勇者の弟子と魔王の子孫

ゆうき

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勇者の弟子編

クリューエン

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「いらっしゃい! おや、可愛らしいお客さんだね」

 亭主らしき女性が私達を見る。

「あの、ここにの名物があるって聞いたんですけど」

 店主の目が鋭く光る。

「お嬢ちゃん、誰からそれを?」

 何かヤバい物かと連想させる程、険悪な雰囲気だった。

「ナリアさんから聞いたんですけど……」
「あー、ナリアちゃんね! 元気にしてる?」

 先程の険悪な雰囲気は何処へやら、嬉しそうでそれでいて懐かしそうな笑顔だった。
 どう答えるべきだろうか、死んだ……とは言いづらい……。
 
「まぁ、元気は元気です……」
「そうかい、それで? お嬢ちゃんはナリアちゃんのなんだい?」
「弟子です」

 師匠は各地を回る際、冒険者として自分の素性は隠しながら動いていた。
 知っているのは私やごく一部の人間だけだ。
 公の紹介は彼女が「素性がバレたら動きにくくなる」とのことで公には一切登場しなかった。
 彼女はいわば謎の多い勇者だった。

「あの子に弟子ね~。 あ、それだったらひとつお願いできない?」
「お願い?」
「えぇ、この街は今物騒でね……私は被害にあったことは無いんだけど、最近通り魔が人を襲ってるらしいの!」

 通り魔とは穏やかでは無いな……。

「でもそれってこの街の警護に任せればいいのでは?」

 店主のサナさんは首を横に振る。

「それが、一切音沙汰なしで……被害も多くなってるし、このままじゃ怖くてね~」

 サナさんを見る。
 あの雰囲気から察するにその辺の人では無いことは想像できた。

「サナさんは戦わないんですか?」
「私は、戦おうにも相手が魔法を封じる魔道具を使ってるみたいだからさ」

 確かにそれなら納得がいった。
 ここの国の主な戦闘スタイルは魔法メインだと言われている。
 身体魔法と属性魔法を使って戦うので、魔法を封じられた戦法など対応できる方が難しいそうだ。

「あの子の弟子ならなんとかできると思うんだ……お礼の期待しといて」

 そこまで言われるとが気になって仕方がない。

「うーん……」
「いいじゃない、受けてあげたら? 困ってるみたいだし、私もが目的だから手伝いたいんだよね」
「おや、あんたもナリアちゃんの知り合いかい?」
「いえ、僕は父レックに聞いたので」
「まぁ! なんて偶然なんでしょう!?」

 そういうサナさんは嬉しそうな顔で私たちを見つめる。

「じゃあ、あの日の再来だね!」
「あの日?」
「えぇ、あの日は今日と同じ……」
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