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幼少期編
待て待て待て待て
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「ぐはっ…」
「…とこれで終わりかな…」
倒れこんだ男を見て呟く。
思ったよりも時間がかかってしまった。やはり、殺すべきだったのだろうか。そこらへんに転がっている布やらでぐるぐる巻きにしながら、そう思ってしまう。
私は一人を気絶させるたびに行動不可な状態にしていたので、手間やらなんやら色々効率が悪い。自分でも分かっているけれど、そこは私ということで諦めてほしい。
それにグロいの嫌いだし。
意外かもしれないけど、そこは苦手だ。だから基本的に私は、顎と首元に衝撃を入れて気絶させているのだ。
というか平気な人は人格破綻しているので、人間でないと私は思う。大丈夫な人なんていないんじゃないかな。
そう考えながら最後の一人を縛り終える。うん、これなら指一つ動かせない。あ、でも待って。強く縛りすぎて血流止まってる気が…よし、少し緩めよう。代わりに目にスカートの布で縛っておいて…と
「これで完璧」
男は似非ミイラみたいになった。
やることは終わったので、私の様子を呆然と見ていたおそらく紫音の者に声をかける。
「大丈夫?」
「は、はい。マリー様もご機嫌麗しゅう…」
慌てたように体勢を変える女性を手で制する。今はそんな暇などないのだ。
というか戦争中にしないでほしい。真っ先にやられるぞ。
「そういうのはいいから。回復させたら、北に向かって。そしたら廃墟があるはずだから、応援に言って欲しい」
「分かりました!」
女性が俊光のように去っていくのを見送り、グリムとの待ち合わせの場所に向かう。
家がたくさんある場所では目立つ時計台には、すでにグリムがだるそうにベンチに腰かけていた。
気配に気づいたのかこちらを見てきたので、なんとなく手を振ってみる。
「…おそ」
「ごめん。どれくらい待った?」
これは普通に私が悪いので謝罪すると、何故だか驚愕の表情をされてしまう。
なんだかムカついたので、思いっきり眉をひそめる。
「なんでそんな顔するのかな?私何かおかしかった?」
「…ええ。お前って謝るの?」
「失礼な!」
こいつ、私は謝らない人だと思ってたの!?
「私は基本ぐらいできるから!」
「俺らに対しての態度がそうは思えんわ!」
………
「…いいから早く行くよ!」
「こんの幼女が!」
吐き捨てるようにいうグリムは、私を睨むと、先ほどの比ではない速さで走り出した。しかも私が目で追えるギリギリのスピード。怒ろうにも追えるスピードなので怒れないという、とってもイライラします。
この人、私が無視したから怒ってるのかな!?大人げない!
「根に持つ男は嫌われるぞ!」
「そう思うんだったら、すこしくらい改善せい!」
「できる限り☆」
「絶対そんなつもりないよな!?」
まったく、こんな小さなことで激怒するなんて…
「器が小さいね!」
あ、待って!そんな前に行かないでえ!
***
「ぜはあぜえはあ」
「ま、所詮は幼女だな。体力も全くってところか」
うるせえ…
内心でしか言い返せないほど、私はイラつき疲労しきっていた。
あの後はずっと全力疾走。私への配慮などないグリムを追いかけて東へ西へ…真っ直ぐ進んだらいいのに、なんで右往左往したの!嫌がらせか?嫌がらせなのか!?
