上 下
7 / 30

理科室の人体模型のジンあらわる

しおりを挟む
 学校の怪談で定番なのが、理科室の人体模型が動くという話だ。以前から違和感があったのだが、人体模型から何かを感じていた。熱い視線というか――みつめられているような気がしていた。

 妖牙君に相談してみよう。やはり、このようなとき頼りになるのは彼しかいない。

「妖牙君、理科室の人体模型ってちょっと……何か感じない?」
「あいつね、たしかに生きてるよな」
「生きてるって……人形だよね」
 普通に人体模型に対して生きているという表現ができる妖牙君が少し怖い。

「時々、見つめられているというか、そんな気がするんだよね」
「あいつは、以前からそういう奴だよ」
 何かに気づいているの??

 昼休み、理科室に日直の仕事で行ってみたのだが、誰もいないのでしいんとしている。水道の水滴が落ちただけでも、なんだか怖いような気がした。どことなく、空気が冷たく感じられた。

「レイカちゃん」
 声がする。誰もいないのに……。

「きゃあああああ」
 思わず、声を出してしまった。すると、肩のあたりに誰かの手が乗った感じがした。

「驚かせてごめん」
 人体模型から透明な幽霊? が出てきた。

 それは、人体模型の姿とは程遠い、イケメンな男子中学生だった。少し髪は長くて、銀髪で髪はさらさらしている。

「俺は、人体模型に宿るあやかしのジンっていうんだ」
「あやかし?」
「俺は、元々人間ではなかったからつくもがみなんだ。最近妖牙っていう霊力をもつ男と一緒だけど、君たちは付き合っているの?」
「ち、違います」
「よかった。俺は君のことをずっと見ていたんだ。入学した時から。君には不思議な力が備わっていて、きっと俺を見ることができるだろうって思っていたよ」
「なんとなく、熱い視線が感じられたのは、勘違いではなかったのね」
「そうだよ、君しかいないと思っていた」

 何? 愛の告白か何か? 初めて告白された相手が人体模型のあやかし?
 彼がぎゅっと私の手を握り締めて、手の甲にキスをした。

「俺と付き合ってくれるかな?」

「え……」
 かっこいいけれど、あやかしなんだよね。

「ちょっと……無理かな」

「俺のこと、受け入れてくれないの?」
 彼の瞳が鋭くなる。怖い。もしかして、おそわれたり殺されたりするってこと?
 赤いお札、これを出せばあやかしには効果てきめんだ。
 ポケットからお札を出そうとしたとき――

「お前の目的は、こいつの体か?」
「妖牙君……」

 ヒーローはいいところにやってくるものだ。
 やはり私の王子様というところか。
 でも、体ってどういう意味?

「こいつの体を借りて乗り移って人間として生活しようとしていたんだろう」

 ―――それって私が私ではなくなるって言う最悪な展開……。

「ばれたか、妖牙の霊力だと弾き飛ばされるのがおちだからあきらめたんだ。しかし、この女ならば他のものよりは霊力が高い。だから、乗り移るのにはちょうどいいと思ったのだがな」

「実行するなら、この札で、消すぞ。ちなみに、その女も札を持っているから気を付けるんだな」
「何? 伝説の赤と青の札のことか?」
「そうよ、私に近づいたら、消されるんだから」
「俺はつくもがみだ、その札は効かないぞ」
「え……? 効かないの? でも、私の体は誰にも渡さないんだから!!」
 あせる私。だって、私には強い能力があるわけでもないし。

「違うよ、そのうち、俺のことを好きになってもらおうって思っているから。本当は君の心を乗っ取りたいという気持ちもあるんだけれど」
 そういうとジンは人体模型の中に消えていってしまった。

 何?? まさかの告白。しかもあやかしからの。
 でも、私の体を乗っ取るって言ったよね? 正直それは困るよ。
 どうせならば、人間に告白されてみたい、そう思った。

「ちょっとお、妖牙君、お札に効き目ないって本当?」
 思わず、妖牙くんにつめ寄る。

「神の類にはたしかにあんまり効かないかもな、俺も知らなかったんだよ。札を実際に使ったことはまだないんだ。でもモフミがいるから、大丈夫だって」
 困り顔の妖牙君。

「そういうことはちゃんと言ってよね、何にでも効くっていう言い方するから」
「少しは、つくもがみに対しても効果はあるはずだぞ。札は万能じゃないんだ」

 妖牙君はすっとぼけた顔をしている。
 ここの学校には様々な種類のあやかしがいて――無事に卒業できるのかな?
 不安になってきたよ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

