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第201話

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 慣れない雪原、己のレベルをはるかに上回る強敵相手との戦闘は相当の体力を使う。
 今は荒れ狂っていた風も随分と落ち着いたので、モンスターの接近を視認できるということもあって、二人雪の上でシートを敷き休憩していた。

 休憩中、食べ物を食べながらとなれば必然口が軽くなる。
 しかし、やはり最も話題になるのは戦闘方法の事だろう。

 現状私たちは互いに欠点を補う戦闘を行っているが、共闘自体は相当久しぶりだ。
 当然今日まで何もしてこなかったわけもなく、新たなスキル、発見、様々な経験を通して戦術を構築してきた。
 互いのスキルを知り、戦いを知り、活用する。この難所を乗り越えるにはそれが必要だ。

 先ほど私の新たな発見も伝えたが、今度は彼女のスキルについてが話題に上がった。

「そういえばさ」
「はい、なんでしょう?」
「琉希のスキルってどこにでも武器出せるじゃん、相手のモンスターの体内にそれ出したりとか出来ないの?」

 ぺちぺちと横に立つ岩を叩く。

 私のユニークスキルが一点突破の特化型とすれば、彼女のそれは圧倒的な万能型。
 数百メートル先ですらほぼ正確に物を召喚する精密性、さらにその全ては専用武器としての不壊性を持つ。
 ちょっと残酷な発想かもしれないが、この岩や鉄パイプなんて体内に召喚してしまえばきっと強力な攻撃になると思う。

「あー……最初の頃チェーンソーとかで試したんですけど」
「うわ……」

 体内で、チェーンソー……うわ。

 彼女は顎に指を当て、私よりヤバイ考えをしれっと口にした。

「え、なんであたし引かれてるんですか!? んん……まあともかく、あんまりレベルが高い相手には出来ないんですよ。なんか抵抗されているというか、こう、ぐいっと押し戻される感じで」

 どこまで押し込もうとしても限界があり、それ以上はどうしようもない様だ。

 私にもスキルの攻撃に反動がある様に、彼女のスキルも何でもかんでも出来るわけではない、と。
 現実はおせちがからい。

「基本的に抑える力とかもレベルとか私のステータス依存みたいなんですよね。最初はモンスターを箱に閉じ込めた後水に沈めて倒せるかなって思ったんですけど、強い敵だと蓋押し返されて逃げられちゃうんです」
「なんというかさ……発想が全体的にえぐくない?」

 身振り手振りで説明する様子は日常的だが、内容が一々壮絶なのはどうにかならないのか。
 完全に考えがマッドな奴だ、後衛とかヒーラーが持っていい発想ではないと思う。



「なんで穴の中の私たちの場所ばれたんだろ……」

 ずっと疑問に思っていた。

 確かにあの穴は急ごしらえの避難所だ、完璧な装備だったとは言えない。
 だが私たちの隠れる穴はビニールで覆われ、その上には雪が積もっていた。
 あの狐と戦っているとき、奴は穴をあけて爆弾を埋め込んでいたわけだが、真っ白な世界では穴や隙間だとは全く目立たない。

 ましてや当時外はそこそこ風が吹き荒れ、巻き上げられた雪で視界は最悪だったはず。
 正確に場所を探し当てるなんて難しいんじゃないだろうか。

「多分耳だと思います」
「耳?」
「狐って犬の仲間で耳良いんですけど、寒い所の狐って雪の中に穴を掘ってる動物の位置を音で聞き分けて狩るんです。モンスターも似たような性質を持っていたとしたら……」
「なるほど……」

 穴の中で会話していた私たち。
 風の音とはまた別、甲高い人間の声なら聞き分けも可能……なのかもしれない。
 いや、それにしても良すぎる気がするけど、たしかにそれなら辻褄が合う。

 ん? ちょっと待てよ。

 ここでふと、いいアイディアが浮かび上がってきた。
 もしあの狐がそうやって狩りをしているというのなら、雪の中にもモンスターがいるんじゃないか。
 しかも狩られているということはつまり、狐よりレベルが低いということ。
 
 一見ナイスアイデアに思えたこれであったが、彼女は首を振って拒否した。

「いえ、狐を狩りましょう」
「え……でも狐に狩られてるモンスターなら、もっと弱くて狩りやすいんじゃないの?」

 それに経験上だが、一つのダンジョン内で比較的レベルが低い敵は、強敵に比べてやはり数が多い。
 勿論強い方が一回でのレベル上昇は大きいが、この広い雪原であの狐を探すのはちょっと一苦労だろう。

「雪の中から探す方が大変ですし、戦闘も結構制限されるんじゃないでしょうか?」
「あー、確かに」

 なるほど、確かにそれもそうだ。
 雪の上にいる狐と、雪の中にいる道のモンスター。
 戦いやすいのは当然雪の上だ。足元は不安定だが今はその心配もないし、雪の中は生き埋めになる可能性だってある。

 一人だったら気付かず行動して氷像になっていたかもしれない。

 頷いた私へ、琉希は自信満々な顔を浮かべ、なにやら『アイテムボックス』をガサガサと漁り始めた。

「それよりあの狐の耳の良さを逆に利用しましょう!」

 そういって自信満々に彼女が取り出したのは、ケースに色々なものがついたスマホであった。
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