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第125話
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「『でせれーしょん』!」
『合計、レベルが6上昇しました』
加速した世界から帰還した直後、背後に集まっていたサボテン達が爆散する。
昨日の夜、『解除』だとちょっと安直すぎるんじゃないかと思い、ネットの翻訳を使って調べたのが『でせれーしょん』だ。
予想通りめっちゃかっこいい、英単語使ってると頭良さそうに見えるよね。
―――――――――――――――――
結城 フォリア 15歳
LV 50678
HP 101358 MP 253395
物攻 101363 魔攻 0
耐久 304079 俊敏 354761
知力 50678 運 1
SP 76230
―――――――――――――――――
うーん……
「強い!」
相変わらずひどく偏ってはいるものの、知力や運を除き、最も低いHPですらちょっとした目標であった六桁を超えたことに熱いため息が漏れる。
はじめはどうなるかと思ったが、あっという間にレベルは最初の三……いや、四倍くらいまで跳ね上がってしまった。
流石にもうサボテンではレベルが上がらないようだが、僅か二日でこれなのだから十分だろう。
そろそろ他の獲物を探そうかな……でも見かけるモンスターどいつも今の私のレベルより下なんだよね……
半径数十メートルはあるであろう巨大なすり鉢状の巣を構えるクワガタムシみたいなやつ、ゴロゴロと転がって移動する全身とげだらけのドラゴンみたいなやつ、この二日で主に見かけたほかのモンスターはこの二種類だった。
特に偽クワガタムシは危なかった。斜面が非常に急勾配となっていて、走れば走るほど崩れていく地面に絶望すら感じる程だ。
結局自分から飛び掛かって『アクセラレーション』し、空中から何度もカリバーで串刺しにして事なきを得たのだが。
ドラゴンみたいなやつは異様に硬く厄介な相手ではあったが、攻撃手段はあまり多様ではないようでさほど苦労することはなかった。
間違って触れてしまった瞬間に手の水分が吸い取られ、見る間にしわしわになってしまった事には驚いたくらいだ。
しかしこいつら、どっちもあまりいないのが難点だ。
岩山などの目安を覚えてあちこち足を運んでみたはいいものの、特定の場所にいるわけでもなく、数も少ないのでレベル上げの対象としては向いていない。
「そろそろ帰るかぁ……欲しいものも出来たし」
ここの町には協会がない、初日くたくたの身体を引き摺って町へ降り、いくつかの確保しておいた魔石を売り払おうとした時に分かったことだ。
聞けば昔はあったらしいがあまりに探索者が訪れず、また新しくなろうという人も見つからなかったので撤退してしまったらしい。
もしダンジョンが崩壊したらどうするつもりなのだろう。
ふとそう思ったが、常に命を張る探索者になろうなんて人間がそもそもあまり多くない、ちっぽけな町一つを維持できないほど人手不足なのかもしれない。
砂が吹き荒れ、強烈な太陽が照り付ける地下の砂漠。
見慣れぬ環境ではあるが人とは不思議なもので、数日足を運んだだけだというのにこの過酷な世界へちょっとばかりの愛着が湧き、離れることに一抹の寂しさを感じる自分へ驚く。
居た期間としては『炎来』の方が長かったが、あそこに潜っていた時は切羽詰まった状況に板挟みだったのもある。
二日間『アクセラレーション』を使い倒して分かったことがあった。
もしこれが上手くいけば空中での隙を潰すことも出来るかもしれない、戦術が大きく広がるのは間違いないだろう。
小腹が空いたので、出る前に拾っておいた希望の実を服で砂を払って口へぽいぽいと放り込む。
隙間に残っていたのだろう、不愉快なじゃりじゃりとした砂の触感と共に、マイルドな渋さと苦み、そしてかすかな甘さも感じた。
あれ、久しぶりに食べたけどこれこんな美味しかったっけ。
「ん、もしもし筋肉?」
『おう、どうした』
「うん、五万くらいまで上がったから帰る」
おっと、靴紐が解けておる。
『ごま……嘘だろ!?』
「えへ……ん、よしっと」
『おいおい……本当にとんでもないやつ拾っちまったなぁ……気をつけて帰ってこいよ』
「うん。すっごい強くなったからさ、今度模擬戦しよ。私勝っちゃうかも」
『ガハハ! そりゃまだ無理な話だな!』
あっ、そうだ。
お土産にいかめし買っていこう。
◇
「ただいまー」
ガラリ扉を開け、昼も間近な協会へ踏み込む。
相変わらず静かで人は……と思いきや、今日ばかりはどういった事だろうか、両手の指でも足らないほどの探索者達でごった返していた。
しかしその誰もがスマホや、備え付けで普段はBGM程度にしか扱われていないテレビへ体を向け、何かを食い入るように見つめている。
え、怖い。
なに? そんなにおいしそうなものでも特集してるの?