「…恨むぞ」
「お好きにどうぞ。俺は脅された哀れな暗殺者なので」
飄々としているこやつが憎い。
憎しみの目で睨み、視線を廃墟と聞かされた場所へ移動する。
そこは、文字通り廃墟であり、廃墟でなかった。
おそらく、元は大きな教会だったのだろう。地面に一つ突き刺さっている十字架が、その事実を伝えていた。
あとは辛うじてステンドグラスが少し、飾られていたベルの形が残っているぐらいだろうか。
しかし、無残な姿には変わりない。
天井は最早欠片もない。地面に転がっている石が壁だったのか、それとも天井だったのか。私にはわからない。
ごろごろあるので、足を引っかけないか心配になってきた。
辺りも何もない。
先程のところは跡地的な感じではあったが、まだ原型があった。いや、誰か住んでいるといわれてもギリギリ信じただろう。
だが、ここは別格だ。
あまり距離もないというのに、この差は如何なものか。それに、北へ進むにつれて、どんどん地が荒れ果ててきたのも、誰も手を入れてないからか。
だけど、何よりも目を引くのは、やはりアレだ。
「…ここで戦うなんて正気を疑う」
ぼそりと言い、アレにつかつかと近づいた。
そして、壊さぬようにそっと触れる。
「…きっとここは、誰かの墓場なのに」
椅子に座り込んだ、骸骨。これが廃墟でないことを表していた。
マントのように被さっている蜘蛛の巣は、どことなく気品を出している。非常に謎である。すでに亡くなっているのに。言葉もないのに。
「…これを知らなかったのかな。ううん、ここを知っていたんだから、誰かの墓というのは知ってたはず」
なのに指定するなんて…
手を放し、更に視線を奥に向ける。
戦闘の様子は見えないけれど、時折刃がぶつかる音がする。なので、まだ終わってはないのだろう。
「ここは障害物が多いからな。身をひそめるところは沢山ある。気配を消して隠れているといるんだろうな」
横に並んだグリムの意見に頷く。
ここは大人も余裕で隠れられる木々が生い茂り、プラス元教会の石。これは、暗殺者たちにとって絶好の場所だろう。
だからと言って人の死地で戦うのは、許されることではないが。
「…で、幼女」
「その呼び方どうにかなんない?」
「俺はどうすればいい?」
無視ですか。さっきまでの仕返しかな。まだ引きずるのか。
しかし、言葉の意図が分からない。どうしてそんな質問をしてきたのか。馬鹿ではないからやることなんて分かっているはずなのに。
「どうするも何もないでしょ。普通に二手に分かれてお互い応援。さっきと同じだよ」
答えると、グリムはため息をした。
「そうか。お前はミライ様の気配を察知することが出来ないのか」
いやいや。私ミライ様とやらの気配知らないし。
…ん?ちょっと待て。その言い方はまさか…
「ここにいるの!?」
「みたいだな。ミライ様直々に来るとは…これは寝返らないのが正解だったかもしれないな」
不穏な言葉に、ガッと腕を掴む。
「裏切らないよね?裏切らないよね!?」
「流石に今更引けねえって!それに、言った通りミライ様は俺らのことを人だとは思っていない。あんな待遇二度と受けたくねえ」
吐き捨てるように言ったので、相当ひどかったのだろう。これなら心配はする必要はないハズだ。
「…グリムがそういうってことはかなり強いの?」
「いや、俺はミライ様が戦う姿を見たことない。初めて動くのを見たからな」
「……」
…これは、ギーアとギィ私、そしてグリム総がかりでいかないときついかもしれないかな。
「よし、グリムついてきて」
「あ、おい!どこ行くんだ」
「双子を探しに」
「だから誰だよ!」
説明しようと口を開いたところでーー奴らが現れた。
「マリー!」
「ギーア!?」
なんか突然視界に映り、驚いて身を引く。
「ちょ、気配を消してこないでよ!」
「いいじゃん。俺らの仲なんだから」
そんなんないわ!
