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カルトと葉次
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岡野カルト、秋沢葉次。二人の仲は葉次が中学生3年生の頃から続いていた。初めて出会ったのは、カルトが高校3年生の頃だった。偶然、落とし物を拾ってくれた葉次がカルトと親しくなるのには時間がかからなかった。偶然同じ高校を志望している中学生。偶然同じ地域に住む少年は3歳下であり、とても趣味も合った。それから、連絡先を交換してずっと友達を続けている。葉次はくったくのない笑顔でいつも程よい距離でそばにいる存在だった。あどけない中にも知性と教養と好奇心を兼ね備えた存在の少年はかけがえのない友達だ。
秋沢葉次にとって兄貴兼友達のような存在となったのはカルトが高校生時代の初夏だっただろうか。学生時代は、よく一緒に海に行ったり花火をした仲だった。警察ならば、きっと何かわかるかもしれないと相談する彼のまなざしはとても真剣だった。そして、警察の職務質問にならば本名を答えるのではないかという一抹の期待も持ってカルトの元へやってきたようだった。カルト兄さん、ヨージと呼び合う仲であり、その距離感は今も変わってはいなかった。
ヨージは呪い主の本名を探っていることを相談する。カルトは丁度、呪いのアプリ対策本部で極秘調査を行っていると告げた。アプリを所有する当事者であり協力者となりうるであろうヨージの情報は極秘に入手したいものだった。極秘調査だが、告げたのは信頼できる人間でもあったのも理由だ。少しでも糸口をつかめればそれは幸いであり、幼馴染のヨージを助けることができる。そして、婚約者を結果的に救う手立てが見つかるかもしれない。呪いのアプリの情報は少ないので、呪いの子どもとの接触はかなり大きな収穫だ。捜査本部の部長からも承諾を得た。
秋沢葉次という男は馬鹿なフリをしているが、本来頭脳明晰な頭のキレる人間だということをカルトは知り合った当初から知っていた。彼を通してアプリの中の呪いの子どもと接触できれば捜査本部でも色々がルールを知ることができる。SNSでの反応もわざと彼が周囲の反応を見るために馬鹿なフリをして書き込んだということも本人が自白している。自白する前に、カルトは彼の演技に気づいていた。彼の性格は馬鹿に成り済ましてでも真実を探るために動く。ヨージは一般人だからこそ大きな力となるだろう。
「早速スマホを持って捜査本部に来てほしい。もちろん、木下ここなを名乗る女性を警察として捜査をする。ヨージの命は俺が守るから」
「ありがたい。カルト兄さん」
にこりと笑う表情は女性ウケしそうな甘い顔立ちだ。この男が頭脳明晰で金持ちの家の息子なのはさらにモテる理由だということは誰しもが納得だ。そして、刑事の幼馴染を頼るというのも賢い選択だ。ヨージは面白いことが好きで、幼少期は都市伝説の話や怖い話を良くしたものだ。彼への厚い信頼は共に過ごした年数も関係あるのかもしれない。
「まさか、呪われる当事者になるとはなぁ」
呪われたという悲壮感のないヨージは諦めを込めたため息をつく。
「宝くじが当たったっていうのは嘘だろ?」
カルトはすかさずヨージに確認する。
にこりと動揺することなくカルトは微笑む。
「バレた? 宝くじっていうのは嘘。投資で得たお金と動画の広告収入が入ったのは事実だけど。わざと実家が金持ちだとかお金があるアピールをしたんだ。呪いのアプリを使ったという噂の女と親しくなって、当たってもいない宝くじの話したんだ。命をかけてというのは多少リスクは高いのだけどね。実は、友達が詐欺に遭ったという話を聞いていて、放っておけなかったんだ」
「正義感が強いのはお前らしいな。でも、正義感だけじゃないだろ? 多分、好奇心の方が勝っているんじゃないか?」
「バレてた? カルト兄さんにはかなわないなぁ。こんなに面白い案件はないよ。世の中退屈なことばかり。でも、現実にこんなに素晴らしい呪いに出会えて俺は最高に精神が高揚しているんだ」
彼の言葉は本心だろう。今までにないくらい輝きを放つ。
「昔っからおまえはズレてるな。頭が良すぎるのは紙一重ってところだな。君の頭脳で捜査に協力してくれないか? 日本一の偏差値を誇る東王大の首席だろ」
「カルト兄さんも東王大出身でしょ。今回、本部に貢献するから、臨時職員として捜査に協力させてもらいたいんだけどなぁ」
ヨージの思惑はただ面白いことをやりたい。退屈を紛らわすために危ない橋をも渡るという性格は普通ではないが、他者に害があるわけでもない。
「まぁ、おまえが思っている通りに事は運びそうだよ。実際、お前のスマホに呪いの子どもはいる。詐欺師の女の本名は警察で調べてあるよ。本名は夏本さぎり。前科もある詐欺師だけど、最近呪いのアプリ経由で詐欺を働いているから、警察も逮捕できない」
