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 引っ越しとこれから。

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『あっ、蓮太郎さん。これ持って帰ってください』
彼女の家から帰ろうとした時に彼女が鍵を手渡してきた。
だが躊躇ってしまう。
『この家の鍵です。これからここに住むんですから持っていない方がおかしいですよね?』
瑠奈は見かねて言葉を続けた。

だが蓮太郎が一向に動く気配がない為顔を覗き込んでくる。
『蓮太郎さん?どうかなさいましたか?』
『その。住み始めてからで良いんじゃないかな?不安とかないの?』

ただの顔見知りに自分の家の鍵を渡す。それは自らするべきことではないだろう。
そう思い聞いたのだが彼女の気持ちは変わらないようだ。

『不安はないですね。私は蓮太郎さんがどんな人かを理解した上で渡しているつもりです。それとも蓮太郎さんは私の下着を盗みますか?』

キョトンとしながら淡々と告げてきた内容に胸がドキリと跳ねる。彼女に信頼していると言われてしまった。
だがその後に続いた言葉に関してはしっかりと否定させてもらう事にする。

『下着なんて絶対に盗まないよ。盗むわけないじゃないか』
大人として、男としてしっかりと否定したのだが瑠奈の顔はどんどんと暗くなっていく。

『下着なんて...ですか。そーですか。私には興味ないと言われているようでムカつきますね』
怒っていた。だが蓮太郎はどうしたらいいのか分からず、ただ彼女の次の出方を伺う事しかできない。

『蓮太郎さんは私には魅力がないと言いましたね?かなりムカついてしまったので、覚悟しててくださいね?』
選択を間違えた。彼女はにっこりと小悪魔じみた笑みを浮かべ、舐めるような目付きで僕をみている。

『ごめんなさい』
彼女の視線を受け、ただ謝る事しか出来ずに逃れるように彼女に別れを告げ玄関を開ける。
すぐさま外へ出ようとすると腕を取られてしまう。

彼女は蓮太郎の腕を取ったまま、ニッコリと微笑むと、姿勢を正してから口を開く。
『改めまして、私は篠原 瑠奈(しのはら るな)近所の高校に通う3年生です。よろしくお願いします。蓮太郎さん』
『ああ、こちらこそよろしくね』
しっかり頭を下げてから再度彼女へと目を向ける。

『浮気だけは許しませんからね』
『???』
『それでは、引越し準備頑張ってください』
言い終えると同時に腕が解放させる。
『あ、ありがとう』
開きっぱなしにしていた扉をくぐり抜け、外へと逃げ込む。

『浮気ってなんの事だ?最近のJ Kは分からないな』
彼女が最後に発した言葉の意味が理解できずにひとつ呟いてしまう。

『考えても分かるわけないし帰ろ』
こうしてやっとの思いで帰路につくのだった。



***********************

『瑠奈ちゃん。どうしたの?』
昼休み、友人の石川 夢乃(いしかわ ゆめの)がランチバックを片手に声をかけて来た。

夢乃は数少ない瑠奈の友人だ。
小柄な体躯に野暮ったいボブカット。
大きな瞳は伸ばした前髪と、眼鏡で隠していて全体的に大人しい印象の少女だ。人一倍他人を思いやれる性格がとにかく魅力的であり、学校生活の殆どをこの少女と共にしている。

他人と関わるのが嫌な自分でもこの心優しい友人には心を開いている。

『ん?なにもないけど...』
『うそっ。なんか一人で楽しそうだったよ?』
思い当たる節はあるのだが、素直に言えることでは無い。
『本当に何も無いよ。お弁当食べよっか』
上手く誤魔化し、お弁当をバックから取り出す。

(早く帰りたいな...)
ふとした瞬間に思ってしまう。
いや、今日一日中この事ばかり考えてしまっている。
そのせいで時間が早く進んだり、逆に進まなかったりと、振り回されてしまっている。

(引っ越しの手伝いするって言ったら嫌がられちゃうかな...)
『瑠奈ちゃん?本当どうしたのよ』
『えっ?ごめんね、疲れてるのかも...』
考え込んでいると再度顔を覗き込まれてしまう。
自分一人でこのまま考え込んでいても埒があかないので友人に相談してみることにした。

