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A01運行:井関、樺太へ

0018A:真実のその先にあったものに、我々は手を触れてしまった

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 恐るべき結論が出た。この事故は機械的故障でも、テロでも、ストライキでもない。機関車を作った人間、そして、この機関車をこの樺太に運んだ人間に全ての責任があった。

「樺太は、本土と比べて、マイナス20℃ほど気温が低い。我々はそれを想定していなかった。我々の責任だ」

 井関は、責任を痛感していた。水野も同じく、深い悔いに包まれていた。小林もまた、思うところがあるようで黙りこくっている。
 だがその中で、笹井だけが怪気炎を上げた。

「まだ、決まったわけじゃない!」

 この期に及んで、笹井だけが現実を拒否していた。

「お前、まだそんなことを……!」

「だってそうだろう! 我々はまだ事実の一側面を見たに過ぎない。結論は早計だ」

「ということは君は、この事故の原因がテロだと思っているのか」

「ああそうだ。そう言う話だったじゃないか」

「では、証拠はあるか」

 井関は、笹井の目をまっすぐに見据えてそう言った。

「な、なんでそんなことを聞くんだい?」

「そりゃそうだろう。犯人探しには証拠が必要だ」

 笹井は目を泳がせながら答える。

「そう言う約束だっただろう! これはテロということにして、片づけると!」

「だから、そんな主張をしていると?」

「ああそうだ!」

 井関は、笹井の肩を優しく叩いた。

「同じ会話を、したな。もっとも、立場は逆だったが」

 笹井はハッとした顔になる。

「もしこれが、君以外の誰かの主張であったならば、ボクは納得した」

「なら……!」

「だが君はダメだ。何故かわかるかい?」

 井関は笑いかけた。

「君が親友だからだ。ボクには全てわかる。君がウソをついているということぐらい。まるで君が、ボクの嘘に気が付いたように」

「お前に……、お前たちに何が分かる! お前たちの中で一番真っ先に出世をしたワシの、何がわかるって言うんだ!」

 激昂する笹井に、小林はピシャリと、それでいて優しく声をかけた。

「言葉にしてくれなきゃわからんよ。だが、言ってくれれば全てわかる。君が井関の苦しみを見抜いたようにね」

 最後に、水野が彼の手を握った。

「もう、いいでしょう」

 笹井は一粒のしずくを瞳から流した。それから、意を決したように、その胸元にずっと仕舞い続けていたものを叩きつけた。

「お前、それは……」

 それは、辞表だった。驚いた小林が見上げた先には、決意を固めた笹井の顔があった。

「ワシは今から、真実を告げる」
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