1 / 5
Side 菫
しおりを挟む
「菫(すみれ)。あんた、凛(りん)と仲良いわね」
昼休み……親友の美樹(みき)から不意に言われて、ドキッとした。
その『仲良い』ってきっと、『友達』としてのことを言われてるんだろう。だけれども、彼女のことを「カッコいい……」って思い始めている私は何だか、変に意識してしまう。
「うん、仲良いよ。小学生の頃からクラスメイトだったし、剣道部でも一緒だし」
「そっか、いいなぁ……」
美樹は目を細めて、本当に羨ましそうに私を見た。
「あの娘、すっごく綺麗でカッコいいんだけど、完璧すぎて近寄りにくいのよね。剣道でも春季大会、優勝したみたいだし」
その春季大会……実は私も出た。そして三回戦で凛と当たって勝てるはずもなく、ストレートに二本負けしたんだ。
でも、大会で優勝したんだし凛にとっては嬉しいことのはずなんだけど……その試合の後から、どういう訳か、私に対する凛の態度が素っ気ない。そのことを思い出した私は、思わず溜息が出そうなのを飲みこんだ。
「菫?」
「あ、ごめん。ちょっと一瞬、考え事してた」
「え、考え事って、一瞬でやるもの? 相変わらず、菫って不思議ね」
「へへっ、ごめん」
苦笑いを向ける美樹に私はチラッと舌を見せて、先程の話の続きをした。
「そうね……確かに凛って、近寄りがたいオーラも出しているかも知れないけど。話してみたら面白い娘だし、普通に仲良くなれると思うよ」
「それはさぁ、あんたが絶世の美少女だから、あのイケメン美少女とも釣り合うんでしょ。透き通るような白い肌が儚げで……私、あんたに話しかけるのも、勇気要ったもん」
「え……そんなことないよぉ。むしろ、私の方がクラスに溶けこめるか不安だったし……美樹が話しかけてくれて、嬉しかったよ」
そう言ってにっこりと笑うと、美樹は「もうまた、この娘はぁ」なんて言って真っ赤になった。
だけど……私がクラスに溶け込めるか不安だったというのも、美樹が話しかけてくれて嬉しくてほっとしたのも、決して嘘ではなかった。
幼い頃に腎臓の病気を患って、小学校にもろくに通えていなかった私は、中学でクラスに馴染むことができるか、本当に不安だった。そんな私に、凛以外で真っ先に声を掛けてきてくれたのが美樹なのだ。
そのことを思い出して……私は彼女の瞳を見つめて、にっこりと微笑みかけた。
「そうやって照れるところも……大好きよ、美樹」
すると……彼女はまるで、瞬間湯沸かし器のスイッチが入ったみたいに『プシュー……』と言って、トマトみたいに真っ赤になって倒れこんだ。
「ちょ……美樹! 大丈夫!?」
「菫……あんたのそれ、殺人的……。自分が凶器だってこと、もっと自覚なさいよ」
「え、凶器? 私が!?」
何が何だか分からない私に、彼女は「う~」と言って、さらに頭を抱え込んだのだった。
昼休み……親友の美樹(みき)から不意に言われて、ドキッとした。
その『仲良い』ってきっと、『友達』としてのことを言われてるんだろう。だけれども、彼女のことを「カッコいい……」って思い始めている私は何だか、変に意識してしまう。
「うん、仲良いよ。小学生の頃からクラスメイトだったし、剣道部でも一緒だし」
「そっか、いいなぁ……」
美樹は目を細めて、本当に羨ましそうに私を見た。
「あの娘、すっごく綺麗でカッコいいんだけど、完璧すぎて近寄りにくいのよね。剣道でも春季大会、優勝したみたいだし」
その春季大会……実は私も出た。そして三回戦で凛と当たって勝てるはずもなく、ストレートに二本負けしたんだ。
でも、大会で優勝したんだし凛にとっては嬉しいことのはずなんだけど……その試合の後から、どういう訳か、私に対する凛の態度が素っ気ない。そのことを思い出した私は、思わず溜息が出そうなのを飲みこんだ。
「菫?」
「あ、ごめん。ちょっと一瞬、考え事してた」
「え、考え事って、一瞬でやるもの? 相変わらず、菫って不思議ね」
「へへっ、ごめん」
苦笑いを向ける美樹に私はチラッと舌を見せて、先程の話の続きをした。
「そうね……確かに凛って、近寄りがたいオーラも出しているかも知れないけど。話してみたら面白い娘だし、普通に仲良くなれると思うよ」
