと動いた。
「うん。赤ちゃんも元気だよ。」
「ああ、そうだな。でもまた愛し合うから少し寝ててもらわないと。」
「慎一郎…。助産師さんの話、聞いてた?」
「聞いてたよ。九ヶ月からダメなんだろ?まだ大丈夫だ。」
樹里のゆったりとした上着を脱がす。
「お腹大きいから恥ずかしいよ。」
「すごく綺麗だ。聖母マリアだな。」
ソファーだと樹里に負担がかかるので、抱き上げてベッドまで運んでたっぷり愛し合った。
恰幅の良い助産師の声でざわついていた会場が静かになった。
俺は相変わらず後ろから樹里に抱きついて腹を撫でている。
「今日は赤ちゃんをお迎えする準備やお母さんの身体に起こる変化、お父さんの役割や心の準備を学んで行きましょう。」
「「「はい。」」」
みんな真剣だ。樹里は鞄からペンを取り出してメモする準備をしている。
「樹貴のときは必死だったからあんまり覚えてないんだ。」
「そうか。ありがとな。産んでくれて、あんなに立派に育ててくれて。この子は二人で頑張ろう。」
「うん。樹貴もね。お兄ちゃんになるの張り切ってるから。」
助産日はホワイトボードで母体の変化や出産までの流れを説明してくれた。
妊娠、出産はとても神秘だ。特に男のオメガについては解明されていないことの方が多い。
オメガは安産が多いと聞くが、出産は何があるか分からない。
真剣に話を聞きながら樹里と産まれてくる子どもの無事を祈った。
「さあ、皆さん、今日はどうでしたか?もうすぐ可愛い赤ちゃんに会えます。最後に私から大事なことを言います。」
今日のメニューを全て終えたあと助産師が真面目な顔で俺たちを見渡した。
大事なこと?何だろう。
「今日集まった皆さんは番いのカップルや夫婦です。とても愛し合っていて仲が良いのも知っています。セックスは九ヶ月に入ったらやめて下さいね。早産の危険があります。パートナーを大事に思うなら我慢しましょう。産後も一ヶ月はダメですよ。セックス以外にもキスやハグなどで愛を確かめる方法はたくさんあります。ではこれで以上です。お疲れ様でした!」
全員キョトンとしている。
おそらく助産師は今日、これを言いたかったんだろう。
番いのカップルはラブラブだからな。俺たちだってつわりが終わってからは毎日している。きっとみんなもそうだ。
隣の修くんは唖然とした顔で助産師を見つめていた。
そうか、二カ月はセックスできないのか。
大丈夫だ。俺は樹里が居ればいい。助産師が言ったようにキスやハグをたくさんしよう。
二カ月くらい大丈夫だ。…たぶん。
それよりもショッキングな話があってそれが頭から離れない。
「慎一郎、どうしたの?さっきから黙って。」
帰りの車の中で俺は放心していた。
樹里もそれに気付いたようだ。
「いや、何でもない。と、とにかく身体に気を付けような。」
「うそ、なんかあったんでしょ?」
「え?いや、まぁ、その…、」
退院まで一週間もあるのかとさっき知った。
一週間も樹里と離れるなんて…。そりゃ毎日面会には行くけど、一週間も樹里と別々に寝るのか…。
ショックだ。耐えられないかもしれない。
でもこんなこと樹里に言ったら引かれるかも。
出産は大変だということは今日の話で改めて実感した。
それなのに一緒に寝られないのが辛いなんて、そんな子どもみたいなことを言えないだろ。
「どうしたの?ちゃんと言ってよ。」
そうだ。お互い嘘はつかないこと。言いたいことはきちんと言おうと決めんたんだ。
俺は意を決して樹里に伝えた。
「入院は一週間だろ?寂しくて…。樹里と一週間も離れるかと思うと、耐えられるか分からないんだ。」
「え…?そ、そっか。」
「ごめんな。樹里はそれどころじゃないのに。」
「ううん。でも面会には来てくれるんでしょ?」
「当たり前だ。毎日行くし、面会時間ギリギリまでいるつもりだ。」
「うん。僕も寂しくなったら電話やメッセージ送るよ。」
チラリと隣の樹里を見ると俯いているが顔が赤い。
「はぁ、樹里。そんな可愛い事言うなよ。」
早く家に帰ってイチャイチャしよう。
俺は寂しい気持ちも少し和らいで車を走らせた。
「産後はお母さんに来てもらうね。」
「そうだな。」
俺だけでも大丈夫だと思うが念のためだ。それに樹里の母親も楽しみしている。大事な一人息子の出産だ。
樹貴もおばあちゃんが来るって言って喜んでいた。
「リビングの隣の部屋に布団を敷いて、僕と赤ちゃんはそこで寝るよ。」
「え?一緒に寝ないのか?」
「だって夜中泣いてるし、慎一郎も樹貴も寝られなくなっちゃうよ。」
「そうか。寂しいな。でも夜泣きは俺も付き合うからな。」
「ふふ。ありがと。でも寂しいって、同じ家の中だよ?」
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