「夏本さぎりっていうのかぁ。本名がわかって、助かるなぁ。調べてもわからなければ、無理矢理ナイフを突きつけてでも夏本さぎりとやらに自白させるところだったよ」
笑顔でナイフを突きつけて自白させるという話をするヨージはどこか感覚が違う。でも、幼い頃から知っているヨージの心の根にあるものは、純粋な好奇心だけだということもカルトは知っていた。
純粋な好奇心は時に命を懸けてでも湧き上がる興味らしい。ヨージは昔から知能指数が高く、勉強ができた。でも、いつも退屈そうだった。勉強ができるがゆえに、教科書には解答のないオカルトや都市伝説が好きだったのだろう。年上のカルトと話が合うのも同級生と馴染めないことが原因だったのかもしれない。カルトの地元で県内一の進学校に進む者は比較的少ない。カルトもヨージも同じ高校、大学へと進学した。大学は日本一偏差値が高い東王大学だ。カルトは努力主義者だが、ヨージは天才肌だということには気づいていた。
現在カルトは東王大学を卒業して、警察の第一線で活躍している。しかし、年下のヨージはこれから大学院に進学するのかもしれないし、何か起業するのかもしれないと勝手にカルトは想像していた。というのも、普通にヨージが働いている姿を想像する姿を想像できないというのが本音だった。普通ではない何かを成し遂げそうな発想力と行動力があった。あざとい天才というのがヨージへの印象でありカルトの本音だ。
「俺の婚約者を助けてほしい」
「俺にできることなら、手伝うよ。俺、昔から霊感とか持ってるし、役立つかもよ」
彼には霊感があるのも本当だということは以前から知っていた。ヨージはいつも笑顔だが、今日は格別な気がする。多分、特上の食材を目の前にした人間の心理に近いのかもしれない。
「呪いの子どもと話すことが可能ならば、色々聞きたい」
カルトが提案する。
「でも、呪い主のさぎりの名前を言うと多分、アプリ自体消滅するからなぁ。ぎりぎりまで色々と、呪いの子どもに尋問しちゃいますかぁ」
手を叩きながら提案する楽しそうなヨージ。カルトはそんな彼の中に潜む天才ゆえの枯渇した好奇心を気の毒と同時に頼もしくも思う。
「色々過去の資料とかあれば見せてよ」
子犬のように胸元に入り込むのが得意なのも昔からだ。
「捜査協力という名目なら可能だよ」
「久々にワクワクするなぁ」
とても命を懸けて呪いの子どもに近づいた人間とは思えない発言だ。多分、ヨージは退屈が嫌いで、好奇心で生きている。しかし、それは彼に守るべき者や愛する者、失ってしまっては困る者がいないからなのかもしれない。
秋沢葉次が誰かに依存するとか恋愛したという話を聞いたことがない。母子家庭と聞いていたが、ほとんど母親の話はしない。母親は何かの事業をしていて、お金には困らない家だが、ほとんど家庭を顧みない人らしい。昔から家族に対しても執着がないのが秋沢葉次という男だ。
秋沢葉次にとって兄貴兼友達のような存在となったのはカルトが高校生時代の初夏だっただろうか。学生時代は、よく一緒に海に行ったり花火をした仲だった。警察ならば、きっと何かわかるかもしれないと相談する彼のまなざしはとても真剣だった。そして、警察の職務質問にならば本名を答えるのではないかという一抹の期待も持ってカルトの元へやってきたようだった。カルト兄さん、ヨージと呼び合う仲であり、その距離感は今も変わってはいなかった。
ヨージは呪い主の本名を探っていることを相談する。カルトは丁度、呪いのアプリ対策本部で極秘調査を行っていると告げた。アプリを所有する当事者であり協力者となりうるであろうヨージの情報は極秘に入手したいものだった。極秘調査だが、告げたのは信頼できる人間でもあったのも理由だ。少しでも糸口をつかめればそれは幸いであり、幼馴染のヨージを助けることができる。そして、婚約者を結果的に救う手立てが見つかるかもしれない。呪いのアプリの情報は少ないので、呪いの子どもとの接触はかなり大きな収穫だ。捜査本部の部長からも承諾を得た。
秋沢葉次という男は馬鹿なフリをしているが、本来頭脳明晰な頭のキレる人間だということをカルトは知り合った当初から知っていた。彼を通してアプリの中の呪いの子どもと接触できれば捜査本部でも色々がルールを知ることができる。SNSでの反応もわざと彼が周囲の反応を見るために馬鹿なフリをして書き込んだということも本人が自白している。自白する前に、カルトは彼の演技に気づいていた。彼の性格は馬鹿に成り済ましてでも真実を探るために動く。ヨージは一般人だからこそ大きな力となるだろう。
「早速スマホを持って捜査本部に来てほしい。もちろん、木下ここなを名乗る女性を警察として捜査をする。ヨージの命は俺が守るから」
「ありがたい。カルト兄さん」
にこりと笑う表情は女性ウケしそうな甘い顔立ちだ。この男が頭脳明晰で金持ちの家の息子なのはさらにモテる理由だということは誰しもが納得だ。そして、刑事の幼馴染を頼るというのも賢い選択だ。ヨージは面白いことが好きで、幼少期は都市伝説の話や怖い話を良くしたものだ。彼への厚い信頼は共に過ごした年数も関係あるのかもしれない。