『ねえ、夢乃は好きな人っている?』
『好きな人?つまり瑠奈ちゃんは今好きな人の事で悩んでいるのね?分かる。その気持ち。でも私は参考にならないかな。好きな人二次元だし...でも毎日一緒に居れるから幸せだよ。そうそう、今はねこの人を推してるの。もうビジュが凄すぎて...』
ここまでが一息である。
話しながらスマホを取り出し、ホーム画面に設定してる想い人まで見せつけて来ている。

『あ、うん...なんか凄いね?』
完全に聞く相手を間違えてしまった。
その後は夢乃が語り出したり、突然こちらの相手のことを聞いて来たりと、目まぐるしい昼休みを過ごした。


***********************




『本当に物がないな。もう整理が終わった』
1人纏めた荷物を見下ろし呟く。
時刻は14時。瑠奈の家から帰ってきて6時間ほど経過したところで必要な物と不要なものの分別が終わった。

不要なもので捨てられるものは袋に入れアパートのゴミ捨て場へと運んでいる時だった。
『蓮太郎くんこんにちわ。引っ越し大丈夫そうかしら?』
大家である静江さんから声をかけられ、一通りこれからのことを話す。
もちろん、瑠奈が高校生とゆーことは伏せてだ。

『良かった。心配だったのよ。この短期間じゃ引っ越し無理だと思ったから私の家で荷物だけでも引き取ろうか提案しようとしてたのよ』
笑顔な静江さん。その優しさが身に染みる。
『本当にありがとうございます。ご迷惑おかけしました』
『気にしないでね?それじゃ引っ越し準備頑張ってね』
そう言い残し静江さんは去っていった。

自分が気付いていなかっただけで、まだ蓮太郎の事を気にしてくれている人が何人かいる。それだけで胸が暖かくなる。
(西川への復讐のことなんて考えなくなったな)
改めて気付いたことで引っ越し準備に精を出すのだった。



(ブブッ)
スマホにメッセージが来たので確認すると差出人は瑠奈だった。
今朝彼女に提案され交換していたのだ。

瑠奈『蓮太郎さん引っ越し準備順調ですか?』
やはり彼女はちゃんと蓮太郎のことを気にしてくれている。嬉しさのあまりつい顔が綻ぶ。
蓮太郎『うん。あとは必要な物を運ぶのと粗大ゴミを外に出すだけかな』
彼女に返信をするとすぐさま既読が付き返信がくる。

瑠奈『もし良ければ、今学校終わったので手伝いに行っても良いですか?』

『えっ.....?』
驚きのあまり声まで出てしまった。瑠奈がこの家へ来る?やはり彼女は危なっかしい。1人男の家に行くのは危険だ。

だがこれも蓮太郎を信頼してくれているからだろう。
ただ瑠奈と会話をするだけで荒れていた蓮太郎はどんどんと癒されている。
その後了承の旨をメッセージで送り、引っ越し準備を進めていくのだった。



『蓮太郎さんお待たせしました』
『来てくれてありがとうね。瑠奈ちゃん』
自宅のアパートの場所と部屋番号をメッセージで伝えていたので1人でここまできてくれた。


『お部屋綺麗ですね』
瑠奈を部屋にあげると部屋の中を見渡し言われる。
『物がないだけだよ?』
言ってて悲しくなるが本当に物が無い。
衣類と布団とパソコン。だけしか瑠奈の家に持って行く物がない程だ。
『それでもガチャガチャしてるよりは好感を持てますよ』
笑顔の彼女に励まされ2人で一度腰を下ろす。

『蓮太郎さん。こちらの書類に必要事項を記載してください。こちらの書類はこれだけです』
朝の段階で必要な書類をもらってきてくれていた。
『分かった。今書いちゃうね』
書類を受け取り記載していく。が一点非常に困る質問がある。
世帯主との間柄。勿論だが店員とお客などでは済まされない。

『瑠奈ちゃんここはなんで書こうか...』
『どれですか?』
蓮太郎が問いかけた為、瑠奈が覗き込む。
すぐ目の前に彼女の頭があり、ドキドキとしてしまう。が、蓮太郎の気持ちなど他所に淡々と告げられる。