「それはさぁ、あんたが絶世の美少女だから、あのイケメン美少女とも釣り合うんでしょ。透き通るような白い肌が儚げで……私、あんたに話しかけるのも、勇気要ったもん」
「え……そんなことないよぉ。むしろ、私の方がクラスに溶けこめるか不安だったし……美樹が話しかけてくれて、嬉しかったよ」
そう言ってにっこりと笑うと、美樹は「もうまた、この娘はぁ」なんて言って真っ赤になった。
だけど……私がクラスに溶け込めるか不安だったというのも、美樹が話しかけてくれて嬉しくてほっとしたのも、決して嘘ではなかった。
幼い頃に腎臓の病気を患って、小学校にもろくに通えていなかった私は、中学でクラスに馴染むことができるか、本当に不安だった。そんな私に、凛以外で真っ先に声を掛けてきてくれたのが美樹なのだ。
そのことを思い出して……私は彼女の瞳を見つめて、にっこりと微笑みかけた。
「そうやって照れるところも……大好きよ、美樹」
すると……彼女はまるで、瞬間湯沸かし器のスイッチが入ったみたいに『プシュー……』と言って、トマトみたいに真っ赤になって倒れこんだ。
「ちょ……美樹! 大丈夫!?」
「菫……あんたのそれ、殺人的……。自分が凶器だってこと、もっと自覚なさいよ」
「え、凶器? 私が!?」
何が何だか分からない私に、彼女は「う~」と言って、さらに頭を抱え込んだのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

境界のレジリエンス
兵藤晴佳
恋愛
大学を卒業した後、いわゆるUターン就職してから4年になる。
同居している両親のいいつけで、隣家から垣根を越えてくる枝の始末にかかった俺……生田費人(いくた ちかひと)の前に現れたのは、高校時代に顔見知りだった漫画家志望のオタク中学生、興村紹子(おきむら しょうこ)だった。
彼女との間には、ひとりの女性をめぐる確執がある。
女川績(めかわ つむぎ)。
頭脳明晰、容姿端麗な女子剣道部員。
いつも世界に目を向けていて、誰よりも早く行動を起こす。
そんな彼女が卒業式の答辞も読まずに俺たちの前から姿を消したのは、つらい思い出のひとつだった。
その原因を作った紹子は、俺に追及されるままに績を探し求める。
績はなぜ消えた?
どこに行った?
紹子はその過去を蒲松齢『聊斎志異』めいた物語に変えて過去を語る。
そのうちに俺と紹子の関係も、少しずつ近づいていく……。
(『カクヨム』様との重複掲載です)
シリウスをさがして…
もちっぱち
恋愛
月と太陽のサイドストーリー
高校生の淡い恋物語
登場人物
大越 陸斗(おおごえ りくと)
前作 月と太陽の
大越 さとしの長男
高校三年生
大越 悠灯(おおごえ ゆうひ)
陸斗の妹
中学一年生
谷口 紬 (たにぐち つむぎ)
谷口遼平の長女
高校一年生
谷口 拓人 (たにぐち たくと)
谷口遼平の長男
小学6年生
庄司 輝久 (しょうじ てるひさ)
谷口 紬の 幼馴染
里中 隆介 (さとなか りょうすけ)
庄司 輝久の 友人
✴︎マークの話は
主人公
陸斗 と 紬が
大学生に どちらも
なった ものです。
表現的に
喫煙 や お酒 など
大人表現 あります。

【完結】1日1回のキスをしよう 〜対価はチョコレートで 〜
田沢みん
恋愛
ハナとコタローは、 お隣同士の幼馴染。 親から甘いもの禁止令を出されたハナがコタローにチョコレートをせがんだら、 コタローがその対価として望んだのは、 なんとキス。
えっ、 どういうこと?!
そして今日もハナはチョコを受け取りキスをする。 このキスは対価交換。 それ以外に意味はない…… はずだけど……。
理想の幼馴染み発見!
これは、 ちょっとツンデレで素直じゃないヒロインが、イケメンモテ男、しかも一途で尽くし属性の幼馴染みと恋人に変わるまでの王道もの青春ラブストーリーです。
*本編完結済み。今後は不定期で番外編を追加していきます。
*本作は『小説家になろう』でも『沙和子』名義で掲載しています。
*イラストはミカスケ様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる