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ケース4 主婦過干渉の母 春川さくらの場合
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最近、実話小説の読者の反応が良いから、今日は本当にあった泥沼親子愛を紹介するよ。ある意味純愛だね。
今回は、呪いのアプリ関連で亡くなった主婦で母親である春川さくら(仮名)。典型的な溺愛系教育ママっていう感じだよね。春川さくらは50代主婦で子供は20代の大学生の一人息子がいたんだ。夫は大手企業の会社員。教育熱心で大学生になった今も過保護すぎるくらいの愛情を注いでいるという近隣の人の噂もあったんだ。
春川さくらは筆まめで、毎日日記をつけていたんだ。日記に呪いのアプリについて書き記していた。創作ではない恐怖感が感じられるゾクゾク感がたまらないね。その内容について説明しよう。彼女はスマホこそもっていなかったけれど、パソコンでのブログ執筆はかなり熱心だったよ。これは、抜粋だよ。死人に許可は取れないから無断で掲載させてもらったよ。
♢♢♢
春川さくらの日記
6月1日 呪いのアプリがインストールされていた。操作方法がわからず、ケータイショップに行くが、アンインストールできない。購入したばかりの機種だったので、仕方なくそのまま使用することとする。すると、アプリが勝手に動き出した。名前はないが、呪いの子どもと自称する少年が現れる。「14日以内に呪い主を探さなければ死ぬ」と宣告される。
きっと何かのいたずらだろう。スマホの電源を切ろうとしたが、切れない。
「連絡先一覧に呪い主がいる。言い当てれば、あなたは助かる。しかし、3人までしか当てる権利はない」と言われた。夫に言っても信じてもらえない。何かの詐欺だろうと言われてしまう。
息子は今日は5時には帰宅するという。夕食を一緒に食べるのが我が家の掟だ。最近、遅い帰宅が多く、掟を破ることが多い息子。でも、今日は愛息子のためにシチューを作ろう。
6月2日 呪いの子どもという少年は、日々恐怖を与えてくる。死へのカウントダウンが表示される。なぜ、こんな風に私を追い詰めるのかわからない。誰が私を呪っているのだろう。心当たりがない。もしかしたら、ママ友だった人だろうか。カルチャー教室の友人だろうか。でも、誰とももめることがなかったので、怨まれる筋合いはない。カルチャー教室やママ友に息子の大学名を言うとみんなすごいと称賛する。素晴らしい息子を持ったと思う。私に似た真面目で頭のいい子だと心の中で自慢する。
6月3日 町内会の若者にごみの出し方を注意した時に舌打ちされたことを思い出す。あの人かもしれない。でも、双方の携帯に連絡先は入っていない。
コンビニの店員に間違いを指摘した人だろうか。でも、その人の連絡先はわからない。考えるときりがない。呪いの子どもは、このアプリに支配されると、全てが敵に見えると言って来る。
たしかに、あちらが勝手に怒っていることもあるかもしれない。怖くなって外に出たくなくなる。連絡先一覧を消去できなくなっている。怖い。息子はスマホに詳しいだろう。聞いてみようかと思うが、心配をかけたくない。
でも、今日はサークル活動で帰宅が遅くなるという。我が家の掟を破るとは、子どもは思った通りには育たない。しかし、何歳になっても子どもは子どもだ。しつけはやめるべきではないだろう。
6月4日 最近、息子が反抗的だ。なぜ愛情が伝わらないのだろう。とりあえず、誰にでも優しく接してきたつもりだ。誰が私を怨んでいるのだろう。呪いの子どもは本当に不気味だ。呪いのアプリの相談しても誰も信じてくれない。もしかして、夫が私を呪っているのだろうか。みそ汁がしょっぱいだの、ほこりがついているなど、家事に文句を言ってくる。身近な人ほど不満が募るという話は聞く。
呪いの子どもに言ってみる。
「呪い主は私の夫の和男ではないだろうか」
「違うよ。これであと二人しか当てる権利はなくなっちゃったね」
無表情で抑揚のない声はとても恐怖を与える。
「当てちゃったら呪い主は死んじゃうから、結構な怨みを持っているんだろうね。自分の命を懸けた殺人でしょ」
「これで、私が殺されても呪い主は殺人犯にはならないってこと?」