全力で心の中でツッコんでいると、ギーアの目がグリムに映った。
「…なんだこいつ」
警戒心丸出しのギーアに、グリムは驚いたように瞠目した。そして、何かに気付いたように手を鳴らす。
「おっ、こいつチビの癖にプロ並みの腕じゃねーか。それに…幼女、案外お前やるんだな」
小突いた。
腹を押さえて崩れ落ちたグリムを、軽蔑の目で見下ろす。
「だからその呼び方やめろって言ってるでしょ。あとやるって何が。ギーアは私の部下。…ギーア、此奴について紹介する前にギィは?一人じゃないでしょ?」
「後ろにいないかな?…あれ、本当だ。何でだろう。」
いや、私は知らんよ。自分の弟の面倒ぐらい見てくれ。
半目でギーアを見ていると、上からスタッと誰かが降りてきた。
前髪を邪魔なのか、右手で掻き上げている。どこかの俳優かと疑うような仕草をしたのは、今まさに話していたギィだ。
音も気配も全て感じなかったからか、一瞬固まってしまう。そうしている間に、ギィは私に軽く頭を下げると、ギーアに文句を言い始めた。
「兄さん、いきなり姿を消したから相手が戸惑ってたよ。せめて始末ぐらいはしようよ」
「いいだろ。あいつは他の人がやってくれる」
「…全てを自分基準で考えない方がいいよ。そこそこ強かったからね、あの…なんだっけ。名前最後に言ってたんだけど…まあ、他の人からすると互角だったから放置は良くなかった。だから面倒だけどやっといたんだよ」
「軽くか」
「軽くだね」
「「お互い様か」」
なかなかにハイレベルに思われる会話に、いつ終わるのかなーと考えていると、震えた声が横から聞こえてきた。
「…え、此奴ら頭おかしいんじゃないのか?赤竜のメンバーを一人軽くって…なんだそれ。肉体操作でもしてんのか?あ、これは前言撤回する」
「グリム、この二人が異常なだけだから。間違っても他の人は出来ないか」
本当、ギーアとギィはマジの方で別格だ。他の人と比べちゃいけない。勘違いされて、下手に戦力を求められても困る。
と、やっと会話がひと段落したらしく、ギーアがゴソゴソと何かを私に差し出した。
「マリー、これあげる」
「おい様付けどこ行った。さっきまでしてたよね…て。は?」
ギーアが取り出したものに、目が点になる。
え、待って。これって…
私が硬直していると、ご丁寧にも説明を始めてくれた。
「なんかここに来る前に貰ったんだよね。俺はいらないから、マリーが持ってて。確か持つと、一回だけ身代わりになってくれるアイテムらしいから」
ペラペラと話すギーアの説明は、右から左へと流れていく。
というのも、既にこのアイテムは私は知っているからだ。どうしてこれを持っているかは謎だが、確かに『恋音』に存在するもの。
だから思わず身を引いてしまう。
「いや、待て待て待て待て」
なんでギーアが持っているの!?
「待て何回言った?」
「そんな場合じゃないから!」
「え!?」
値段の割に効果は破格。プレイしている者はほとんど持っているアイテム。それは…
ブードゥー人形!!
「…とこれで終わりかな…」
倒れこんだ男を見て呟く。
思ったよりも時間がかかってしまった。やはり、殺すべきだったのだろうか。そこらへんに転がっている布やらでぐるぐる巻きにしながら、そう思ってしまう。
私は一人を気絶させるたびに行動不可な状態にしていたので、手間やらなんやら色々効率が悪い。自分でも分かっているけれど、そこは私ということで諦めてほしい。
それにグロいの嫌いだし。
意外かもしれないけど、そこは苦手だ。だから基本的に私は、顎と首元に衝撃を入れて気絶させているのだ。
というか平気な人は人格破綻しているので、人間でないと私は思う。大丈夫な人なんていないんじゃないかな。
そう考えながら最後の一人を縛り終える。うん、これなら指一つ動かせない。あ、でも待って。強く縛りすぎて血流止まってる気が…よし、少し緩めよう。代わりに目にスカートの布で縛っておいて…と
「これで完璧」
男は似非ミイラみたいになった。
やることは終わったので、私の様子を呆然と見ていたおそらく紫音の者に声をかける。
「大丈夫?」
「は、はい。マリー様もご機嫌麗しゅう…」
慌てたように体勢を変える女性を手で制する。今はそんな暇などないのだ。
というか戦争中にしないでほしい。真っ先にやられるぞ。
「そういうのはいいから。回復させたら、北に向かって。そしたら廃墟があるはずだから、応援に言って欲しい」
「分かりました!」
女性が俊光のように去っていくのを見送り、グリムとの待ち合わせの場所に向かう。
家がたくさんある場所では目立つ時計台には、すでにグリムがだるそうにベンチに腰かけていた。
気配に気づいたのかこちらを見てきたので、なんとなく手を振ってみる。
「…おそ」
「ごめん。どれくらい待った?」
これは普通に私が悪いので謝罪すると、何故だか驚愕の表情をされてしまう。
なんだかムカついたので、思いっきり眉をひそめる。
「なんでそんな顔するのかな?私何かおかしかった?」
「…ええ。お前って謝るの?」
「失礼な!」
こいつ、私は謝らない人だと思ってたの!?
