オメガの香り

みこと

文字の大きさ
上 下
20 / 26

19

しおりを挟む
「樹里、身体は平気か?少しシートを倒そう。」

「大丈夫だよ。それより学校どうだった?久しぶりでしょ。」

「ん?まぁな。あとは卒業するだけだ。こんな時期だから卒業式もなさそうだ、」

「そっか。」

ゆっくり車が動き出した。

「あのさ、慎一郎。」

「うん?何だ?」

僕は家を建てることを知ったときからずっと思っていたことを聞いてみた。

「マイホームはすごく嬉しいんだけど、お金はどうするの?」

「ああ、それか。心配するな。」

チラリと僕を見て微笑んだ。

「いや、心配するよ。だってすごい家だったよね。場所だって高級住宅地だよ。」

「そうだな。でも大丈夫だ。俺は金は腐るほどあるんだ。」

「え…。」

確かに慎一郎の実家はお金持ちだけど、オメガとの結婚はあまり歓迎されていない。
慎一郎はほとんど家に居てパソコンで仕事をしているみたいだけどそんなに儲かるのかな。

「俺の年収、教えてやろうか?」

「年収?」

「ああ。去年は三億だ。今年はもっと上がると思う。年商じゃないからな。」

「……。」

「樹里?聞いてるか?」

「うん。びっくりした。」

「だからおまえが心配することは何もない。」

「…分かった。」

想像以上の額にびっくりだ。
慎一郎は上機嫌で、鼻歌を歌っている。

「そうだ、指輪どうする?樹里は希望はあるか?欲しいブランドとかあるか?」

「うーん、特にないけど…。」

「大学の友達から良いところを紹介されたんだけど、そこに行ってみないか?」

「どういうお店?」

「オーダーメイドで作ってくれるんだ。値段はするけど、デザインも品質もすごく良いって。人気があるみたいだ。」

「うん。行ってみたい。」

「じゃあ予約しておく。」

僕たちはそのままスーパーに寄って家に帰った。



「樹里、疲れただろ?足をマッサージしてやるからここに横になってくれ。」

「ありがとう。」

ソファーに横になると足をマッサージしてくれる。慎一郎にマッサージしてもらってから寝てるときに攣らなくなった。

「慎一郎、いろいろありがとう。」

「俺の方こそ樹里に感謝してるんだ。」

「え?どうして?」

「俺は今、めちゃくちゃ幸せだ。可愛い番いと息子、それにもう一人子どもが増える。でも樹里にはいろんなことを諦めてもらったんだ。感謝してもしきれない。」

「そんな…。僕が自分で選んだことだよ。」

「ああ。それでも樹里に感謝してる。俺の子供を産んでくれて、俺を選んでくれてありがとう。」

「慎一郎…。」

涙がポロリとこぼれた。

「泣くなよ。」

抱きしめて頭を撫でてくれる。

「慎一郎、大好きだよ。」

「俺もだ。」

いつの間にか慎一郎の手はマッサージを止めて僕のシャツの裾から中に忍び込んでくる。
その大きな手は優しくお腹を撫で、流れる涙は舐め取られた。

「ふふ、擽ったい。」

「樹里は本当に可愛いな。はぁ、子どもが産まれたらまた激しく抱きたい。」

「え、怖いよ。」

「ん?いつも喜んでただろ?気持ち良くて泣いてたくせに。」

「もう、知らない!」

「あーもう、めちゃくちゃ可愛い。」

ガバッと抱きついてきてちゅっちゅっと態と音を立ててキスしてくる。
そのまま舌を絡ませて吸ったり舐めたりして身体中舐め回され、優しく抱かれた。



「ここ?」

「ああ、そうみたいだな。」

ビルの一階の控えめな佇まいの店だ。
『jewelry K』と書いてある小さな看板が出ているその中に入った、

「いらっしゃいませ。」

「予約してある壬生です。」

「お待ちしておりました。オーナーの貴島です、こちらにどうぞ。」

案内されたソファーに座る。
周りを見渡すとジュエリーショップには見えない。おしゃれなカフェかアトリエに見える。

「失礼ですが、番い様はご懐妊されていますか?」

「そうなんです。樹里は妊娠してるんです。」

慎一郎が僕のお腹を撫でながら何故が自慢げにオーナーさんに伝えた。

「おめでとうございます。ただ、妊娠中だと少し浮腫んだり、ふっくらされたりしますのでサイズ選びが難しいんですよ。」

そういえば体重は変わらないけどいつもより浮腫みやすい。

「え?じゃあ指輪はまだ無理ですか?」

「いいえ。サイズは2サイズまで変更可能です。奥様は妊娠してからどのくらい体重が増えましたか?」