「そうだね。この世界はアプリや呪いで殺した場合、実証が難しいから刑罰は問われないよね」
「そこまで、私を呪っている人って、もう関わりのない誰かかしらね? 昔の同級生とか」
「さあね」
そう言うと子どもは消えてしまった。不思議な存在だ。
6月5日 息子に夕方5時までには帰宅するように言う。最近はどこかに泊って帰ることも増えてしまった。誰か悪い女性にたぶらかされているのかもしれない。その女性が私を呪っているのだろうか。息子は従順でいい子だった。今も心根は変わらない。もしかして、悪い男友達ができたのかもしれない。アルバイトをする必要がないくらいお小遣いも渡しているのに。なぜうまくいかないのだろうか。きっと反抗期だ。
その後も日常の日記が書かれている。主に息子に関して、反抗的な息子に親としてしつけをするべきだということが主だった。
そして、彼女の日記の内容は夫への不満が本当に多い。あまり、カルチャー教室や友達関係のことは書かれていなかった。というのも、カルチャー教室があるのは月1回程度で、特定の誰かと深い関係を持っていなかったからだよ。
彼女は、店や町内会の人の連絡先をスマホに入れていなかったんだ。なぜならば、彼女は最近、息子に勧められてスマホを購入したばかりで、使いこなせていなかった。そして、彼女は14日後に急死した。心臓が急に止まったらしい。
最期に大量の息子の写真に埋め尽くされて死んでいたとネットのニュースに書かれていたよ。愛する息子に囲まれて死ねてよかったよね。とは言っても、写真だけどね。
結局、彼女は呪い主を特定できなかったんだと思う?
実は……彼女のスマホに入っている連絡先は夫、息子、実家の番号しか入っていなかったんだ。彼女は主に自宅の電話を使っていて、カルチャーセンターの友人などには宅電で連絡していたんだ。それまで、ガラケーすら使っていなかった。夫が携帯電話を持つことに反対していたらしい。しかし、息子に勧められて突然スマホを購入した。実家は自宅の電話だった。高齢の両親は、自宅の電話機能についている電話帳を使っていなかったんだ。
つまり――呪い主は息子しかいないということなんだよね。
でも、なぜ言い当てなかったのだと思う?
息子を溺愛していたから、息子を失うことを避けたかったのだろうね。溺愛ゆえ、かなりしつけとした罰を与えたり、言葉の暴力も多かったらしい。それにずっと息子は耐えていた。しかし、成人して、友人宅に逃げるようになった。それを母親は良からぬことと、友人宅へ乗り込んだという記載もある。
呪い主が息子だと気づいていたのに、それでも気づかぬふりをして自らの死を選ぶ。愉快だよね。そういう純愛は大好きだ。
大切な人を失ってまで生きることが辛いということは彼女は理解していたのだと思うよ。どんなに束縛や過干渉をしていても根底は愛情があったのだろうね。
しんみりした気持ちになるよ。
呪い主を心の中で特定していても呪いの子どもに言わなければ、相手は死ぬことはなく自分が死ぬだけ。そして、14日後にぴったり死ぬことだ。シンプルなルールは必ず発動するということだよ。恐ろしき、現代の呪いの方法は実にリスクが高く、しかしながら簡単に実行できるということだよ。
♢♢♢
春川さくらの息子視点 狂気への変貌
これは、息子の秘密の書き込みを見つけたものだよ。本人の許可は取っていないけれど、契約の条件は面白さだから、私と契約するときは、個人情報がある程度公開される覚悟をすることも必要だよ。
毎日毎日母親と名乗る女がうざい。生まれた時から、母親だと名乗る人間を選ぶことはできない。それは俺以外の誰でも同じだろう。気づいたら親はいる。いることがこんなに窮屈だということ、親孝行はやるべきであるという世間の風潮の圧迫に耐えかねた俺はどうにも、心を静める場所を得られなかった。親不孝という形は様々あるが、この大学を卒業をするということは自分自身へのメリット以外感じていない。犯罪者になれば、大学を卒業していい就職先への道は閉ざされる。そして、俺は、この家から通える職場でなければいけないという制約をかけられている。