「まさか、呪われる当事者になるとはなぁ」
呪われたという悲壮感のないヨージは諦めを込めたため息をつく。
「宝くじが当たったっていうのは嘘だろ?」
カルトはすかさずヨージに確認する。
にこりと動揺することなくカルトは微笑む。
「バレた? 宝くじっていうのは嘘。投資で得たお金と動画の広告収入が入ったのは事実だけど。わざと実家が金持ちだとかお金があるアピールをしたんだ。呪いのアプリを使ったという噂の女と親しくなって、当たってもいない宝くじの話したんだ。命をかけてというのは多少リスクは高いのだけどね。実は、友達が詐欺に遭ったという話を聞いていて、放っておけなかったんだ」
「正義感が強いのはお前らしいな。でも、正義感だけじゃないだろ? 多分、好奇心の方が勝っているんじゃないか?」
「バレてた? カルト兄さんにはかなわないなぁ。こんなに面白い案件はないよ。世の中退屈なことばかり。でも、現実にこんなに素晴らしい呪いに出会えて俺は最高に精神が高揚しているんだ」
彼の言葉は本心だろう。今までにないくらい輝きを放つ。
「昔っからおまえはズレてるな。頭が良すぎるのは紙一重ってところだな。君の頭脳で捜査に協力してくれないか? 日本一の偏差値を誇る東王大の首席だろ」
「カルト兄さんも東王大出身でしょ。今回、本部に貢献するから、臨時職員として捜査に協力させてもらいたいんだけどなぁ」
ヨージの思惑はただ面白いことをやりたい。退屈を紛らわすために危ない橋をも渡るという性格は普通ではないが、他者に害があるわけでもない。
「まぁ、おまえが思っている通りに事は運びそうだよ。実際、お前のスマホに呪いの子どもはいる。詐欺師の女の本名は警察で調べてあるよ。本名は夏本さぎり。前科もある詐欺師だけど、最近呪いのアプリ経由で詐欺を働いているから、警察も逮捕できない」
「夏本さぎりっていうのかぁ。本名がわかって、助かるなぁ。調べてもわからなければ、無理矢理ナイフを突きつけてでも夏本さぎりとやらに自白させるところだったよ」
笑顔でナイフを突きつけて自白させるという話をするヨージはどこか感覚が違う。でも、幼い頃から知っているヨージの心の根にあるものは、純粋な好奇心だけだということもカルトは知っていた。
純粋な好奇心は時に命を懸けてでも湧き上がる興味らしい。ヨージは昔から知能指数が高く、勉強ができた。でも、いつも退屈そうだった。勉強ができるがゆえに、教科書には解答のないオカルトや都市伝説が好きだったのだろう。年上のカルトと話が合うのも同級生と馴染めないことが原因だったのかもしれない。カルトの地元で県内一の進学校に進む者は比較的少ない。カルトもヨージも同じ高校、大学へと進学した。大学は日本一偏差値が高い東王大学だ。カルトは努力主義者だが、ヨージは天才肌だということには気づいていた。
現在カルトは東王大学を卒業して、警察の第一線で活躍している。しかし、年下のヨージはこれから大学院に進学するのかもしれないし、何か起業するのかもしれないと勝手にカルトは想像していた。というのも、普通にヨージが働いている姿を想像する姿を想像できないというのが本音だった。普通ではない何かを成し遂げそうな発想力と行動力があった。あざとい天才というのがヨージへの印象でありカルトの本音だ。
「俺の婚約者を助けてほしい」
「俺にできることなら、手伝うよ。俺、昔から霊感とか持ってるし、役立つかもよ」
彼には霊感があるのも本当だということは以前から知っていた。ヨージはいつも笑顔だが、今日は格別な気がする。多分、特上の食材を目の前にした人間の心理に近いのかもしれない。
「呪いの子どもと話すことが可能ならば、色々聞きたい」
カルトが提案する。
「でも、呪い主のさぎりの名前を言うと多分、アプリ自体消滅するからなぁ。ぎりぎりまで色々と、呪いの子どもに尋問しちゃいますかぁ」
手を叩きながら提案する楽しそうなヨージ。カルトはそんな彼の中に潜む天才ゆえの枯渇した好奇心を気の毒と同時に頼もしくも思う。
「色々過去の資料とかあれば見せてよ」
子犬のように胸元に入り込むのが得意なのも昔からだ。
「捜査協力という名目なら可能だよ」
「久々にワクワクするなぁ」
とても命を懸けて呪いの子どもに近づいた人間とは思えない発言だ。多分、ヨージは退屈が嫌いで、好奇心で生きている。しかし、それは彼に守るべき者や愛する者、失ってしまっては困る者がいないからなのかもしれない。
秋沢葉次が誰かに依存するとか恋愛したという話を聞いたことがない。母子家庭と聞いていたが、ほとんど母親の話はしない。母親は何かの事業をしていて、お金には困らない家だが、ほとんど家庭を顧みない人らしい。昔から家族に対しても執着がないのが秋沢葉次という男だ。
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