短編ブラックジョーク「馬鹿を殺しても良い法律」

みなはらつかさ
ホラー
 ネット上で「馬鹿を殺しても良い法律を作れ!」と主張するブログを見かけて思いついたブラックジョークです。

CLYDE WAS HERE

銅原子@スタジオ バンドデシネ
ホラー
これは、僕自身が体験した夢を元に書いた物語です。

お前に『幸福』は似合わない

アタラクシア
ホラー
2015年。梅雨の始まりが告げられる頃。  叢雲八重(むらくもやえ)は彼女――今は『妻』である青谷時雨(あおたにしぐれ)への誕生日プレゼントに悩んでいた。時雨の親友である有馬光(ありまてる)や八重の悪友である沖見弦之介(おきみげんのすけ)に相談し、四苦八苦しながらも、八重はプレゼント選びを楽しんでいた。  時雨の誕生日の3日前。2人は時雨の両親に結婚の了承を得に行っていた。最初はあまりいい顔をされていなかったが、父親からは認められ、母親からも信頼されていたことを知る。次に会うのは結婚式。4人は幸せそうに笑っていた。  そして――時雨の両親は謎の不審死を遂げた。  その日を境に時雨は自殺未遂を繰り返すようになってしまう。謎の言葉を呟く時雨に疑問に思いながらも介抱を続ける八重。そんな最中、八重は不思議な夢を見るようになる。  それは時雨が――実の両親を殺している夢。  あまりにも時雨の姿からかけ離れていた景色に疑問を抱いた八重は、弦之介と共に時雨の過去を調べ始める。時雨の家や関係者を辿っていくうちに、2人はとある『女』の情報を手にする――。

実話怪談「鳴いた猫」

赤鈴
ホラー
これは一般の人が体験した実話を基にしたお話です。 地名、個人名は仮名(イニシャル)でございます。 Kさんには事前に掲載許可をいただいております。 今宵の実話怪談は Kさんから聞いた、こんな怖い話――。 次に体験することになるのは、あなたかもしれません。 夜道を歩くときは、後ろにご注意くださいませ。 ※私のDLsite blogに裏側と後日談を書いた記事もございます

ぶらんこ

まるがおMAX
ホラー
ご近所の老人・佐々木さん(仮名)から聞いたN町の話。 ※アルファポリスにも小説を投稿している歌人の凛七星さん(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/339596869)のツイキャスのオカルトトーク企画のときに、私がしゃべった話を文章化したものです。

サド

才門宝句
ホラー
『サイコ』のような大どんでん返し

不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−

西羽咲 花月
ホラー
それはある夜突然頭の中に聞こえてきた 【さぁ! 今夜も始まりました不穏ラジオのお時間です!】 私が通う学校の不穏要素を暴露する番組だ 次々とクラスメートたちの暗い部分が暴露されていく そのラジオで弱みを握り、自分をバカにしてきたクラスメートに復讐を!!

ジャングルジム【意味が分かると怖い話】

怖狩村
ホラー
僕がまだ幼稚園の年少だった頃、同級生で仲良しだったOくんとよく遊んでいた。 僕の家は比較的に裕福で、Oくんの家は貧しそうで、 よく僕のおもちゃを欲しがることがあった。 そんなある日Oくんと幼稚園のジャングルジムで遊んでいた。 一番上までいくと結構な高さで、景色を眺めながら話をしていると、 ちょうど天気も良く温かかったせいか 僕は少しうとうとしてしまった。 近くで「オキロ・・」という声がしたような、、 その時「ドスン」という音が下からした。 見るとO君が下に落ちていて、 腕を押さえながら泣いていた。 O君は先生に、「あいつが押したから落ちた」と言ったらしい。 幸い普段から真面目だった僕のいうことを信じてもらえたが、 いまだにO君がなぜ落ちたのか なぜ僕のせいにしたのか、、 まったく分からない。 解説ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 近くで「オキロ」と言われたとあるが、本当は「オチロ」だったのでは? O君は僕を押そうとしてバランスを崩して落ちたのではないか、、、

処理中です...