あまりに異様な雰囲気で流石に怯んでしまい、さっさと換金を済ませたいので人々を押しのけへしのけ、カウンターで麦茶を飲んでいた園崎さんの下へ向かい、魔石を差し出しながら耳打ちをした。
「ど、どうしたの?」
「あ、フォリアちゃん。今ニュースでやってたのだけれど……」
ロシアの『人類未踏破ライン』がね、崩壊したらしいわ
その日は、やけにセミの鳴き声がうるさかった気がする。
『合計、レベルが6上昇しました』
加速した世界から帰還した直後、背後に集まっていたサボテン達が爆散する。
昨日の夜、『解除』だとちょっと安直すぎるんじゃないかと思い、ネットの翻訳を使って調べたのが『でせれーしょん』だ。
予想通りめっちゃかっこいい、英単語使ってると頭良さそうに見えるよね。
―――――――――――――――――
結城 フォリア 15歳
LV 50678
HP 101358 MP 253395
物攻 101363 魔攻 0
耐久 304079 俊敏 354761
知力 50678 運 1
SP 76230
―――――――――――――――――
うーん……
「強い!」
相変わらずひどく偏ってはいるものの、知力や運を除き、最も低いHPですらちょっとした目標であった六桁を超えたことに熱いため息が漏れる。
はじめはどうなるかと思ったが、あっという間にレベルは最初の三……いや、四倍くらいまで跳ね上がってしまった。
流石にもうサボテンではレベルが上がらないようだが、僅か二日でこれなのだから十分だろう。
そろそろ他の獲物を探そうかな……でも見かけるモンスターどいつも今の私のレベルより下なんだよね……
半径数十メートルはあるであろう巨大なすり鉢状の巣を構えるクワガタムシみたいなやつ、ゴロゴロと転がって移動する全身とげだらけのドラゴンみたいなやつ、この二日で主に見かけたほかのモンスターはこの二種類だった。
特に偽クワガタムシは危なかった。斜面が非常に急勾配となっていて、走れば走るほど崩れていく地面に絶望すら感じる程だ。
結局自分から飛び掛かって『アクセラレーション』し、空中から何度もカリバーで串刺しにして事なきを得たのだが。
ドラゴンみたいなやつは異様に硬く厄介な相手ではあったが、攻撃手段はあまり多様ではないようでさほど苦労することはなかった。
間違って触れてしまった瞬間に手の水分が吸い取られ、見る間にしわしわになってしまった事には驚いたくらいだ。
しかしこいつら、どっちもあまりいないのが難点だ。
岩山などの目安を覚えてあちこち足を運んでみたはいいものの、特定の場所にいるわけでもなく、数も少ないのでレベル上げの対象としては向いていない。
「そろそろ帰るかぁ……欲しいものも出来たし」
ここの町には協会がない、初日くたくたの身体を引き摺って町へ降り、いくつかの確保しておいた魔石を売り払おうとした時に分かったことだ。
聞けば昔はあったらしいがあまりに探索者が訪れず、また新しくなろうという人も見つからなかったので撤退してしまったらしい。
もしダンジョンが崩壊したらどうするつもりなのだろう。
ふとそう思ったが、常に命を張る探索者になろうなんて人間がそもそもあまり多くない、ちっぽけな町一つを維持できないほど人手不足なのかもしれない。
砂が吹き荒れ、強烈な太陽が照り付ける地下の砂漠。
見慣れぬ環境ではあるが人とは不思議なもので、数日足を運んだだけだというのにこの過酷な世界へちょっとばかりの愛着が湧き、離れることに一抹の寂しさを感じる自分へ驚く。
居た期間としては『炎来』の方が長かったが、あそこに潜っていた時は切羽詰まった状況に板挟みだったのもある。
二日間『アクセラレーション』を使い倒して分かったことがあった。
もしこれが上手くいけば空中での隙を潰すことも出来るかもしれない、戦術が大きく広がるのは間違いないだろう。
小腹が空いたので、出る前に拾っておいた希望の実を服で砂を払って口へぽいぽいと放り込む。
隙間に残っていたのだろう、不愉快なじゃりじゃりとした砂の触感と共に、マイルドな渋さと苦み、そしてかすかな甘さも感じた。
あれ、久しぶりに食べたけどこれこんな美味しかったっけ。
「ん、もしもし筋肉?」
『おう、どうした』
「うん、五万くらいまで上がったから帰る」
おっと、靴紐が解けておる。
『ごま……嘘だろ!?』
「えへ……ん、よしっと」
『おいおい……本当にとんでもないやつ拾っちまったなぁ……気をつけて帰ってこいよ』
「うん。すっごい強くなったからさ、今度模擬戦しよ。私勝っちゃうかも」
『ガハハ! そりゃまだ無理な話だな!』
あっ、そうだ。
お土産にいかめし買っていこう。
◇
「ただいまー」
ガラリ扉を開け、昼も間近な協会へ踏み込む。
相変わらず静かで人は……と思いきや、今日ばかりはどういった事だろうか、両手の指でも足らないほどの探索者達でごった返していた。
しかしその誰もがスマホや、備え付けで普段はBGM程度にしか扱われていないテレビへ体を向け、何かを食い入るように見つめている。
え、怖い。
なに? そんなにおいしそうなものでも特集してるの?
あまりに異様な雰囲気で流石に怯んでしまい、さっさと換金を済ませたいので人々を押しのけへしのけ、カウンターで麦茶を飲んでいた園崎さんの下へ向かい、魔石を差し出しながら耳打ちをした。
「ど、どうしたの?」
「あ、フォリアちゃん。今ニュースでやってたのだけれど……」
ロシアの『人類未踏破ライン』がね、崩壊したらしいわ
その日は、やけにセミの鳴き声がうるさかった気がする。
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