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一年生編

幼馴染みと自称ライバル

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 それから三十分ほどして休憩する。

「相変わらず、ラリーえっぐ」

 美優ちゃんがベンチを座るなり、僕に言った。
 
「そうか?」
「うん、だってお姉ちゃんと打ち合えている時点で、私にとってはバケモンだよ」
「まぁ、伊達に一緒に打ってないからね~」

 そう言って持ってきた水筒を開け、口に含む。
 動いて汗をかき、乾いた喉が潤っていく。

「乾いた身体に澄み渡る~!!」

 紅羽も勢いよく飲み干すとそう言った。
 
「分けてあげないからね」
「そういうなよ、我が妹よ」
「はぁ~、妹とは姉に搾取されるために存在するのか……」

 そんな話をしていると、見慣れた顔が走っていた。
 
「あ、綾辻さんだ」

 その顔は綾辻奏だった。
 綾辻さんはこちらの視線に気が付いたのか、目を向けてくる。 

「暁姉妹と中村やんけ、こんな所で奇遇やな」
 
 そう言って彼女は、声を掛けてきた。

「貴方こそ、今日はオフなの?」
「あぁ、今日は自主練やから今日はランにしようと思ってな」

 彼女はそう言って八重歯を見せつけるように笑う。
 
「そうなんだ、まだ一時間以上あるしよかったらって思ったんだけど」
「そうなんか、なら一旦帰って準備してくるわ」
「誠一もいい?」
「構わないよ」

 そう言うと、彼女は走っていく。
 
「誠一、まだいけそう?」
「うん、少し休憩すれば何とか……」
 
 やめて半年ぶりだが、体力の衰えを感じる。
 彼女はというと、全然まだまだいけるという感じだ。

「運動してないからだよ、全くお兄ちゃんは駄目だな~」
「それ、ブーメランだよ美優ちゃん」
「私はいいんだよ~」

 そう言って彼女はのんびりお茶を飲む老人のように飲み物を飲む。
 しばらくして、綾辻さんが鞄を持って戻ってきた。

「すまん、待たせたな」
「それじゃあ、少し打ち合いしよか」
「うん、じゃあ私が相手しようかな」

 そう言って紅羽と綾辻さんはコートへ向かう。
 コートに立つと、綾辻さんの雰囲気が変わる。 

「さぁ、始めよか」
「ラリーだからね、決めちゃ駄目だよ」

 そう言って彼女とラリーをする。
 
「次、フォアハンドのクロスラリー」

 そう言って二人は右利きなので、フォアのクロスラリーをする。

「次、バックハンドのクロスラリー」

 そう言って紅羽はスピンロブでストレートに打つ。
 そしてバックハンドのクロスラリーをする。
 
「次、私フォアハンドで奏ちゃんバックハンドのストレート」

 そう言って彼女が打って返すと、今度は綾辻さんがストレートに返す。

「次、逆行くよ」
 
 そう言って反対をする。
 そうして全てのアップスムーズに済ませた。
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