冷たい海

いっき

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祈り

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 美夏は意識不明の状態で病院へ担ぎ込まれ、精一杯の蘇生処置がなされた。
「美夏、美夏!」
 僕は演奏会のことも忘れて、酸素マスクをした美夏の手を握り叫び続けた。
 どうして……何で?
 僕には分からなかった。
 この世界に神様がいるのなら、どうして彼女を連れて行ってしまうのか。どうして僕から彼女を奪うのか……どうして僕達の夢を奪うのか。
 僕は冷酷な神に祈った。
 せめてあともう一回。もう一回だけ、美夏を僕の元へ戻して下さい。そうすれば僕は、彼女の願いは何でも叶えるから。
 それが、抱き締めて欲しいという願いなら、僕は永久にこの小さな身体を抱き締め続けよう。それが、苦しみを取り除いて欲しいという願いなら、僕は彼女の全ての苦しみをこの身に背負おう。それが、一人で逝きたくないという願いなら……僕は迷いなく、この命を絶とう。
 僕は永久に続くかとも思われたその晩、そんな想いを祈り続けた。
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