『親戚で良いんじゃ無いですか?流石に調べられませんよ』
『それしかないよねえ』
こうして無事に問題が解決した。
『私粗大ゴミのシール貼ってきちゃいますね』
『ごめん。助かるよ』
彼女はアルバイトの時同様働き者であり、気遣いができる子だった。

瑠奈が蓮太郎のことを理解してる。と同様に自分もある程度瑠奈のことを理解できている。
それがこそばゆくも妙に心地よかった。
そんなことを考えていたところで突如緊急事態が訪れてしまった。

『蓮太郎さん?これは処分しちゃっていいですよね?』
なにやら彼女に似合わず強気な言葉が聞こえ振り向くと両手に西川との写真を入れた写真立てを抱えていた。

見るのも憚られた為伏せることしか出来ていなかった。こうなるのであれば捨ててしまえば良かった。後悔ばかりが募る。
『うん。捨てる。捨てたいんだけど見るのも怖かったんだ』
『だと思いましたよ。私の方で処分しておきます』

瑠奈には西川との出会いから交際中のことも話していた。どれだけ蓮太郎が彼女を好きだったかを分かっていてくれたからこそ今日来てくれたのかもしれない。

『ありがとう瑠奈ちゃん。本当に』
ただ精一杯に感謝を伝え、2人で引っ越し準備に取り掛かるのだった。



『蓮太郎さん夜ご飯どうしますか?』
言われて時計を確認すると時刻は19時になっていた。少しお腹も空いている。
『僕の家何もないから出前でいいかな?』
蓮太郎は一人暮らしを始めてから料理をしたことがない。加えて制服姿の彼女と外食はリスクが高すぎる。
出前以外に選択の余地がないのだ。

『そーですね。ウーバーしましょう』
彼女は嬉しそうに有名出前アプリの名前を口にしている。黒地に緑文字の大きなリュックを背負った配達員さんをよく街で見る。
ちなみに蓮太郎は休日に良く頼んでいる常連である。

『瑠奈ちゃん好きなの頼んで良いからね。もちろんお金は僕に出させてね』
『やった。ちょっと待っててくださいね』
鼻歌を歌いながらキラキラした瞳でスマホを見つめる彼女。
一つ気になったことを問いかける。

『瑠奈ちゃんはウーバーあんまり使わないの?』
『はい。アプリは登録したんですけど、普段から自炊してるので使う機会が無かったですね』
『.............そっか』
女子高生の食生活を侮りすぎていた為に自爆してしまった。
自分の情けなさが浮き彫りになり俯いていると瑠奈は優しく声をかけてくる。

『でも、これからは蓮太郎さんもウーバーさせませんからね?私が作るからしっかりと食べてください』
『..........えっ?いいの...?』
『はいっ』(胃袋から掴むしかないもん)
返事以降は聞き取れなかった。
正直に言うと聞く気がなかった。

なぜなら、これから毎日美少女J Kの手作り料理が食べられる。世の中にこんなに幸せな独身サラリーマンが他にいるか?と叫びたいほどだ。

けれど、当然相応の、いや、それ以上の危険を孕んでいる。
そのことについて一度しっかり話し合わないとな。

そう決意し彼女の選んだ店舗で2人分の料理を注文して今日の引っ越し準備は終了した。



『お寿司久しぶりです。ありがとうございます』
『さあ、好きなの食べてよ。今日のお礼なんだから』
結局、瑠奈が選んだのはス●ローだった。

どうせならと、回らないお寿司屋さんのテイクアウトセットを提案したのだが『私ここが良いんです』と譲らなかった。
そして、特に気にすることもなく2人分注文したのだ。



『うーん。やっぱりこれが一番好きなんですよね』
ニコニコ笑顔の彼女の片手にはマヨコーンが握られている。
確かに美味しいが。一番がこれか...と絶妙に判断しづらい。
だが彼女はすごい幸せそうにコーン食べている。

『ねぇ瑠奈ちゃん。もし良かったらコーン一つくれないかな』
今までそこまで興味はなかった。だが彼女の表情を見ていたらついつい食べたくなってしまう。
『良いですよ。はい、あーーーん』
『..........?』

なぜ今僕の目の前に彼女が箸で摘んだコーンがあるのだろう。ぼーっとしてしまうと瑠奈に促される。

『蓮太郎さん。早く食べてくださいよっ』
『あっ。うん。そう、だね』
ゆっくりと口を開き頬張る。
恥ずかしすぎて俯き、必死に顔の熱を覚ます。
僕の顔は今絶対に真っ赤である。こんな顔を彼女に見せる事はできないのだ。

『ありがとう。コーン美味しいね。僕も今度から何個か頼もうかな』
少し落ち着いたところで顔を上げ彼女へと目を向ける。するとそこに、顔を赤くしている瑠奈がいた。

『瑠奈ちゃん?』
『は、はいっ?』
気になり声をかけると慌てた様子の彼女。
俯いていた為、先程の状況が分からない。
それに彼女は体調が良くないのかもしれない。これに関しては聞くしかない。

『体調悪かったりはする?』
『いえ、元気ですよ?』
らしい。ストレートに聞いてみるしかない。
『顔が少し赤いからさ、熱があるんじゃないのかと思ってね?』
『あ。言われてみれば、少し暑い?かもです』
バタバタとしながらも応えてくれた。
席を立ち上がり窓を開ける。言われてみるとたしかに少し暑かった。
蓮太郎の場合は恥ずかしさからだったが。


現在蓮太郎は一人でテレビを見ている。瑠奈が食べ終えた途端に片付けをやってくれたからだ。
勿論蓮太郎が名乗り出たのだが、お金を出してくれたのでと頑なに譲ってくれなかった。

彼女は真面目で仕事熱心なので納得ではあるのだが、本音は自分でしたかった。
これから彼女に迷惑をかけていくのだ、どんどん返していかなければいつか返しきれなくなってしまうのが怖いのだ。

『蓮太郎さん。今日どうしますか?』
『ん?』
キッチンから戻って来た彼女に問われるが、何についてかがサッパリだ。
するとすぐに瑠奈が口を開く。

『先程送ってくださると言っていたので、折角なら荷物を少しでも乗せて行って、そのまま家に泊まりますか?』
『いや...』
『蓮太郎さん...』

口を開いた途端に瑠奈に被せられてしまう。
『私としては早く蓮太郎さんに慣れて欲しいので泊まっていただきたいです』
『そう、だね。そうさせてもらうね』

こうしてお泊まりが決定してしまった。

衣類とパソコンを後部座席へと詰め込み、運転席へと乗り込む。
『蓮太郎さんの車カッコいいですね』
『そーかな?普通だと思うよ?』
助手席で目を輝かせている瑠奈へと返事をしたのだが全然聞いていない。

『瑠奈ちゃんはあまり車に乗らないの?』
あまりにも子供らしくはしゃぐ彼女へつい口にしてしまった。
『そう、ですね。かなり久しぶりです』
言い終えた彼女は途端に表情を曇らせてしまう。
(絶対に間違えた)そう確信し、一つ提案する。

『もし良かったらさ、今度瑠奈ちゃんの家で必要なものを買いに行くから着いてきてくれないかな?もちろん車で行くよ』
提案すると、すぐさま表情を明るくする。
『はいっ。是非お願いします』
こちらがお願いしているのに、お願い返しをされてしまった。

今までは働いている、大人びた瑠奈しか見たことが無かった。だが今日1日だけでこんなにも可愛らしい彼女を知れた。
(これからもっと知れると良いなぁ)
と、無意識に考えてしまう。

『蓮太郎さんどうしたんですか?』
瑠奈が心配そうに聞いてきたが応えられない。君のことをこれからもっと知りたい。なんてとてもじゃないが口にできない。
『何でもないよ。帰ろっか』
自然と口から溢れた言葉に自分自身驚いたが、しっくりくる。
そう実感し、車を走らせるのだった。




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最後まで読んでいただきありがとうございます。


作者のモチベになりますので、よろしければお気に入り、コメントなどお待ちしております。

次回の更新、お待ちくださいませ。
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