「私は基本ぐらいできるから!」
「俺らに対しての態度がそうは思えんわ!」
………
「…いいから早く行くよ!」
「こんの幼女が!」
吐き捨てるようにいうグリムは、私を睨むと、先ほどの比ではない速さで走り出した。しかも私が目で追えるギリギリのスピード。怒ろうにも追えるスピードなので怒れないという、とってもイライラします。
この人、私が無視したから怒ってるのかな!?大人げない!
「根に持つ男は嫌われるぞ!」
「そう思うんだったら、すこしくらい改善せい!」
「できる限り☆」
「絶対そんなつもりないよな!?」
まったく、こんな小さなことで激怒するなんて…
「器が小さいね!」
あ、待って!そんな前に行かないでえ!
***
「ぜはあぜえはあ」
「ま、所詮は幼女だな。体力も全くってところか」
うるせえ…
内心でしか言い返せないほど、私はイラつき疲労しきっていた。
あの後はずっと全力疾走。私への配慮などないグリムを追いかけて東へ西へ…真っ直ぐ進んだらいいのに、なんで右往左往したの!嫌がらせか?嫌がらせなのか!?
「…恨むぞ」
「お好きにどうぞ。俺は脅された哀れな暗殺者なので」
飄々としているこやつが憎い。
憎しみの目で睨み、視線を廃墟と聞かされた場所へ移動する。
そこは、文字通り廃墟であり、廃墟でなかった。
おそらく、元は大きな教会だったのだろう。地面に一つ突き刺さっている十字架が、その事実を伝えていた。
あとは辛うじてステンドグラスが少し、飾られていたベルの形が残っているぐらいだろうか。
しかし、無残な姿には変わりない。
天井は最早欠片もない。地面に転がっている石が壁だったのか、それとも天井だったのか。私にはわからない。
ごろごろあるので、足を引っかけないか心配になってきた。
辺りも何もない。
先程のところは跡地的な感じではあったが、まだ原型があった。いや、誰か住んでいるといわれてもギリギリ信じただろう。
だが、ここは別格だ。
あまり距離もないというのに、この差は如何なものか。それに、北へ進むにつれて、どんどん地が荒れ果ててきたのも、誰も手を入れてないからか。
だけど、何よりも目を引くのは、やはりアレだ。
「…ここで戦うなんて正気を疑う」
ぼそりと言い、アレにつかつかと近づいた。
そして、壊さぬようにそっと触れる。
「…きっとここは、誰かの墓場なのに」
椅子に座り込んだ、骸骨。これが廃墟でないことを表していた。
マントのように被さっている蜘蛛の巣は、どことなく気品を出している。非常に謎である。すでに亡くなっているのに。言葉もないのに。
「…これを知らなかったのかな。ううん、ここを知っていたんだから、誰かの墓というのは知ってたはず」
なのに指定するなんて…
手を放し、更に視線を奥に向ける。
戦闘の様子は見えないけれど、時折刃がぶつかる音がする。なので、まだ終わってはないのだろう。
「ここは障害物が多いからな。身をひそめるところは沢山ある。気配を消して隠れているといるんだろうな」
横に並んだグリムの意見に頷く。
ここは大人も余裕で隠れられる木々が生い茂り、プラス元教会の石。これは、暗殺者たちにとって絶好の場所だろう。
だからと言って人の死地で戦うのは、許されることではないが。
「…で、幼女」
「その呼び方どうにかなんない?」
「俺はどうすればいい?」
無視ですか。さっきまでの仕返しかな。まだ引きずるのか。
しかし、言葉の意図が分からない。どうしてそんな質問をしてきたのか。馬鹿ではないからやることなんて分かっているはずなのに。
「どうするも何もないでしょ。普通に二手に分かれてお互い応援。さっきと同じだよ」
答えると、グリムはため息をした。
「そうか。お前はミライ様の気配を察知することが出来ないのか」
いやいや。私ミライ様とやらの気配知らないし。
…ん?ちょっと待て。その言い方はまさか…
「ここにいるの!?」
「みたいだな。ミライ様直々に来るとは…これは寝返らないのが正解だったかもしれないな」
不穏な言葉に、ガッと腕を掴む。
「裏切らないよね?裏切らないよね!?」
「流石に今更引けねえって!それに、言った通りミライ様は俺らのことを人だとは思っていない。あんな待遇二度と受けたくねえ」
吐き捨てるように言ったので、相当ひどかったのだろう。これなら心配はする必要はないハズだ。
「…グリムがそういうってことはかなり強いの?」
「いや、俺はミライ様が戦う姿を見たことない。初めて動くのを見たからな」
「……」
…これは、ギーアとギィ私、そしてグリム総がかりでいかないときついかもしれないかな。
「よし、グリムついてきて」
「あ、おい!どこ行くんだ」
「双子を探しに」
「だから誰だよ!」
説明しようと口を開いたところでーー奴らが現れた。
「マリー!」
「ギーア!?」
なんか突然視界に映り、驚いて身を引く。
「ちょ、気配を消してこないでよ!」
「いいじゃん。俺らの仲なんだから」
そんなんないわ!
