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三.ようこそ、ポッケ
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主人がいなくなりがらんとさびしくなっている、ポンの家だったケージをモモンガの家にすることにした。ケージの中に、モモンガが出られるよう口を開けた巾着をつるし、名前を決めることにした。佐野君は言う。
「ムササビみたいに大きくなるよう願いをこめて、ムサンガはどう?」
僕は苦笑いした。
「それじゃあ、ムサくなりそう。モンとかがいいかな、ポンに似てるし」
少し悲しくなってしまい、佐野君はあわてて言った。
「フクロっていうくらいだから、カンガルーみたいに、お母さんのふくろの中で育つんじゃないかな。ポケットとかは……」
言ってしまってから、『ポ』もポンとかぶることに気づいたのか、口をつぐんだ。
また心配させてしまった。でも、その心配を吹き飛ばすほどいい名前を思いついた。
僕はとびきりの笑顔で言った。
「ポッケだ。ポッケにしよう」
佐野君も、笑顔でうなずく。二人で巾着を見て言った。
「ようこそ、ポッケ」
その時、二人ともお腹の虫がグーと鳴った。そういえば、もう十二時。お昼ごはんの時間だ。同時に、ポッケのごはんのことも聞いていなかったことに気づいた。
二人で昨日の残りごはんのカレーライスを食べ、もう一度ペットショップへ行くことにした。ポッケのごはんのこともだけど、またあの女の子に会えることに、僕たちはわくわくしていた。
ペットショップへ行く途中、となり町の公園で僕たちはジュースを買うことにした。朝はそうでもなかったが、お昼をまわると夏のギラギラした陽射しが僕たちの真上から降り注ぎ、クラクラした。
一学期に、環境についての特別授業で習ったけど、地球が『温暖化』してるっていうのは本当だったんだとつくづく思った。
自販機で僕はオレンジジュース、佐野君はコーラを買い、木陰のベンチへ歩いて行くと、見覚えのある女の子が座っていた。
水色のワンピースにぱっちりと大きな目、左目の下のホクロ。今朝、モモンガをくれた女の子だ。
僕たちは声をかけようとしたけど、女の子の大きな目が泣きはらした後みたいに赤くなっていたのに気がついた。おそるおそる近づいて、そっと声をかける。
「あの、今朝は、ありがとう」
女の子は、はっと顔を上げて僕たちを見ると、無理に笑顔をつくって言った。
「また会うなんて、びっくり。名前は、もう決まった?」
「うん。ポッケ」
女の子は、にこっとした。
「かわいい名前ね。優しそうな人たちで、本当に良かった」
「そ、それで、ポッケのごはんとか、飼い方聞いてなかったし教えてもらおうと思って」
佐野君はしどろもどろにそう言った。女の子は、笑いながら言った。
「そうそう、言ってなかったわね。フクロモモンガには、専用のフードもあるの。分けてあげるから、ついて来て」
僕たちは、ドキドキしながらついて行った。
「ねぇ、ついてって、あの子の家?」
「そうなんじゃない?」
「僕、女の子の家に上がるなんて初めてだ。どうしよう」
ひそひそ言っている間に、ペットショップの前に着いた。
「この二階が、私の家なの」
僕たちは、縮こまりながらいそいそと二階への階段を登って行った。
「ムササビみたいに大きくなるよう願いをこめて、ムサンガはどう?」
僕は苦笑いした。
「それじゃあ、ムサくなりそう。モンとかがいいかな、ポンに似てるし」
少し悲しくなってしまい、佐野君はあわてて言った。
「フクロっていうくらいだから、カンガルーみたいに、お母さんのふくろの中で育つんじゃないかな。ポケットとかは……」
言ってしまってから、『ポ』もポンとかぶることに気づいたのか、口をつぐんだ。
また心配させてしまった。でも、その心配を吹き飛ばすほどいい名前を思いついた。
僕はとびきりの笑顔で言った。
「ポッケだ。ポッケにしよう」
佐野君も、笑顔でうなずく。二人で巾着を見て言った。
「ようこそ、ポッケ」
その時、二人ともお腹の虫がグーと鳴った。そういえば、もう十二時。お昼ごはんの時間だ。同時に、ポッケのごはんのことも聞いていなかったことに気づいた。
二人で昨日の残りごはんのカレーライスを食べ、もう一度ペットショップへ行くことにした。ポッケのごはんのこともだけど、またあの女の子に会えることに、僕たちはわくわくしていた。
ペットショップへ行く途中、となり町の公園で僕たちはジュースを買うことにした。朝はそうでもなかったが、お昼をまわると夏のギラギラした陽射しが僕たちの真上から降り注ぎ、クラクラした。
一学期に、環境についての特別授業で習ったけど、地球が『温暖化』してるっていうのは本当だったんだとつくづく思った。
自販機で僕はオレンジジュース、佐野君はコーラを買い、木陰のベンチへ歩いて行くと、見覚えのある女の子が座っていた。
水色のワンピースにぱっちりと大きな目、左目の下のホクロ。今朝、モモンガをくれた女の子だ。
僕たちは声をかけようとしたけど、女の子の大きな目が泣きはらした後みたいに赤くなっていたのに気がついた。おそるおそる近づいて、そっと声をかける。
「あの、今朝は、ありがとう」
女の子は、はっと顔を上げて僕たちを見ると、無理に笑顔をつくって言った。
「また会うなんて、びっくり。名前は、もう決まった?」
「うん。ポッケ」
女の子は、にこっとした。
「かわいい名前ね。優しそうな人たちで、本当に良かった」
「そ、それで、ポッケのごはんとか、飼い方聞いてなかったし教えてもらおうと思って」
佐野君はしどろもどろにそう言った。女の子は、笑いながら言った。
「そうそう、言ってなかったわね。フクロモモンガには、専用のフードもあるの。分けてあげるから、ついて来て」
僕たちは、ドキドキしながらついて行った。
「ねぇ、ついてって、あの子の家?」
「そうなんじゃない?」
「僕、女の子の家に上がるなんて初めてだ。どうしよう」
ひそひそ言っている間に、ペットショップの前に着いた。
「この二階が、私の家なの」
僕たちは、縮こまりながらいそいそと二階への階段を登って行った。
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