「あ、えっとほとんど増えてません。つわりが酷くて初期の頃に痩せてしまって…。」

「そうなんです。全然食べなくて。最近やっと食べられるようになったんだよな?」

僕は小さく頷いた。

「そうですか。手を拝見しても?」

「あ、はい。」

オーナーさんに左手を差し出すとそっと握られた。さすったり揉んだり軽く押したりしている。

「もういいですか?」

イライラした声の慎一郎が僕の手をオーナーさんからサッと取り上げた。

「ちょっと、慎一郎。オーナーさん、すいません。」

「いいえ。こちこそ失礼しました。」

オーナーさんは全く気にしていない様子でにっこりしている。慎一郎は僕の左手に頬擦りしてキスをし始めた。

「な、何してるの?」

「他のヤツの匂いがついた。」

「やめてよ。恥ずかしいよ…。」

「ダメだ。」

手を引こうとするが離してくれない。それどころか舐め回すようにキスをする。

「旦那様、大変申し訳ありません。どのくらい浮腫んでいるのか見せて頂いたんです。」

「俺の樹里だ。」

「分かってるよ…。本当にもう。」

されるがままになりながらオーナーさんに何度も頭を下げた。

「番い様の前で、私がいけないんです。でも本当に愛されているんですね。」

「当たり前だ。俺の大事な番いだ。」

散々キスをして慎一郎の気が済んだところで指輪のデザインを決めた。

「今のサイズのままお作り致しましょう。先ほども言いましたがサイズ変更は可能です。でも妊娠後期になったら念のため外して頂いた方がいいです。」

「え?外すんですか?」

また慎一郎がムッとした声をだした。

「ええ。出産の時は外すように言われますよ。その時浮腫んで抜けなくなると指輪を切らないといけなくなります。」

「へぇ、そうなんですね。」

「はい。外した後は皆さんネックレスに通して首から下げたりしています。ネックレスのチェーンもご覧になりますか?」

「見せてくれて。樹里、一応用意しておこう。」

出来上がりは二ヶ月後だから指輪をはめられないかもしれない。でも世界でひとつだけのデザインとメッセージ入りのペアリングはすごく楽しみだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

美形な兄に執着されているので拉致後に監禁調教されました

パイ生地製作委員会
BL
玩具緊縛拘束大好き執着美形兄貴攻め×不幸体質でひたすら可哀想な弟受け

【完結】二年間放置された妻がうっかり強力な媚薬を飲んだ堅物な夫からえっち漬けにされてしまう話

なかむ楽
恋愛
ほぼタイトルです。 結婚後二年も放置されていた公爵夫人のフェリス(20)。夫のメルヴィル(30)は、堅物で真面目な領主で仕事熱心。ずっと憧れていたメルヴィルとの結婚生活は触れ合いゼロ。夫婦別室で家庭内別居状態に。  ある日フェリスは養老院を訪問し、お婆さんから媚薬をもらう。 「十日間は欲望がすべて放たれるまでビンビンの媚薬だよ」 その小瓶(媚薬)の中身ををミニボトルウイスキーだと思ったメルヴィルが飲んでしまった!なんといううっかりだ! それをきっかけに、堅物の夫は人が変わったように甘い言葉を囁き、フェリスと性行為を繰り返す。 「美しく成熟しようとするきみを摘み取るのを楽しみにしていた」 十日間、連続で子作り孕ませセックスで抱き潰されるフェリス。媚薬の効果が切れたら再び放置されてしまうのだろうか? ◆堅物眼鏡年上の夫が理性ぶっ壊れで→うぶで清楚系の年下妻にえっちを教えこみながら孕ませっくすするのが書きたかった作者の欲。 ◇フェリス(20):14歳になった時に婚約者になった憧れのお兄さま・メルヴィルを一途に想い続けていた。推しを一生かけて愛する系。清楚で清純。 夫のえっちな命令に従順になってしまう。 金髪青眼(隠れ爆乳) ◇メルヴィル(30):カーク領公爵。24歳の時に14歳のフェリスの婚約者になる。それから結婚までとプラス2年間は右手が夜のお友達になった真面目な眼鏡男。媚薬で理性崩壊系絶倫になってしまう。 黒髪青眼+眼鏡(細マッチョ) ※作品がよかったら、ブクマや★で応援してくださると嬉しく思います! ※誤字報告ありがとうございます。誤字などは適宜修正します。 ムーンライトノベルズからの転載になります アルファポリスで読みやすいように各話にしていますが、長かったり短かったりしていてすみません汗