全力で心の中でツッコんでいると、ギーアの目がグリムに映った。
「…なんだこいつ」
警戒心丸出しのギーアに、グリムは驚いたように瞠目した。そして、何かに気付いたように手を鳴らす。
「おっ、こいつチビの癖にプロ並みの腕じゃねーか。それに…幼女、案外お前やるんだな」
小突いた。
腹を押さえて崩れ落ちたグリムを、軽蔑の目で見下ろす。
「だからその呼び方やめろって言ってるでしょ。あとやるって何が。ギーアは私の部下。…ギーア、此奴について紹介する前にギィは?一人じゃないでしょ?」
「後ろにいないかな?…あれ、本当だ。何でだろう。」
いや、私は知らんよ。自分の弟の面倒ぐらい見てくれ。
半目でギーアを見ていると、上からスタッと誰かが降りてきた。
前髪を邪魔なのか、右手で掻き上げている。どこかの俳優かと疑うような仕草をしたのは、今まさに話していたギィだ。
音も気配も全て感じなかったからか、一瞬固まってしまう。そうしている間に、ギィは私に軽く頭を下げると、ギーアに文句を言い始めた。
「兄さん、いきなり姿を消したから相手が戸惑ってたよ。せめて始末ぐらいはしようよ」
「いいだろ。あいつは他の人がやってくれる」
「…全てを自分基準で考えない方がいいよ。そこそこ強かったからね、あの…なんだっけ。名前最後に言ってたんだけど…まあ、他の人からすると互角だったから放置は良くなかった。だから面倒だけどやっといたんだよ」
「軽くか」
「軽くだね」
「「お互い様か」」
なかなかにハイレベルに思われる会話に、いつ終わるのかなーと考えていると、震えた声が横から聞こえてきた。
「…え、此奴ら頭おかしいんじゃないのか?赤竜のメンバーを一人軽くって…なんだそれ。肉体操作でもしてんのか?あ、これは前言撤回する」
「グリム、この二人が異常なだけだから。間違っても他の人は出来ないか」
本当、ギーアとギィはマジの方で別格だ。他の人と比べちゃいけない。勘違いされて、下手に戦力を求められても困る。
と、やっと会話がひと段落したらしく、ギーアがゴソゴソと何かを私に差し出した。
「マリー、これあげる」
「おい様付けどこ行った。さっきまでしてたよね…て。は?」
ギーアが取り出したものに、目が点になる。
え、待って。これって…
私が硬直していると、ご丁寧にも説明を始めてくれた。
「なんかここに来る前に貰ったんだよね。俺はいらないから、マリーが持ってて。確か持つと、一回だけ身代わりになってくれるアイテムらしいから」
ペラペラと話すギーアの説明は、右から左へと流れていく。
というのも、既にこのアイテムは私は知っているからだ。どうしてこれを持っているかは謎だが、確かに『恋音』に存在するもの。
だから思わず身を引いてしまう。
「いや、待て待て待て待て」
なんでギーアが持っているの!?
「待て何回言った?」
「そんな場合じゃないから!」
「え!?」
値段の割に効果は破格。プレイしている者はほとんど持っているアイテム。それは…
ブードゥー人形!!
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