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100歳の七草さんの青春時代②
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七草さんの声が震えた。
「わたしは小学校の先生でした。だから由松さんにきっぱりと言いました。
『情けない。日本が大変な時期になにを言ってるんですか。
詩を書くより大事なことです。
お国の勝利のためにがんばってください』
由松さんはなにも言わなかった。
わたしに詩を書いてくれることもなく別れました。
軍隊ではね。由松さんのような心のやさしい人間は軽蔑されて虐められたのです。
毎日のように、ほかの兵士から言いがかりをつけられて殴られて、ムリヤリ裸にされたりと、人間としての尊厳を傷つけられるようなことまでされたのです」
胸の中を冷たい風が通り過ぎた。
僕の親戚が、ずっと昔、そんなひどい目に遇ってたなんて・・・
「由松さんが軍隊で飼っている馬の世話をしてるときでした。ほかの兵士たちからムリヤリ馬糞を食べさせられたのです。
なにもしていないのに、
『くだらん詩なんか書きやがって!
貴様は日本が戦争に負ければいいと思っている。
腐った心を叩き直してやる』
そんなひどいこと言われました。
その夜。由松さんは・・・」
七草さんはハンカチを出した。そして顔に当てた。
ハンカチの向こうから、悲しみの声・・・
「なぜきちんと言わなかったのか。
『あなたのことが好きです。わたしのために、どうか、きっと帰ってきてください』
なぜそう言わなかったのか。そうすれば、由松さんだって、歯を食いしばって生きてくれたはず。
わたしが・・・」
僕の耳の中。悲しみの叫びだけ・・・
七草さんのハンカチ、ビショビショに濡れた。
ハンカチを取り出して、七草さんの涙をぬぐった。
ハンカチにファンデーションがついた。
そして鮮やかな口紅・・・
「わたしは小学校の先生でした。だから由松さんにきっぱりと言いました。
『情けない。日本が大変な時期になにを言ってるんですか。
詩を書くより大事なことです。
お国の勝利のためにがんばってください』
由松さんはなにも言わなかった。
わたしに詩を書いてくれることもなく別れました。
軍隊ではね。由松さんのような心のやさしい人間は軽蔑されて虐められたのです。
毎日のように、ほかの兵士から言いがかりをつけられて殴られて、ムリヤリ裸にされたりと、人間としての尊厳を傷つけられるようなことまでされたのです」
胸の中を冷たい風が通り過ぎた。
僕の親戚が、ずっと昔、そんなひどい目に遇ってたなんて・・・
「由松さんが軍隊で飼っている馬の世話をしてるときでした。ほかの兵士たちからムリヤリ馬糞を食べさせられたのです。
なにもしていないのに、
『くだらん詩なんか書きやがって!
貴様は日本が戦争に負ければいいと思っている。
腐った心を叩き直してやる』
そんなひどいこと言われました。
その夜。由松さんは・・・」
七草さんはハンカチを出した。そして顔に当てた。
ハンカチの向こうから、悲しみの声・・・
「なぜきちんと言わなかったのか。
『あなたのことが好きです。わたしのために、どうか、きっと帰ってきてください』
なぜそう言わなかったのか。そうすれば、由松さんだって、歯を食いしばって生きてくれたはず。
わたしが・・・」
僕の耳の中。悲しみの叫びだけ・・・
七草さんのハンカチ、ビショビショに濡れた。
ハンカチを取り出して、七草さんの涙をぬぐった。
ハンカチにファンデーションがついた。
そして鮮やかな口紅・・・
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