なぜ、あの女はそんなに俺を制圧威圧をするんだろう。支配することであの女は生き甲斐を感じているのだろうか。もしかしたら、父と名乗る男に逆らえない鬱憤が俺の方に向いているのだろうか。俺の成功が自分の成功だと勘違いしているようにも思える。自分が勉強してもいないくせに、やたら自慢気だ。俺が頑張った成果をあたかも自分の成功かのような言動には虫唾が走る。
俺はずっと母親の敷いたレールの上を歩いてきた。この先もずっとそれは続くだろう。逆らうと暴言と無視の毎日。仕舞いには、手を上げてくる。俺は暴力で物事を片付けるのが嫌いだ。だから、理路整然と片づけられる何かを探していた。物事はスマートに最短でやり遂げるということを幼少期から叩き込まれてきた。
髪型も服装もカバンも進路もあの女が決めてきた。きっとこの先の就職や結婚相手や孫さえも決めていくのだろう。あの女の手中で俺は生き続けていかなければいけないのだろうか。きっと全てが自分のおかげであり自分が成し遂げたと頭の中で変換するのだろう。俺は自由になりたい。いや、自由になるんだ。そのためにあの女を消す。
一番いい方法を知った。呪いのアプリだ。これこそ、法律を掻い潜り、自らの手を汚すことなく消すことができる最短の手段だ。己の死を引き換えにという代償なんて俺にはあってないようなものだ。なぜならば、あの女は本物の母親であり、俺を失ったら生きていけないことを知っているからだ。俺なしでこの世に価値を見出せない、そんな人間が自分だけ生き残るという手段を得るだろうか。100%ありえない。絶対にな。
体に残ったあざも心の傷も支配から逃れればきっと忘れられる。父親に関して言えば、母親ほどの干渉はない。面倒な場合はそのうち父親を消せばいい。俺は最強のアプリを知ってしまった。呪いの子どもとの契約はとても簡単で、最短で遂行できるということに気づく。
面倒なこと、嫌なことは消去する。これは、俺の中に宿る呪いの力だ。どんなカウンセリングもどんな説得も道徳も俺に通用はしないと今は自覚している。俺の中の狂気と怨念が駆り立てる衝動は誰にも抑えられない。もう抑えられないところまで来てしまったのだ。血縁も恩義も俺に通用はしない。なぜならば、ずっと耐え続けてきたからだ。
どんな理不尽なことも強要も全て呑み込んで自分の中に抑え続けていた。でも、人には我慢の限界がある。いつかコップの水は溢れるかのように俺の中の怨念が溢れていた。それは、もう自分の力で止めることはできないし、決して許すことはしないだろう。
以上が書き込み内容だ。凍るような思いを感じたよ。一番愛している人、一番近くにいる人が恨みを抱いている。なんて複雑で面白いのだろう。人間って面白いよね。
今回は、呪いのアプリ関連で亡くなった主婦で母親である春川さくら(仮名)。典型的な溺愛系教育ママっていう感じだよね。春川さくらは50代主婦で子供は20代の大学生の一人息子がいたんだ。夫は大手企業の会社員。教育熱心で大学生になった今も過保護すぎるくらいの愛情を注いでいるという近隣の人の噂もあったんだ。
春川さくらは筆まめで、毎日日記をつけていたんだ。日記に呪いのアプリについて書き記していた。創作ではない恐怖感が感じられるゾクゾク感がたまらないね。その内容について説明しよう。彼女はスマホこそもっていなかったけれど、パソコンでのブログ執筆はかなり熱心だったよ。これは、抜粋だよ。死人に許可は取れないから無断で掲載させてもらったよ。
♢♢♢
春川さくらの日記
6月1日 呪いのアプリがインストールされていた。操作方法がわからず、ケータイショップに行くが、アンインストールできない。購入したばかりの機種だったので、仕方なくそのまま使用することとする。すると、アプリが勝手に動き出した。名前はないが、呪いの子どもと自称する少年が現れる。「14日以内に呪い主を探さなければ死ぬ」と宣告される。
きっと何かのいたずらだろう。スマホの電源を切ろうとしたが、切れない。
「連絡先一覧に呪い主がいる。言い当てれば、あなたは助かる。しかし、3人までしか当てる権利はない」と言われた。夫に言っても信じてもらえない。何かの詐欺だろうと言われてしまう。
息子は今日は5時には帰宅するという。夕食を一緒に食べるのが我が家の掟だ。最近、遅い帰宅が多く、掟を破ることが多い息子。でも、今日は愛息子のためにシチューを作ろう。
