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第27話
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真横をトンボが駆け抜け、ロープと一緒に巨大な蓮の葉までもが切り倒される。
モンスターに壊されないように頑丈なのを選んだから、そこそこ高かったのに……
悲しみに暮れたいところだが、残念ながらそんなことをしている暇はない。
手慣れたもので、三つほど石ころを同時に投げては、一直線になった瞬間を『ストライク』。
破片に翅をズタボロにされ落ちたトンボ、その頭を叩き潰して終わり。
『レベルが上昇しました』
「む……そろそろ終わりにしようかな」
ヤゴ釣りを始めてから四時間余り。今の様に切られたロープが二本、そして何度も食いつかれボロボロに、すでに肉がついていないロープが一本。
初めて出会った頃こそ必死こいて倒していたトンボであったが、石による範囲攻撃が抜群の効き目を発し、比較的容易に倒せるようになった。
「ステータスオープン」
―――――――――――――――
結城 フォリア 15歳
LV 60
HP 128 MP 290
物攻 125 魔攻 0
耐久 365 俊敏 379
知力 60 運 0
SP 50
スキル
スキル累乗 LV1
悪食 LV5
口下手 LV11
経験値上昇 LV3
鈍器 LV2
活人剣 LV1
ステップ LV1
称号
生と死の逆転
装備
カリバー(フォリア専用武器)
―――――――――――――――
レベル60。
『麗しの湿地』、その推奨レベルを10上回った。 そう、ボスに挑む目安レベルとして設定していた、推奨レベル+10の値だ。
麗しの湿地は恐ろしいほど人気がない。この数日間毎日潜っているのに、私以外の探索者と一人も出会わないのが何よりの証拠。
それゆえボスに関する情報が、笑ってしまうほどない。
ネットカフェで調べたのだが、大体が『ナメクジキモイ!』『トンボに腕切り落とされた!』などといった恨みつらみばかり。
ボスに挑戦するといった書き込みすら見当たらなかった。
こんな時はアレだ、困った時の筋肉頼み。
◇
「あん? 『麗しの湿地』のボスに挑む?」
「うん」
「……なんか早くねえか? 早く強くなりたいってのは分かるが、焦り過ぎは身体に悪いからな。レベルはじっくり上げて行けばいい」
「……?」
翌日、園崎さんに許可をもらってカウンターの奥、筋肉の部屋へ質問しに入る。
しかし何か勘違いされている気がする。
あ、そうか。
私のユニークスキル『スキル累乗』はあまりに異常だし、筋肉にもその存在を教えてなかったんだった。
筋肉が誰かへ漏らすとも思えないけれど、世の中絶対はあり得ない。
ここは珍しくこそあるが普遍的な、『経験値上昇』の存在を彼に伝えておくべきか。
レベルが上がるほど『1レベル』の価値は落ちるし上がりやすくなるが、私の『スキル累乗』と『経験値上昇』のコンボは、それでも説明できないほど異常な上がりを見せることになる。
下手に勘繰られる前に、前もって伝えておけば多少はその眼も和らぐだろう。
「レベルはもう60ある。私は『経験値上昇』を持ってるから」
「ああ、だからこの前のレベル上昇も早かったわけか」
ちょっと情報を渡せば、筋肉は勝手に納得してくれた。
腕を組み、麗しき湿地のボスについて何か考え込む筋肉。
これはもしや……
「あー……悪いんだが、麗しの湿地については知らん。あそこ人気なさ過ぎてな、協会の本にも書かれてないなら情報はない」
「そう……」
「推奨レベルが設定されている以上、恐らく一度は協会の関係者が挑戦しているはずだ。でなきゃ知らずに入った犠牲者が増えるからな」
確かに誰も見たことがないのなら、推奨レベルの設定なんてできない。
筋肉へお礼を言って部屋を抜け出し、協会の図書室で本を漁れば確かにボスについて書かれていた。
「メタルスネイル」、金属質なカタツムリらしい。 うん、それだけ。
前回のスウォーム・ウォール同様、ステータスもレベルも何もなくただ写真と名前が張られているのみ。
前から思っていたが使えないなこの本、絶版にしろ。
◇
カタツムリもナメクジも大体同じだろということで、恐らく動きは鈍重だと予想。
メタルなどと響きからして固そうなので、相当長期戦になりそうな予感がする。
そうなった場合、HPの低い私は大変不利である。
勿論『活人剣』による回復もあるとはいえ、カタツムリがナメクジの酸みたいに一撃必殺級の攻撃を持っていて、さらに食らってしまった場合などでは使い物にならない。
ならどうするか?