記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太
ファンタジー
 深淵から漏れる生物にとって猛毒である瘴気によって草木は枯れ果て、生物は病に侵され、魔物が這い出る災厄の時代。  浄化の神の神殿に仕える瘴気の影響を受けない浄化の騎士のガルは女神に誘われて瘴気を止める旅へと出る。  近くにあるエルフの里を目指して森を歩いていると、土に埋もれた記憶喪失の転生者トキと出会う。  彼女は瘴気を吸収する特異体質の持ち主だった。

断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy
BL
病魔に倒れ命を散らした僕。あんなこともこんなこともしたかったのに…。 と思ったら、あるBLノベルゲー内の邪魔者キャラに転生しちゃってた。 断罪不可避。って、あれ?追い出された方が自由…だと? よーし!あのキャラにもこのキャラにも嫌われて、頑張って一日も早く断罪されるぞ! と思ったのに上手くいかないのは…何故? すこしおバカなシャノンの断罪希望奮闘記。 いつものごとくR18は保険です。 『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』書籍化となりました。 7.10発売予定です。 お手に取って頂けたらとっても嬉しいです(。>ㅅ<)✩⡱

ヒーローは洗脳されました

桜羽根ねね
BL
悪の組織ブレイウォーシュと戦う、ヒーロー戦隊インクリネイト。 殺生を好まないヒーローは、これまで数々のヴィランを撃退してきた。だが、とある戦いの中でヒーロー全員が連れ去られてしまう。果たして彼等の行く末は──。 洗脳という名前を借りた、らぶざまエロコメです♡悲壮感ゼロ、モブレゼロなハッピーストーリー。 何でも美味しく食べる方向けです!

運命のαを揶揄う人妻Ωをわからせセックスで種付け♡

山海 光
BL
※オメガバース 【独身α×βの夫を持つ人妻Ω】 βの夫を持つ人妻の亮(りょう)は生粋のΩ。フェロモン制御剤で本能を押えつけ、平凡なβの男と結婚した。 幸せな結婚生活の中、同じマンションに住むαの彰(しょう)を運命の番と知らずからかっていると、彰は我慢の限界に達してしまう。 ※前戯なし無理やり性行為からの快楽堕ち ※最初受けが助けてって喘ぐので無理やり表現が苦手な方はオススメしない

クズ男はもう御免

Bee
BL
騎士団に所属しているレイズンは、パートナーのラックに昼間から中出しされ、そのまま放置されてしまう。仕方なく午後の演習にも行かず一人で処理をしていると、遅刻を咎めにきた小隊長にその姿を見られてしまい、なぜだか小隊長が処理を手伝ってくれることに。 騎士ラック(クズ、子爵家三男)×平騎士レイズン(25才)の話から始まります。 恋人であるラックに裏切られ、失意の中辿り着いた元上官の小隊長ハクラシス(55才、ヒゲ、イケオジ、結婚歴あり)の元で癒やされたレイズンが彼に恋をし、その恋心をなんとか成就させようと奮闘するお話です。 無理矢理や輪姦表現、複数攻めありなので、苦手な方は注意してください。 ※今回はR18内容のあるページに印をつけておりません。予告なしに性的描写が入ります。 他サイトでも投稿しています。 本編完結済み。現在不定期で番外編を更新中。

処理中です...