6月2日 呪いの子どもという少年は、日々恐怖を与えてくる。死へのカウントダウンが表示される。なぜ、こんな風に私を追い詰めるのかわからない。誰が私を呪っているのだろう。心当たりがない。もしかしたら、ママ友だった人だろうか。カルチャー教室の友人だろうか。でも、誰とももめることがなかったので、怨まれる筋合いはない。カルチャー教室やママ友に息子の大学名を言うとみんなすごいと称賛する。素晴らしい息子を持ったと思う。私に似た真面目で頭のいい子だと心の中で自慢する。
6月3日 町内会の若者にごみの出し方を注意した時に舌打ちされたことを思い出す。あの人かもしれない。でも、双方の携帯に連絡先は入っていない。
コンビニの店員に間違いを指摘した人だろうか。でも、その人の連絡先はわからない。考えるときりがない。呪いの子どもは、このアプリに支配されると、全てが敵に見えると言って来る。
たしかに、あちらが勝手に怒っていることもあるかもしれない。怖くなって外に出たくなくなる。連絡先一覧を消去できなくなっている。怖い。息子はスマホに詳しいだろう。聞いてみようかと思うが、心配をかけたくない。
でも、今日はサークル活動で帰宅が遅くなるという。我が家の掟を破るとは、子どもは思った通りには育たない。しかし、何歳になっても子どもは子どもだ。しつけはやめるべきではないだろう。
6月4日 最近、息子が反抗的だ。なぜ愛情が伝わらないのだろう。とりあえず、誰にでも優しく接してきたつもりだ。誰が私を怨んでいるのだろう。呪いの子どもは本当に不気味だ。呪いのアプリの相談しても誰も信じてくれない。もしかして、夫が私を呪っているのだろうか。みそ汁がしょっぱいだの、ほこりがついているなど、家事に文句を言ってくる。身近な人ほど不満が募るという話は聞く。
呪いの子どもに言ってみる。
「呪い主は私の夫の和男ではないだろうか」
「違うよ。これであと二人しか当てる権利はなくなっちゃったね」
無表情で抑揚のない声はとても恐怖を与える。
「当てちゃったら呪い主は死んじゃうから、結構な怨みを持っているんだろうね。自分の命を懸けた殺人でしょ」
「これで、私が殺されても呪い主は殺人犯にはならないってこと?」
「そうだね。この世界はアプリや呪いで殺した場合、実証が難しいから刑罰は問われないよね」
「そこまで、私を呪っている人って、もう関わりのない誰かかしらね? 昔の同級生とか」
「さあね」
そう言うと子どもは消えてしまった。不思議な存在だ。
6月5日 息子に夕方5時までには帰宅するように言う。最近はどこかに泊って帰ることも増えてしまった。誰か悪い女性にたぶらかされているのかもしれない。その女性が私を呪っているのだろうか。息子は従順でいい子だった。今も心根は変わらない。もしかして、悪い男友達ができたのかもしれない。アルバイトをする必要がないくらいお小遣いも渡しているのに。なぜうまくいかないのだろうか。きっと反抗期だ。
その後も日常の日記が書かれている。主に息子に関して、反抗的な息子に親としてしつけをするべきだということが主だった。
そして、彼女の日記の内容は夫への不満が本当に多い。あまり、カルチャー教室や友達関係のことは書かれていなかった。というのも、カルチャー教室があるのは月1回程度で、特定の誰かと深い関係を持っていなかったからだよ。
彼女は、店や町内会の人の連絡先をスマホに入れていなかったんだ。なぜならば、彼女は最近、息子に勧められてスマホを購入したばかりで、使いこなせていなかった。そして、彼女は14日後に急死した。心臓が急に止まったらしい。
最期に大量の息子の写真に埋め尽くされて死んでいたとネットのニュースに書かれていたよ。愛する息子に囲まれて死ねてよかったよね。とは言っても、写真だけどね。
結局、彼女は呪い主を特定できなかったんだと思う?
実は……彼女のスマホに入っている連絡先は夫、息子、実家の番号しか入っていなかったんだ。彼女は主に自宅の電話を使っていて、カルチャーセンターの友人などには宅電で連絡していたんだ。それまで、ガラケーすら使っていなかった。夫が携帯電話を持つことに反対していたらしい。しかし、息子に勧められて突然スマホを購入した。実家は自宅の電話だった。高齢の両親は、自宅の電話機能についている電話帳を使っていなかったんだ。
つまり――呪い主は息子しかいないということなんだよね。
でも、なぜ言い当てなかったのだと思う?