そろそろ私も、ポーションの類を用意するべきかなと思う。
しかし果たしてポーションとはどこで売っているのか。
もしかしたらコンビニなら売っているかもしれない。なんたって服まで売っているのだ、逆にない方がおかしい。
「らっしゃーせー」
「すみません、ポーション売ってますか?」
「プロテインならありますよー」
「プロテインってなに? ポーションの仲間ですか?」
「まあ筋疲労を労わるという点ではポーションみたいなものですねー」
早速ファミリーマッチョで店員に聞いてみれば、これがおすすめだと言って袋を取り出された。
プロテインというポーションの仲間らしい。
何味が好きかと聞かれたので、イチゴ味を買った。おまけでシェイカーもついてきた、お得だ。
ポーションというものはどれも高く、最低品質でも五千円すると聞いていたのだが、なんとプロテインは四千円で買うことが出来た。
しかも水に溶かせば五十杯分になるらしい、一杯あたりええっと、80円? すごいコスパだ。
どうしてみんなプロテインを買わないんだろう、ポーションより断然安いじゃないか。
ぜひともこれはみんなに伝えるべきだと思う。
モンスターに壊されないように頑丈なのを選んだから、そこそこ高かったのに……
悲しみに暮れたいところだが、残念ながらそんなことをしている暇はない。
手慣れたもので、三つほど石ころを同時に投げては、一直線になった瞬間を『ストライク』。
破片に翅をズタボロにされ落ちたトンボ、その頭を叩き潰して終わり。
『レベルが上昇しました』
「む……そろそろ終わりにしようかな」
ヤゴ釣りを始めてから四時間余り。今の様に切られたロープが二本、そして何度も食いつかれボロボロに、すでに肉がついていないロープが一本。
初めて出会った頃こそ必死こいて倒していたトンボであったが、石による範囲攻撃が抜群の効き目を発し、比較的容易に倒せるようになった。
「ステータスオープン」
―――――――――――――――
結城 フォリア 15歳
LV 60
HP 128 MP 290
物攻 125 魔攻 0
耐久 365 俊敏 379
知力 60 運 0
SP 50
スキル
スキル累乗 LV1
悪食 LV5
口下手 LV11
経験値上昇 LV3
鈍器 LV2
活人剣 LV1
ステップ LV1
称号
生と死の逆転
装備
カリバー(フォリア専用武器)
―――――――――――――――
レベル60。
『麗しの湿地』、その推奨レベルを10上回った。 そう、ボスに挑む目安レベルとして設定していた、推奨レベル+10の値だ。
麗しの湿地は恐ろしいほど人気がない。この数日間毎日潜っているのに、私以外の探索者と一人も出会わないのが何よりの証拠。
それゆえボスに関する情報が、笑ってしまうほどない。
ネットカフェで調べたのだが、大体が『ナメクジキモイ!』『トンボに腕切り落とされた!』などといった恨みつらみばかり。
ボスに挑戦するといった書き込みすら見当たらなかった。
こんな時はアレだ、困った時の筋肉頼み。
◇
「あん? 『麗しの湿地』のボスに挑む?」
「うん」
「……なんか早くねえか? 早く強くなりたいってのは分かるが、焦り過ぎは身体に悪いからな。レベルはじっくり上げて行けばいい」
「……?」
翌日、園崎さんに許可をもらってカウンターの奥、筋肉の部屋へ質問しに入る。
しかし何か勘違いされている気がする。
あ、そうか。
私のユニークスキル『スキル累乗』はあまりに異常だし、筋肉にもその存在を教えてなかったんだった。
筋肉が誰かへ漏らすとも思えないけれど、世の中絶対はあり得ない。
ここは珍しくこそあるが普遍的な、『経験値上昇』の存在を彼に伝えておくべきか。
レベルが上がるほど『1レベル』の価値は落ちるし上がりやすくなるが、私の『スキル累乗』と『経験値上昇』のコンボは、それでも説明できないほど異常な上がりを見せることになる。
下手に勘繰られる前に、前もって伝えておけば多少はその眼も和らぐだろう。
「レベルはもう60ある。私は『経験値上昇』を持ってるから」
「ああ、だからこの前のレベル上昇も早かったわけか」
ちょっと情報を渡せば、筋肉は勝手に納得してくれた。
腕を組み、麗しき湿地のボスについて何か考え込む筋肉。
これはもしや……
「あー……悪いんだが、麗しの湿地については知らん。あそこ人気なさ過ぎてな、協会の本にも書かれてないなら情報はない」
「そう……」
「推奨レベルが設定されている以上、恐らく一度は協会の関係者が挑戦しているはずだ。でなきゃ知らずに入った犠牲者が増えるからな」
確かに誰も見たことがないのなら、推奨レベルの設定なんてできない。
筋肉へお礼を言って部屋を抜け出し、協会の図書室で本を漁れば確かにボスについて書かれていた。
「メタルスネイル」、金属質なカタツムリらしい。 うん、それだけ。
前回のスウォーム・ウォール同様、ステータスもレベルも何もなくただ写真と名前が張られているのみ。
前から思っていたが使えないなこの本、絶版にしろ。
◇
カタツムリもナメクジも大体同じだろということで、恐らく動きは鈍重だと予想。
メタルなどと響きからして固そうなので、相当長期戦になりそうな予感がする。
そうなった場合、HPの低い私は大変不利である。
勿論『活人剣』による回復もあるとはいえ、カタツムリがナメクジの酸みたいに一撃必殺級の攻撃を持っていて、さらに食らってしまった場合などでは使い物にならない。
ならどうするか?
そろそろ私も、ポーションの類を用意するべきかなと思う。
しかし果たしてポーションとはどこで売っているのか。
もしかしたらコンビニなら売っているかもしれない。なんたって服まで売っているのだ、逆にない方がおかしい。
「らっしゃーせー」
「すみません、ポーション売ってますか?」
「プロテインならありますよー」
「プロテインってなに? ポーションの仲間ですか?」
「まあ筋疲労を労わるという点ではポーションみたいなものですねー」
早速ファミリーマッチョで店員に聞いてみれば、これがおすすめだと言って袋を取り出された。
プロテインというポーションの仲間らしい。
何味が好きかと聞かれたので、イチゴ味を買った。おまけでシェイカーもついてきた、お得だ。
ポーションというものはどれも高く、最低品質でも五千円すると聞いていたのだが、なんとプロテインは四千円で買うことが出来た。
しかも水に溶かせば五十杯分になるらしい、一杯あたりええっと、80円? すごいコスパだ。
どうしてみんなプロテインを買わないんだろう、ポーションより断然安いじゃないか。
ぜひともこれはみんなに伝えるべきだと思う。
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