息子を溺愛していたから、息子を失うことを避けたかったのだろうね。溺愛ゆえ、かなりしつけとした罰を与えたり、言葉の暴力も多かったらしい。それにずっと息子は耐えていた。しかし、成人して、友人宅に逃げるようになった。それを母親は良からぬことと、友人宅へ乗り込んだという記載もある。
呪い主が息子だと気づいていたのに、それでも気づかぬふりをして自らの死を選ぶ。愉快だよね。そういう純愛は大好きだ。
大切な人を失ってまで生きることが辛いということは彼女は理解していたのだと思うよ。どんなに束縛や過干渉をしていても根底は愛情があったのだろうね。
しんみりした気持ちになるよ。
呪い主を心の中で特定していても呪いの子どもに言わなければ、相手は死ぬことはなく自分が死ぬだけ。そして、14日後にぴったり死ぬことだ。シンプルなルールは必ず発動するということだよ。恐ろしき、現代の呪いの方法は実にリスクが高く、しかしながら簡単に実行できるということだよ。
♢♢♢
春川さくらの息子視点 狂気への変貌
これは、息子の秘密の書き込みを見つけたものだよ。本人の許可は取っていないけれど、契約の条件は面白さだから、私と契約するときは、個人情報がある程度公開される覚悟をすることも必要だよ。
毎日毎日母親と名乗る女がうざい。生まれた時から、母親だと名乗る人間を選ぶことはできない。それは俺以外の誰でも同じだろう。気づいたら親はいる。いることがこんなに窮屈だということ、親孝行はやるべきであるという世間の風潮の圧迫に耐えかねた俺はどうにも、心を静める場所を得られなかった。親不孝という形は様々あるが、この大学を卒業をするということは自分自身へのメリット以外感じていない。犯罪者になれば、大学を卒業していい就職先への道は閉ざされる。そして、俺は、この家から通える職場でなければいけないという制約をかけられている。
なぜ、あの女はそんなに俺を制圧威圧をするんだろう。支配することであの女は生き甲斐を感じているのだろうか。もしかしたら、父と名乗る男に逆らえない鬱憤が俺の方に向いているのだろうか。俺の成功が自分の成功だと勘違いしているようにも思える。自分が勉強してもいないくせに、やたら自慢気だ。俺が頑張った成果をあたかも自分の成功かのような言動には虫唾が走る。
俺はずっと母親の敷いたレールの上を歩いてきた。この先もずっとそれは続くだろう。逆らうと暴言と無視の毎日。仕舞いには、手を上げてくる。俺は暴力で物事を片付けるのが嫌いだ。だから、理路整然と片づけられる何かを探していた。物事はスマートに最短でやり遂げるということを幼少期から叩き込まれてきた。
髪型も服装もカバンも進路もあの女が決めてきた。きっとこの先の就職や結婚相手や孫さえも決めていくのだろう。あの女の手中で俺は生き続けていかなければいけないのだろうか。きっと全てが自分のおかげであり自分が成し遂げたと頭の中で変換するのだろう。俺は自由になりたい。いや、自由になるんだ。そのためにあの女を消す。
一番いい方法を知った。呪いのアプリだ。これこそ、法律を掻い潜り、自らの手を汚すことなく消すことができる最短の手段だ。己の死を引き換えにという代償なんて俺にはあってないようなものだ。なぜならば、あの女は本物の母親であり、俺を失ったら生きていけないことを知っているからだ。俺なしでこの世に価値を見出せない、そんな人間が自分だけ生き残るという手段を得るだろうか。100%ありえない。絶対にな。
体に残ったあざも心の傷も支配から逃れればきっと忘れられる。父親に関して言えば、母親ほどの干渉はない。面倒な場合はそのうち父親を消せばいい。俺は最強のアプリを知ってしまった。呪いの子どもとの契約はとても簡単で、最短で遂行できるということに気づく。
面倒なこと、嫌なことは消去する。これは、俺の中に宿る呪いの力だ。どんなカウンセリングもどんな説得も道徳も俺に通用はしないと今は自覚している。俺の中の狂気と怨念が駆り立てる衝動は誰にも抑えられない。もう抑えられないところまで来てしまったのだ。血縁も恩義も俺に通用はしない。なぜならば、ずっと耐え続けてきたからだ。
どんな理不尽なことも強要も全て呑み込んで自分の中に抑え続けていた。でも、人には我慢の限界がある。いつかコップの水は溢れるかのように俺の中の怨念が溢れていた。それは、もう自分の力で止めることはできないし、決して許すことはしないだろう。
以上が書き込み内容だ。凍るような思いを感じたよ。一番愛している人、一番近くにいる人が恨みを抱いている。なんて複雑で面白いのだろう。人間って面白いよね。
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